魔改造の夜が生んだ“前代未聞のオフィスチェア決戦”
このページでは『魔改造の夜(2026年1月29日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
オフィスチェアが全力疾走し、エンジニアたちの技術と情熱が火花を散らした特別回でした。
建設機械のプロである日立建機チームと、自動車制御の雄・アイシンチームが、わずか20mのコースにすべてを注ぎ込みます。
たった一度のスイッチで、回転・直進・キャッチ・停止。
“ありえない挑戦”を成立させるための工夫と苦悩、そして本気のぶつかり合いが、画面いっぱいに広がりました。
魔改造の夜とは?オフィスチェアが全力疾走する夜
「魔改造の夜」は、身近な製品を“ありえない方向”に進化させてしまう技術開発エンタメ番組です。日本を代表するエンジニアたちが、自社の技術とプライドをかけて、想像を超えた改造に挑戦します。
今回のテーマは、番組史上初となる“2チーム直接対決”の「オフィスチェア ビーチフラッグス」。オフィスでおなじみの回転椅子にモーターなどを取り付け、20m先のフラッグを誰よりも速く、そして正確に掴み取る戦いです。
ルールはシンプルですが、中身は超ハイレベルです。スイッチはたった1回。その1回で「椅子が回転してスタートし、まっすぐ走り、フラッグを掴み、止まる」までを自動制御で完結させなければなりません。コースは20m、路面はデコボコのコンクリート。さらに肘掛け以外がフラッグ側のラインを越えたら失格という厳しい条件が加わります。
そんな超難題に挑むのが、建設機械メーカー・日立建機の有志チーム「H立建機」と、自動車部品の巨大メーカー・株式会社アイシンの社員たちによる「Aイシン」です。どちらも世界レベルの技術力を持つ企業同士の真っ向勝負となりました。
H立建機(日立建機)チーム 土浦発・建機エンジニアの執念
H立建機の正体は、茨城県土浦市などを拠点に大型ショベルなどを手がける建設機械メーカー・日立建機です。土浦工場は中型から超大型の油圧ショベルやダンプトラックを生産する“マザー工場”で、世界各地域向けにカスタマイズした機種を送り出している拠点でもあります。
今回の魔改造でH立建機が生み出したマシンが「アクセル魔椅子ター」。ネーミングからも“建機の機動力を椅子に乗せる”という意気込みが伝わります。コース上に引かれた白線をセンサーで読み取り、その情報をもとに椅子の回転や走行速度を細かく制御。デコボコ路面をものともせず、一直線にフラッグへ向かわせる設計です。
フラッグを掴むために採用したのは、蛍光バンドを使ったキャッチ機構。フラッグに触れた瞬間に、しなやかに巻き取りながら確実に捉えることを狙ったアイデアです。この発想は、建機の油圧配管やホース類の取り回しに慣れたエンジニアたちならではの視点とも言えます。
開発期間の1カ月半、H立建機のメンバーは「どうすれば真っすぐ走るか」「どうすれば白線からはみ出さないか」を徹底的に追求しました。椅子の回転速度をミリ単位の感覚で調整し、センサーの読み取り精度とモーター制御のバランスを何度も試行錯誤。夜会直前には、魔改造した装置が割れてしまうトラブルも発生しましたが、応急処置を施して現場に持ち込みます。
本番のタイムレース。土浦で培ってきた技術を乗せたアクセル魔椅子ターはスタートこそスムーズでしたが、最後の最後でフラッグに届かず、痛恨の記録なし。結果だけ見れば“失敗”ですが、「重機を真っすぐ走らせる」「荒れた路面に対応する」といった建機開発のノウハウを、オフィスチェアにギュッと圧縮した挑戦は、視聴者に強烈な印象を残しました。
Aイシン(アイシン)チーム 刈谷発・自動車部品メーカーの総力戦
Aイシンは、愛知県刈谷市に本社を置く自動車部品の大手メーカー・株式会社アイシンが母体のチームです。アイシンはトヨタグループの一員として、オートマチックトランスミッションをはじめとするドライブトレイン、ブレーキ、ボディ部品などを世界中の自動車メーカーに供給しているグローバルサプライヤーです。
そんな“動くものを制御するプロ集団”が挑んだマシンが「B奪取」。名称どおり、ビーチフラッグ(Beach Flag)の“B”を奪い取るという意味が込められています。
チームのリーダー・木村は、魔改造期間中に初めての子どもの誕生を迎えます。家族が増えるタイミングでの大勝負というドラマも背負いながら、「どうしても3秒を切りたい」という高い目標を掲げました。しかしスピードを求めれば求めるほど車体に無理な力がかかり、制御チームは頭を抱えることになります。
そこでAイシンが打ち出した解決策が、センサーとカメラを組み合わせた高度なコントロールです。まずは椅子の向きを検知するセンサーを使い、仮の模型で挙動を徹底的に検証。高速走行時にわずかな角度のズレが大きな軌道のズレにつながることを突き止めたうえで、自動運転用カメラを搭載し、コース上の白線を読み取らせるシステムに進化させました。
センサーの比率を高めれば応答は早くなりますが不安定になりがちで、カメラの比率を高めれば安定する代わりに反応が遅くなります。その膨大な組み合わせの中から、最適なバランスを探し出す地道なチューニング作業は、まさに自動車の車両制御開発そのもの。Aイシンのエンジニアたちは、刈谷で培ってきた電子制御技術を総動員して、「直進性」と「フラッグを狙う精度」を両立させようとしました。
第一種目・タイムレースでは、B奪取は力強くスタートしたもののタイムアップで失格という結果に。目標に掲げた“3秒切り”には届きませんでしたが、そのバックボーンには、世界中のクルマの動きを支えてきた企業ならではの、非常に高度な制御技術が息づいていました。
第1種目タイムレース 白線センサーと蛍光バンドの賭け
第1種目は、20m先のフラッグをどれだけ速く、確実に掴めるかを競うタイムレース。試技は1回のみ、やり直しはありません。肘掛け以外がフラッグ側のラインを越えたら即失格というルールの中で、2チームは全力の一発勝負に挑みました。
H立建機のアクセル魔椅子ターは、「白線センサー+蛍光バンド」という構成で勝負します。建機の自動運転・自動化にも通じるライン検知技術を応用し、白線からはみ出さないように椅子の回転を緻密に制御。蛍光バンドは、フラッグに触れた瞬間に絡み取るような設計で、「一度捉えたら離さない」という発想から生まれた構造です。
しかし本番では、デコボコのコンクリート路面が容赦なく牙をむきます。微妙な振動による姿勢のズレが積み重なり、最後の数十センチでライン上の位置が狂ってしまう結果に。アクセル魔椅子ターはフラッグにわずかに届かず、記録なしという悔しい展開となりました。
一方のAイシン・B奪取は、「センサー+カメラ+自動運転制御」の三位一体で挑みます。コース全体を見渡すカメラと、車体の向きをリアルタイムで把握するセンサーを組み合わせることで、デコボコ路面でもブレを抑え、フラッグを真正面から狙う戦略です。
フラッグを掴むために採用したのは、両面テープでキャッチする方式。高速で通過しながらフラッグを“貼り取る”イメージで、スピードと確実性を同時に狙った仕組みです。ただし、タイミングがズレればフラッグを弾き飛ばしてしまうリスクも抱えています。
結果として、第1種目はH立建機がフラッグに届かず、Aイシンもタイムアップで失格。どちらも一発勝負の難しさと、コース条件の厳しさをまざまざと見せつける幕開けとなりました。
第2種目マッチレース 2チーム直接対決の心理戦
第2種目は、番組史上初となる2チーム同時スタートのマッチレース。3本勝負で先に2勝したチームが優勝となるルールです。両チームのコースの間には幅1.5mの緩衝地帯が設けられ、ここに侵入するとペナルティ。さらに、フラッグに先に触れたにもかかわらず掴めなかった場合も、次のレースで2mビハインドからスタートしなければなりません。
マッチレース前には、わずか10分間の調整タイムが与えられます。この短い時間で、H立建機もAイシンも、それまでの試技で浮き彫りになった弱点を必死に補正しようとします。センサー感度、カメラの補正量、モーター出力、ブレーキのタイミング……。いずれも企業の本業で磨かれてきた技術ですが、ここでは「オフィスチェア」という極端な条件のなかで最適値を探らなければなりません。
1本目の1st MATCHでは、両チームとも緩衝地帯に侵入してしまい勝者なし。スピードを求めるあまり、ほんのわずかなラインのズレが致命傷となる緊張感が画面越しにも伝わってきます。
2nd MATCHでも勝者は現れません。Aイシンはフラッグに触れたものの、勢い余って弾き飛ばしてしまい、次のレースでビハインドスタートが決定します。狙い通りに“貼り取る”はずの両面テープ方式が、ここでは高いスピードと微妙な位置のズレによって裏目に出てしまいました。
3rd MATCHも決着には至らず、この夜のマッチレースは「どちらか一方が圧勝する」という構図にはなりませんでした。ただ、ルール上は勝敗がつかなくても、互いの技術がギリギリのところでぶつかり合い、わずかな差が結果を左右する緊迫感が最後まで続いた点こそ、この回の大きな見どころと言えます。
建機vs自動車部品 技術とプライドがぶつかった一夜
今回の「オフィスチェア ビーチフラッグス」は、単なるバラエティではなく、建設機械メーカーと自動車部品メーカーが真正面からぶつかる“技術の一騎打ち”でした。
茨城県土浦市を拠点とする日立建機は、世界中の工事現場で活躍する油圧ショベルやダンプトラックを生み出している企業です。巨大な重機を思い通りに動かすための油圧技術、過酷な現場に耐える耐久性、荒れた地形でも確実に走る走行制御。そのノウハウを、たった1脚のオフィスチェアに凝縮しようとしたのがH立建機でした。
一方、愛知県刈谷市のアイシンは、自動車の心臓部ともいえるトランスミッションやブレーキ、ボディ部品を供給し、“クルマの走る・曲がる・止まる”を支えてきた会社です。電子制御の技術資産を活かし、「センサー+カメラ+自動運転」という組み合わせでオフィスチェアを制御しようとしたAイシンのアプローチは、まさに最先端のモビリティ開発そのものと言えます。
結果だけを見れば、どちらのマシンも完璧な成功には届きませんでした。しかし、20mの短いコースの裏側には、それぞれの企業がこれまで積み上げてきた研究開発、試作と失敗の歴史が凝縮されています。
建機の“現場力”と、自動車部品の“制御力”。そのぶつかり合いを、視聴者はオフィスチェアという意外性たっぷりのアイテムを通じて目撃することになりました。
「なぜ真っすぐ走らないのか」「あと数センチ届かないのはなぜか」。エンジニアたちがギリギリまで追い込んだからこそ見えてくる課題と、その課題に向き合う姿勢こそが、魔改造の夜の本当の魅力です。今回の回は、2026年という節目の年に、“日本のモノづくりが持つ底力”を改めて見せつけた一夜だったと言い切れます。
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