心に響く一曲を探して――博多大吉が能登で聴いた“自分応援ソング”の力とは?
誰かの言葉や一曲のメロディーが、心の支えになったことはありませんか?
つらい時に背中を押してくれた曲、元気をくれた歌。そんな「自分応援ソング」が、被災地・能登の人々の心を照らしていました。2025年11月10日放送の『あさイチ』では、博多大吉さんが能登半島を訪ね、現地の人々が選んだ“心の歌”を聴く特別企画を放送しました。この記事では、その感動のエピソードを振り返ります。
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「まちのラジオ」に流れる希望の音色
最初に大吉さんが向かったのは、石川県輪島市町野町。昨年の能登半島地震と豪雨で深刻な被害を受けた地域です。静かな山あいの町にある「まちのラジオ」は、被災後に住民たちが自ら立ち上げたラジオ局。平日は毎日放送を続けており、リスナーはおよそ1500人。給食時間に小中学生が耳を傾けるのを楽しみにしているという、まさに“地域の声”をつなぐ場になっています。
局を支えるスタッフは12人。中には、家を失い仮設住宅で暮らす人もいます。その一人、宇羅香織さんの応援ソングは平原綾香の『Jupiter』。
「この曲を聴くと、また明日も家族と頑張ろうと思える」と語りました。
もう一人のスタッフ、看護師の吉田真弓さんは群馬県から移住してきた災害ボランティア。彼女を支えるのはあいみょんの『あのね』。新しい土地での生活や出会いを支えたのは、やさしいメロディーと素直な歌詞だったそうです。
町の放送室から流れる音楽は、ただのBGMではありません。そこには、人と人を結び、孤独をやわらげる力がありました。
仮設住宅で流れる“生きるための音”
次に訪ねたのは、町野町の仮設住宅。全268戸と、輪島市内でも2番目に大きな規模を誇ります。ここでもラジオが欠かせない存在。
「美空ひばりの『川の流れのように』が流れると、涙が出てしまう」
「カーペンターズの『トップ・オブ・ザ・ワールド』を聴くと、少し笑顔になれる」
と、入居者たちは口をそろえます。
そんな中、ある女性がリクエストしたのはスガシカオの『Progress』。
震災直後、避難先で行われたスガシカオさんのボランティアライブで、彼が語った「甘えていいときは誰にでもある。今の皆さんは甘えていいとき」「あきらめちゃダメだよ」という言葉が心に残り、今も大切にしているそうです。音楽が“言葉以上の希望”として人の中に生き続ける。その姿が印象的でした。
ボランティアと歩んだ再建の日々と『WISH』
その後、大吉さんは町野町のスーパーを訪れます。店員の朝川英則さんは、被災後の泥まみれの店を、のべ2000人ものボランティアと共に片づけ、わずか2か月で営業再開にこぎつけました。地域の暮らしを支えるため、寝る間も惜しんで働いたといいます。
朝川さんの応援ソングはLUNA SEAの『WISH』。
「この曲を聴くと、仲間たちと過ごした時間を思い出して泣けてくる」と話し、胸に手を当てました。力強いギターのリフと“信じる力”を歌う歌詞が、再出発の原動力になったのです。
海女の再挑戦と『あんた』に込めた想い
次に訪れたのは輪島港。大吉さんが「どうしても再会したい」と願っていたのが、以前の取材で出会った海女の橋本真理子さんです。
彼女は地震で海女漁の道具も作業場も失い、しばらく居酒屋で働いていました。
「もう一度、海に潜りたい」――その夢を叶え、今年7月についに海に戻りました。
そんな橋本さんの応援ソングは吉幾三の『あんた』。
「落ち込んだ時にこの曲を聴くと、誰かに背中を押してもらえるようで涙が出る」と話します。大吉さんは再会の記念に“ミル・マスカラスのマスク”をプレゼント。笑いと涙が入り混じる温かい再会でした。
銭湯が灯す癒やしの灯――『ultra soul』がくれた力
さらに能登半島の先端、珠洲市へ。海沿いの銭湯「いい湯だな」は、地震で建物の一部が損傷しながらも、地下水を使ってわずか2週間で営業を再開しました。運営する綱島さんは自宅が半壊し、10か月もの間避難生活を送っていました。
「お湯を張った瞬間に、お客さんが“生き返った”ような顔をしてくれたのを忘れません」
そんな彼女を支えたのが、B’zの『ultra soul』。
ストレスが募る日々の中、「ウルトラソウル!」と叫ぶサビに、思い切り励まされたと語ります。銭湯の休憩室には、寄贈されたマンガやおもちゃが並び、地域の人々が集う憩いの場となっています。音楽とお湯、両方が人を温めていました。
被災地をつなぐ歌のリレー
番組では、地域の人々や視聴者から寄せられた多彩な“応援ソング”も紹介されました。
・坂本九『上を向いて歩こう』――前を向く勇気をくれる永遠の名曲
・影山ヒロノブ『CHA-LA HEAD-CHA-LA』――「笑って吹き飛ばせる強さ」をくれる曲
・ナオト・インティライミ『未来へ』――希望を信じる若者たちのテーマソング
・串田アキラ『炎のキン肉マン』――昭和世代の心に火をつける熱い一曲
また、中能登町で母の被災を経験した安田麗子さんは、サザンオールスターズの『桜、ひらり』を選びました。
この曲は、能登の復興を願って書かれたもの。彼女は「桑田佳祐さんが好きすぎて、息子の名前に“佳祐”をもらったんです」と微笑みながら話しました。音楽が、被災地の悲しみと未来を結ぶ“架け橋”になっているのです。
ヤマザキマリが語った「音楽の根源」
同行したヤマザキマリさんは、世界各地で取材を重ねてきた経験から、「歌っていうのは、ある時はご飯以上にエネルギーを与えてくれるもの」と語りました。
また、「世界中を見ても、お風呂を設置できる軍隊は日本だけ」と、自衛隊の入浴支援の取材エピソードを披露。
日本の“湯文化”と“歌文化”は、どちらも人を癒やすために進化してきたと感じたと話しました。
博多大吉さんも、「復興が進むほど、工事関係者が町を離れていく。それが少し寂しい」と心情を吐露しながらも、「それでもこの町には、人と人をつなぐ“音楽”がある」と締めくくりました。
まとめ:歌は心のインフラ――能登が教えてくれたこと
この記事のポイントは以下の3つです。
・能登半島では、被災地の人々が“自分応援ソング”を通じて絆を取り戻している
・『Jupiter』『あのね』『Progress』『WISH』『あんた』『ultra soul』『桜、ひらり』――それぞれの歌が人生の物語を支えている
・音楽は、心のインフラとして人と人をつなぎ、希望を再生させる力を持っている
博多大吉さんが訪ねた能登の人々は、どんな状況の中でも“音楽”を手放しませんでした。
そこには、「生きることは歌うこと」という、人間の本能のような強さがありました。
ラジオから流れる一曲が、今も被災地の空に響き、誰かの明日を支えています。
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