「豊かな輝き 金工」から見える、日本の金属工芸の奥深さ
このページでは『美の壺 選「豊かな輝き 金工」(2024年12月28日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。2000年以上続く日本の金属工芸である『金工』は、固く冷たい素材というイメージを超え、人の手によって驚くほど自由で豊かな表情を見せてきました。本記事では、弥生時代から続く歴史、鍛金・鋳金・彫金という技、そして番組で紹介される各地のものづくりを通して、『日本の金工』の魅力を立体的に読み解いていきます。
弥生時代に始まる金工の歴史と三つの基本技法
金工とは、金や銀、銅、鉄などの金属を加工し、器や道具、装身具、美術品を生み出してきた日本の伝統技術です。その始まりは弥生時代にさかのぼり、青銅器や鉄器の製作が大陸から伝わったことで、日本独自の金属文化が形づくられていきました。銅鐸や剣、装身具といった祭祀や権威を示す品から、やがて生活に使われる道具へと用途が広がっていきます。
奈良時代になると仏教文化と結びつき、仏像や寺院の荘厳具など、精神性を伴う金属表現が発展しました。鎌倉から江戸時代にかけては、武具や茶道具など、時代の価値観を映す金工が各地で磨かれていきます。
長い歴史の中で整理されてきた基本技法が、『鍛金』『鋳金』『彫金』です。叩いて形を生む、溶かして型に流す、彫って表情を与える。これら三つの技が組み合わさることで、日本の金工は実用品から芸術作品まで、幅広い表現を可能にしてきました。
叩き続けて生まれる造形 鍛金と人間国宝の花器
『鍛金』は、金属板や金属の塊を叩き、少しずつ形を整えていく技法です。一度で形が決まることはなく、叩いては焼き、また叩くという工程を何度も繰り返しながら、金属に無理のない形を与えていきます。
番組で紹介されるのは、こうした鍛金の技を極めた、人間国宝の大角幸枝による雄大な花器です。一枚の金属板が、長い時間と集中の積み重ねによって、大きく広がりのある器へと変わっていく姿は、鍛金ならではの魅力をはっきりと伝えます。
金属でありながら、硬さよりも伸びやかさが感じられる造形は、作り手の経験と感覚が形に表れたものです。金工が単なる加工技術ではなく、素材と向き合う表現であることがよく分かります。
暮らしの中で使われる金工 手作りカトラリーと銀のアクセサリー
金工の魅力は、美術館に並ぶ作品だけにとどまりません。番組では、日々の暮らしの中で使われる金属の道具にも光が当てられます。山形の古民家で作られる手作りのスプーンは、見た目の美しさだけでなく、口当たりや重さ、持ったときの感触まで考えられています。
金属を叩いて整えたカトラリーは、使い込むほどに表情が変わり、生活の中で育っていく道具になります。これは大量生産にはない、金工ならではの価値です。
また、秋田で生まれる銀のアクセサリーは、伝統に根ざしながらも自由な発想が生かされています。装身具としての金工は弥生時代から続く文化であり、現代では身につける人の個性や気分を映す存在として、形を変えながら受け継がれています。
炎と溶けた金属が生む迫力 富山・高岡の鋳金
『鋳金』は、金属を高温で溶かし、型に流し込んで形を作る技法です。番組では、富山県高岡市の鋳物の現場が紹介されます。真っ赤に溶けた金属が型へと注がれる光景は迫力があり、金工の持つ力強さを象徴しています。
鋳金の工程では、温度管理や流し込むタイミングなど、長年の経験に裏打ちされた判断が欠かせません。ほんのわずかな違いが、仕上がりに大きく影響します。
高岡は日本有数の鋳物の産地として知られ、仏具や生活道具などを通して技が受け継がれてきました。鋳金は、目に見える形の奥に、土地と人の歴史が積み重なった技であることが伝わってきます。
金属なのに草花のよう 彫金が生み出す繊細な表現
『彫金』は、鏨を使って金属の表面を彫り、模様や質感を与える技法です。番組では、たんぽぽの綿毛や草花を金属で表現した作品が登場します。遠目には本物の植物と見間違えるほどで、近づいて初めて金属だと気づくほどの繊細さがあります。
彫金では、線の深さや角度、間隔によって光の反射が変わり、柔らかな表情が生まれます。冷たい素材とされがちな金属が、命の気配を感じさせる姿へと変わる瞬間です。
こうした表現は、日本の金工が培ってきた観察力と技の結晶といえます。自然の形を写し取りながら、金属ならではの美しさを引き出す彫金は、金工の奥深さを象徴する存在です。
まとめ 金工は今も生き続ける日本の技
『美の壺 選「豊かな輝き 金工」』は、弥生時代から続く金属工芸の歴史と、現代まで受け継がれてきた『鍛金』『鋳金』『彫金』の技を通して、『金工』が今も暮らしと表現の中で生きていることを伝える内容です。
Eテレ【美の壺】スペシャル「民藝(みんげい)」 木喰仏に宿る民藝の心と南部鉄瓶400年の職人技、Marty Grossが追った日本の手仕事|2025年11月15日
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