迎春の舞台裏へ 工場が支える日本のお正月
このページでは『探検ファクトリー(2026年1月1日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
お正月に当たり前のように食卓に並ぶ『おせち料理』や、玄関を彩る『しめ飾り』。その一つ一つが、どんな現場で、どんな工夫を重ねて作られているのかを知ると、日本のお正月が少し違って見えてきます。この記事を読むことで、『おせち工場』と『しめ飾り工場』の舞台裏から、正月文化が今も続いている理由が見えてきます。
200万段を生み出す おせち工場のスケール感
最初に探検したのは、兵庫県西宮市にあるおせち料理の工場です。
この工場では、毎年およそ200万段ものおせちが生産されています。
その数を重箱で想像すると、そのスケールの大きさがよく分かります。
もし重箱をすべて積み上げた場合、その高さは富士山28個分にもなるといいます。
さらに一般的な3段重に換算すると、約67万軒分のお正月を支える量になります。
この工場が手がけるおせちは、全国の百貨店やスーパーからの依頼によるものです。
毎年ラインナップは増え続け、作られる種類は200種類以上にのぼります。
伝統的な重箱タイプから、家族構成や食の好みに合わせた多様なおせちまで幅広く対応しています。
最大の特徴は、年末に完成品の状態で各家庭に届くことです。
料理の盛り付けまで工場で仕上げられているため、届いたらそのまま解凍して食卓に並べるだけで済みます。
忙しい年末でも、盛り付けの手間なくお正月を迎えられる点が、多くの家庭に選ばれている理由です。
大量生産でありながら、全国の正月を支える現場として、ここはまさにおせち作りの中枢となっています。
一の重 二の重 三の重に込められた意味
工場に入る前に見せてもらった3段重のおせちには、段ごとに明確な役割があります。
おせちは、ただ料理を詰めているのではなく、重ね方そのものに意味が込められています。
一の重には、黒豆、かずのこ、くりきんとんなど、正月らしく見た目が華やかな料理が並びます。
重箱を開けた瞬間に「お正月が来た」と感じられるよう、色合いや形も意識された段です。
二の重は、えびや魚介類などの海の幸を中心にしたメイン料理が主役になります。
そこに口直しとして酢の物が入り、味の流れを整える役割も担っています。
三の重は、里芋やこんにゃく、野菜などの煮物が中心です。
落ち着いた味わいで、食事の後半を支える段として配置されています。
それぞれの料理には、昔から伝わる願いが込められています。
かまぼこは形が日の出を思わせることから『めでたさ』。
くりきんとんは黄金色にちなんだ『金運上昇』。
かずのこは卵が多いことから『子孫繁栄』。
黒豆は『まめに健康に暮らせるように』という願い。
田作りは田畑の肥料に使われた歴史から『五穀豊穣』。
紅白なますは紅白の色合いで『一家の平和』を表しています。
こうした意味を知ることで、おせちは単なるごちそうではなく、
一年の始まりに願いを込めて食べる特別な料理であることが実感できます。
冷凍でもおいしい理由は工場の技術
この工場では、開発から調理、盛り付け、冷凍まで、すべての工程を一か所で一貫して行っています。
大量生産でありながら品質をそろえられる理由は、この流れを分断せずに管理している点にあります。
おせち作りで特に重視されているのは、見た目の華やかさと、冷凍してもおいしさを保てることです。
正月にふさわしい彩りを守りながら、解凍後も食感や味が崩れないよう、工程ごとに細かな工夫が重ねられています。
加熱調理室では、スチームコンベクションオーブンが活躍しています。
高温の蒸気と熱風を使い分けることで、焼く・煮る・蒸すといった調理を効率よく進められます。
ただし、すべての料理を工場内で作るわけではありません。
高価な食材や仕上がりに強いこだわりが必要な料理を中心に、この工場で調理する体制が取られています。
中でも象徴的なのが、縁起物の『あわび』です。
あわびには『不老長寿』の願いが込められており、見た目の美しさも重要なため、殻むきはすべて手作業で行われます。
下処理を終えたあわびは、味付けした出汁と一緒に袋へ入れ、空気をしっかり抜いて密閉されます。
その後、95度以上で40分間じっくり加熱することで、安全性とやわらかさを両立させています。
味付けにも工場ならではの判断があります。
お重全体の料理とのバランスを考え、あわびはあえて少し薄味に仕上げられています。
主役でありながら主張しすぎず、ほかの料理と調和するよう設計されている点に、おせち全体を見渡す視点が感じられます。
伊勢えびから里芋まで 冷凍を前提にした工夫
長寿を願う縁起物の『いせえび』は、扱いにも特別な工夫がされています。
角が袋を突き破ってしまわないよう、まず大鍋で塩ゆでにされるのが特徴です。
見た目を美しく保ったまま次の工程へ進めるための、大切な下処理になります。
盛り付けの工程は、すべて手作業で行われます。
1人が1種類の料理だけを担当し、その役割を最後まで受け持ちます。
こうした分業体制によって、細かな違いが出にくくなり、品質が安定します。
およそ40人が関わって、ようやく一つの重が完成します。
盛り付けが終わると、次は検品係の出番です。
料理の向きや位置を一つ一つ確認し、少しでもずれていれば微調整します。
見た目の美しさがそのままおせちの印象につながるため、この工程は欠かせません。
確認を終えた重は、マイナス35度で一気に急速冷凍されます。
冷凍後も食感を保つための工夫も、工場ならではの見どころです。
こんにゃくにはタピオカ粉を使い、冷凍と解凍を経ても歯ごたえが残るようにしています。
里芋は水飴を加えて炊くことで、水分を中に閉じ込める仕組みです。
その結果、解凍しても食感が損なわれにくい仕上がりになります。
これらの工夫は、すぐに完成したものではありません。
冷凍後も満足できる味と食感を目指し、2年もの時間をかけて開発されています。
おせち一品一品の裏側には、長い試行錯誤と現場の積み重ねがあります。
年間90万個 日本全国のしめ飾りが生まれる工場
後半は、栃木県さくら市にあるしめ飾り工場を探検します。
この工場では、日本全国に向けて年間およそ90万個ものしめ飾りが生産されています。
種類も非常に多く、その数は数百種類に及び、地域ごとの正月文化に合わせた形が作られています。
この工場が立地する栃木県北部、特に塩谷町周辺は、日本有数のしめ縄の産地として知られています。
もともとは、農閑期にできる仕事として、農家の副業としてしめ縄づくりが広まりました。
各家庭で作られていたものが、出来の良い形をまねるようになり、少しずつ地域全体に定着していった背景があります。
しめ飾りは地域によって見た目が大きく異なりますが、実は土台となる形は限られています。
基本となるのは、大根じめ、牛蒡じめ、前垂れ、玉飾り、輪飾りの5種類です。
この土台の違いが、地域ごとの個性を生み出す土台になっています。
関東で多く見られるのは、丸い形が特徴の玉飾りです。
関西では、縦に長い形のゴンボ飾りが主流となっています。
静岡や九州北部では、羽を広げた姿を表した鶴飾りが多く使われます。
北海道では、宝物を積んだ宝船を模した飾りが定番で、全体的に装飾が華やかな傾向があります。
同じ正月飾りでも、土地ごとの暮らしや願いが形となって表れている点が、しめ飾りの大きな魅力です。
わら選びと編み方に込められた意味
しめ飾りに使われる藁は、稲が実る前に刈り取った稲藁です。
しめ飾り専用として適した品種を育ててもらい、材料の段階から用途が決まっています。
現在使われている藁のうち、約7割は海外産です。
ただし、そのまま使うのではなく、まず70度から80度の温度で8時間かけて乾燥させます。
乾燥後はすぐに加工せず、倉庫で寝かせる工程を経てから、しめ飾りづくりに使われます。
このひと手間によって、藁の扱いやすさや仕上がりが安定します。
玉飾りの土台となる大根じめでは、専用のパイプを使います。
そこに3束の藁を通し、均等になるよう整えながら編み上げていきます。
輪の形を作り、最後に根元をしっかり縛ることで、土台が完成します。
一方、牛蒡じめはおよそ1.5メートルにもなる長さがあります。
中心には古い藁を束ねて芯を作り、その周囲に青い藁を巻き付けていきます。
青い藁を使うことで、見た目に若々しさと張りが出るのが特徴です。
これを3束用意し、均等な力加減で編むことで、太く力強いしめ縄になります。
しめ縄は、左巻き、つまり反時計回りで編まれます。
これは偶然ではなく、しめ縄が特別なものであることを意識し、
作り手が気を引き締めて向き合うための作法として受け継がれてきました。
材料の選び方から編み方の向きまで、
しめ飾りづくりには、目に見えない決まりごとと積み重ねが息づいています。
地域色あふれる飾りと現代のしめ飾り
しめ飾りは、飾り付けにもはっきりとした地域差があります。
まず目につくのが、えびの使い方の違いです。
関東では素朴な形のドロエビ、中部では装飾性の高い水引エビ、西日本では立体的で華やかな飾りエビが多く使われています。
同じえびでも、土地ごとに表現の仕方が異なり、それぞれの正月観が映し出されています。
ほかの縁起物にも意味が込められています。
タイは名前の響きから『めでたい』を表し、祝いの中心となる存在です。
扇は開くほど広がる形から『末広がり』を意味します。
稲穂や米俵は、実りが続くことへの願いを込めた『豊作』の象徴です。
橙は代々実がつくことから『代々繁栄』を表し、家が続いていくことを願う意味があります。
番組では、地域ごとの代表的なしめ飾りも紹介されました。
北海道では宝物を積んだ宝船のしめ飾りが特徴的です。
三重では「笑う門には福来たる」を表した笑門の飾りが見られます。
愛媛でも、豊かさを象徴する宝船のしめ飾りが作られています。
同じ正月飾りでも、土地の歴史や願いが形となって表れているのが分かります。
最近では、こうした伝統を踏まえつつ、現代の暮らしに合ったしめ飾りも増えています。
玄関や室内に飾りやすいリース型や、軽くて扱いやすい紙製のしめ飾りなど、
生活空間になじむモダンなデザインが人気を集めています。
伝統を守りながら形を変え、しめ飾りは今の正月風景の中でも生き続けています。
新作おせちと家庭でできる詰め方のコツ
再びおせち工場に戻ると、時代に合わせた斬新な新作おせちが紹介されました。
伝統を守りながらも、今の食卓に合う工夫が随所に盛り込まれています。
注目されたのは、60品目を詰め込んだオードブルおせちです。
定番のかずのこだけでなく、ハンバーグやエビマヨといった洋風メニューも入り、
子どもから大人まで世代を超えて楽しめる構成になっています。
「おせちは大人のもの」という印象を変える、新しい発想のおせちです。
さらに、食事の締めを意識したお重も登場しました。
食後用として、モンブランを丸ごと詰めた甘いお重が用意されています。
おせちの流れの中で、デザートまで完結する点が特徴です。
豪華さを前面に出したおせちも紹介されました。
杯の形をした器の中に、『花咲蟹』、タイ、ローストビーフ、あわびといった
高級食材をふんだんに盛り込んだ一品です。
見た目のインパクトと特別感を重視し、祝いの席を強く意識した仕上がりになっています。
番組では、家庭向けのおせちの詰め方も詳しく解説されました。
代表的な詰め方は全部で5種類あります。
・重箱を9つに区切る 『市松』
・縦または横に段を作る 『段づめ』
・対角線に仕切る 『手綱』
・四角に仕切る 『七宝』
・中央に丸い器を置く 『末広』
この中でも、特に扱いやすいとされているのが『七宝』です。
仕切りが分かりやすく、料理の配置に迷いにくいのが特徴です。
盛り付けのコツとして紹介されたのは、
同系色の料理を横に並べないこと、
そして奥を高く配置して、正面からの見栄えを意識することです。
このポイントを押さえるだけで、家庭でもぐっと豪華なおせちに仕上がります。
工場で培われた知恵は、新作おせちだけでなく、
家庭でのおせち作りにも生かせる形で伝えられていました。
まとめ
『探検ファクトリー』のお正月スペシャルは、『おせち工場』と『しめ飾り工場』という二つの現場から、日本のお正月を支える技と工夫を伝えてくれました。大量生産でありながら、一つ一つに意味と願いが込められていることが分かります。背景を知ることで、今年のお正月がより味わい深いものになります。
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