『ノーベル化学賞!MOF 世界を変えるジャングルジム!?』
『MOFとは何か』『北川進さんの研究』『多孔性材料が切りひらく未来』――今回の放送は、世界が注目する新しい素材を深く知るきっかけになります。『分子ジャングルジム』とも呼ばれるMOFがどう生まれ、なぜノーベル化学賞につながったのか。
MOFってどんな素材なの?
MOFは、金属イオンや金属クラスターと、有機分子のリンカーが結びつくことで生まれる三次元の多孔性材料です。この構造はまるで分子レベルのジャングルジムで、ナノサイズの孔が規則正しく並びます。孔の大きさを変えたり、内部の化学的性質を調整できるため、用途に合わせた『オーダーメイドの素材』にできる点が大きな魅力です。
活性炭やゼオライトのような従来の多孔質材料では実現が難しかった、分子ごとの選択的な吸着やガスの分離、触媒反応の制御などにも挑戦できます。内部空間の表面積がとても大きいことも強みで、ガス吸着や化学反応の効率を高められると期待されています。『21世紀の新素材』と呼ばれる理由は、このような自由度と可能性があるからです。
北川進さんがノーベル化学賞に至るまで
今回特集される北川進さんは、MOF研究の道を大きく切り開いた人物です。金属と有機分子を組み合わせるという発想からスタートし、三次元多孔構造を安定して作り出す研究を進めてきました。1990年代後半には、MOFがガスを効率よく吸着・貯蔵できることを実証し、それまで未知の領域だった素材研究に明確な道筋を示しました。
『金属イオン+有機配位子』による多孔構造の開発は世界的に評価され、2025年のノーベル化学賞受賞へとつながっています。世界の研究者が注目するMOFの基盤をつくったことは、多孔性材料の歴史において大きな転換点になりました。
「無用の用」から生まれた研究のひらめき
北川さんの研究姿勢として語られるのが『無用の用』という考え方です。すぐに役に立つ目的が見えなくても、素材としての構造や性質に興味を持ち、その奥にある可能性を探る姿勢がMOF誕生の背景にあります。当時は評価の定まらない研究テーマでしたが、長い時間をかけて探究を続けたことで、のちに世界を動かす発見へとつながりました。
研究仲間からは、挑戦を恐れないスタイルや、固定観念にとらわれない発想がMOFの進化を支えたという声が紹介されます。これは科学の世界で新しい価値が生まれる瞬間を象徴する考え方でもあります。
研究仲間が語るMOFの魅力と研究現場
MOF研究の現場では、金属や配位子を変えることで無数の組み合わせが生まれ、孔の大きさや形状、内部の化学的性質も思いのまま調整できます。これがMOFの『設計可能性』『再現性』『多様性』という特徴を生み出しています。
世界中の研究室では、構造解析、ガス吸着の実験、分離性能のテスト、触媒作用の検証などが日々行われています。『分子ジャングルジム』と呼ばれる立体構造が、どのように実際の化学反応やガス操作に役立つのかを確かめる作業が続けられています。
北川研究室は自由な発想を尊重する雰囲気があり、新しい構造や応用を見つけようとする姿勢が研究者たちを引きつけてきました。MOFが進化を続ける背景には、こうした研究文化の積み重ねがあります。
MOFがひらく未来の応用とは?
MOFは、多くの社会課題の解決に役立つ素材として注目されています。たとえば、水素や天然ガス、二酸化炭素といった気体の吸着・貯蔵・分離技術は、エネルギー問題や環境問題に直結します。CO₂の回収や再利用、温暖化対策にも応用が考えられています。
また、内部構造を変えることで触媒として働き、化学反応を効率よく進められる可能性があります。水の分解、汚染物質の分解、化学品の合成など、応用の幅はどんどん広がっています。センサーや医療分野でも応用が期待され、まさに未来をつくる素材として世界が研究を加速しています。
『三次元多孔構造』『オーダーメイド材料』『CO₂回収』『水素貯蔵』などのキーワードは、MOFが今どれほど大きな役割を担い得るかを表しています。
科学者を目指す人へ伝えたいこと
北川進さんの歩みから見えるのは、目的がはっきりしない研究でも、興味や探究心を大事にして続けることの価値です。分野の壁をこえて知識を集める姿勢は、MOF研究のように複数分野が交わる世界で力になります。
研究テーマがすぐには理解されなくても、信じて進んだことで新しい素材が生まれ、世界中の問題を解決する可能性に広がったという流れは、科学を志す人にとって大きな励みになります。
まとめ
今回の特集では、北川進さんが築いてきたMOF研究の歴史と、素材としての驚くほど広い応用可能性が紹介されます。『MOFとは何か』『なぜノーベル化学賞に選ばれたのか』『どんな未来が開けるのか』という疑問に応える内容になっています。
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