鍵盤ハーモニカ工場の秘密に迫る!職人技が支える音の世界|2025年3月15日放送
2025年3月15日放送のNHK総合「探検ファクトリー」では、鍵盤ハーモニカの製造現場を訪問しました。日本国内で最も多くの鍵盤ハーモニカを生産している静岡県浜松市の工場で、その製造工程や職人技のすごさを探ります。鍵盤ハーモニカは、学校の音楽の授業でもおなじみの楽器ですが、作る過程では驚くほど繊細な技術と職人の感覚が求められます。今回は、実際に工場の中を探検し、どのようにして1台の鍵盤ハーモニカが作られるのかを詳しく紹介します。
国内最大の鍵盤ハーモニカ工場とは?
この工場を運営しているのは、1954年創業の歴史ある楽器メーカーです。長年にわたって楽器製造を続け、鍵盤ハーモニカのほかにもハーモニカ、リコーダー、ピアニカなどの教育楽器を幅広く手がけています。その中でも鍵盤ハーモニカの生産量は国内トップクラスで、年間約35万台を生産し、累計生産台数は約2900万台にも達しています。
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教育現場で広く使われる理由
もともと、学校での音楽教育ではハーモニカが主流でした。しかし、ハーモニカは「どの穴を吹けばどの音が出るのか」を覚える必要があり、特に音楽を初めて学ぶ子どもたちには難しいという課題がありました。そこで登場したのが鍵盤ハーモニカです。- 鍵盤があるため、ピアノのように音階を視覚的に理解できる
- 指を使って簡単に音を出せるため、子どもでも演奏しやすい
- 音を出すために息を吹き込む必要があり、呼吸を意識した演奏ができる
こうした理由から、鍵盤ハーモニカは1970年代に教育用楽器として全国の学校に普及しました。
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教育用モデルとプロ用モデルの違い
鍵盤ハーモニカには、使用目的によって2種類のモデルがあります。-
教育用モデル(32鍵盤)
- 小学校の授業でよく使われる
- 低学年の子どもでも扱いやすいサイズ
- シンプルな設計で、演奏の基本を学ぶのに適している
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プロ向けモデル(44鍵盤)
- 大人の演奏家やプロのミュージシャンが使用
- 音域が広く、より豊かな表現が可能
- ステージ演奏やジャズ、クラシックの演奏でも活用される
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プロミュージシャンの中には、鍵盤ハーモニカを主楽器として演奏する人もおり、音楽の世界でも重要な楽器の一つになっています。
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鍵盤ハーモニカが幅広い世代に親しまれる理由
鍵盤ハーモニカは、シンプルな構造ながらも奥が深い楽器です。そのため、子どもの教育用だけでなく、大人になってからも演奏を楽しめる楽器として人気があります。- 軽くて持ち運びやすいため、どこでも演奏ができる
- 指1本で簡単に音が出せるため、楽器初心者でもすぐに楽しめる
- 息を吹き込んで音を出すため、リズムや強弱の表現がしやすい
- 音楽療法にも活用され、高齢者のリハビリや健康促進にも役立つ
このように、鍵盤ハーモニカは学校教育だけでなく、プロの音楽家や大人の趣味、さらには健康やリハビリの分野でも幅広く使われているのです。
鍵盤ハーモニカの音を生み出す「リードプレート」
鍵盤ハーモニカの音の決め手となるのが、「リードプレート」と呼ばれる金属製の部品です。鍵盤を押すと空気が流れ、その流れによってリードが振動し、音が鳴る仕組みになっています。この構造はハーモニカと同じで、空気の流れとリードの振動が音のもとになります。
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リードの長さと厚みが音程を決める
- 短いリードほど高い音、長いリードほど低い音が出る
- 厚みの違いでも音程が変わるため、精密な調整が必要
- 長さや厚みが少しでもズレると、音が不安定になる
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鍵盤を押すことで、特定のリードだけが振動する
- 空気の通り道ができ、押した鍵盤に対応したリードが振動する
- 音の強弱は息の吹き込み方で変えられる
- すべてのリードが適切に配置されていないと、音が正しく出ない
鍵盤ハーモニカの音質を決める大事な部分なので、リードプレートの精度が鍵盤ハーモニカの「音の良し悪し」を左右すると言われています。そのため、工場ではいくつもの工程を経て、細かく調整しながら作られています。
- 工場でのリードプレートの製造ポイント
- 1000分の2mmの誤差でも音が変わるため、削る作業は職人の技が必要
- リードの角度や隙間の調整が、音の出方を大きく左右する
- 一つひとつのリードをチェックし、ズレがあれば調整する
- 音程を整えるため、リードの根元を削ると高音に、先端を削ると低音になる
リードプレートは、鍵盤ハーモニカの「心臓部」とも言える重要な部品です。少しの誤差が音のズレにつながるため、細かい調整を何度も繰り返しながら、精密な作業によって仕上げられています。職人の技と機械の力が組み合わさることで、安定した音が出る鍵盤ハーモニカが完成するのです。
音程を決める職人技!リードプレートの製造工程
リードプレートの製造は、鍵盤ハーモニカの音程を正しく調整するための重要な工程です。わずかな誤差が音に影響を与えるため、職人の技術と最新の機械が組み合わさりながら作られています。その中でも、特に重要な工程が金属板を適切な厚みに削る「弁くり」です。
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弁くり(べんくり)
- リードの厚みを削る工程で、これが音程の基礎を決める
- 金属板の厚みは約0.4mmと非常に薄く、1000分の2mmの誤差でも音が変わってしまう
- 職人は、指先の感覚と長年の経験を頼りに、繊細な調整を行う
- 機械では不可能な「微調整」をすることで、安定した音程が実現する
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弁ぬき(べんぬき)
- 弁くりで調整した金属板を、リードの形に正確に打ち抜く工程
- ここでズレがあると、後の調整では修正できないため、精度が求められる
- 職人が専用の型を使い、均一な形のリードが作られるようにチェックしながら作業
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アガリつけ
- リードにわずかな反りをつける工程で、音の出方を左右する重要な作業
- 空気の流れをスムーズにするために、音ごとに角度や高さが異なる調整をする
- 反りが強すぎると音が出にくくなり、弱すぎると音が安定しないため、職人の技が活かされる
- 目視では判断できない細かな違いを調整するため、わずか数ミリ単位の動きが求められる
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自動選別機によるチェック
- リードが正しい位置に取り付けられているか、振動数が適切な範囲内かを機械でチェック
- 一つでもズレがあると音が不安定になるため、厳しい精度管理が行われる
- 機械による測定結果をもとに、不適合なものは修正や交換がされる
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自動調律機での微調整
- レーザーを使ってリードの振動数を測定し、音の高低を自動で判断
- 基準より音が高い場合はリードの根元を削り、低い場合は先端を削ることで微調整
- 最終的な仕上げは職人の手作業で行い、微妙な誤差も修正して完璧な音程を作り上げる
このように、鍵盤ハーモニカのリードプレートは、わずかな誤差も許されない精密な工程を経て作られています。機械の力を活用しながらも、最終的には職人の技によって微調整されることで、美しい音が生まれるのです。
鍵盤ハーモニカの組み立てと仕上げ調整
リードプレートが完成したら、次はいよいよ鍵盤ハーモニカの組み立てに入ります。音の要となるリードプレートがしっかりと固定され、鍵盤と本体が正しく連携することで、初めて楽器としての形になります。組み立て作業は、一つひとつのパーツが正確に取り付けられなければなりません。ここでも職人の技術が求められます。
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バネ掛け
- 鍵盤を押したときにスムーズに戻るためのバネを取り付ける作業です。
- 取り付けるバネの強さや角度を間違えると、鍵盤が重く感じたり、戻りが悪くなったりするため、慎重に調整します。
- 鍵盤の押し心地や反発のバランスが崩れると、演奏に影響が出るため、1つ1つ手作業で取り付けられます。
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ビス留め
- 鍵盤ハーモニカの本体にリードプレートをしっかりと固定する工程です。
- わずかでもズレてしまうと音のズレや空気漏れの原因になるため、1台ごとに慎重に行われます。
- 締め付けすぎるとリードが正常に振動しなくなり、緩すぎると空気漏れを起こすため、細かい調整が必要です。
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最終調律と空気チェック
- 職人が再び「アガリつけ」と「調律」を手作業で行い、微妙なズレを修正します。
- ここでは、実際に息を吹き込んで音を確認し、リードの反り具合や振動の仕方を微調整します。
- 専用の機械で空気を送り込み、空気漏れや音のズレがないかを細かくチェックします。
- 音が基準より高い場合は根元を削り、低い場合は先端を削るなど、さらに微調整が行われます。
こうした一連の作業を経て、ようやく鍵盤ハーモニカが完成します。最後のチェックを通過したものだけが製品として出荷され、子どもたちやミュージシャンの手元に届けられるのです。鍵盤ハーモニカは手軽な楽器に見えますが、1台1台に職人の細やかな調整と品質管理が込められているのです。
できたての鍵盤ハーモニカを演奏
工場探検の最後には、出演者のすっちーさん(吉本新喜劇)、礼二さん(中川家)、剛さん(中川家)が、できたばかりの鍵盤ハーモニカで演奏しました。演奏経験がない人でもすぐに音を出せる手軽さがあり、鍵盤ハーモニカの魅力を改めて実感しました。
まとめ
今回の「探検ファクトリー」では、鍵盤ハーモニカが繊細な技術と職人技によって作られていることがよく分かりました。小学校の授業で馴染みのある楽器ですが、音程を調整するために極めて精密な作業が必要であることに驚かされます。
鍵盤ハーモニカを手に取る機会があれば、職人の技や音作りのこだわりを思い出しながら、音を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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