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NHK【みみより!解説】将棋・女流棋士 出産とキャリアの両立のために|福間香奈が語る将棋 規定見直しと女流タイトル戦 出産リスク・妊娠ルール・不戦敗問題|2026年1月29日

みみより!解説
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将棋界を揺らす“静かな革命”

このページでは『みみより!解説(2026年1月29日)』の内容を分かりやすくまとめています。

将棋の世界で長く語られてこなかった課題が、今、女流棋士たちの声によって大きく動き始めています。
タイトルを守りながら母として歩むことは本当に不可能なのか。盤上の強さだけでは越えられない壁が、静かに、しかし確実に姿を現しました。

その中心にいるのが、六つの冠を抱えながらも妊娠・出産と向き合った福間香奈
彼女の経験は、将棋界全体の未来を変えるきっかけとなりつつあります。

女流棋士というプロ制度とタイトル戦のしくみ

【女流棋士】は、日本将棋連盟が1974年にスタートさせた女性のプロ制度です。きっかけは、女性だけのタイトル戦である「女流名人位戦」が創設されたことでした。最初はわずか6人で始まったこの制度も、今では日本将棋連盟所属だけで80人前後の規模にまで広がっています。

将棋界には、男女を区別しない一般プロの【棋士】と、女性限定の【女流棋士】という二つのプロ制度があります。棋士は現在、およそ170名強。その全員が性別にかかわらず同じ土俵で戦うのに対し、女流棋士は女子プロとして独自のタイトル戦やイベントに出場します。現役棋士は173名というデータもあり、長い歴史の中で積み上がった伝統の上に、現在の将棋界が成り立っていることがわかります。

女流棋士には「8大タイトル」と呼ばれる主要タイトルがあり、白玲戦・清麗戦・女流王座戦・女流名人戦・女流王将戦・女流王位戦・マイナビ女子オープン・倉敷藤花戦と、年間を通じてさまざまなシリーズが行われています。これらはスポンサーや開催地も多様で、全国各地でタイトル戦や大盤解説会が開かれ、将棋ファンを集めています。

その女流タイトルの中で、岡山県倉敷市が主催する【倉敷藤花戦】は特に象徴的な存在です。倉敷市出身の大山康晴十五世名人の功績をたたえて1993年に創設されたタイトル戦で、女流棋士全員と女性アマチュアが参加し、勝ち上がった挑戦者が「倉敷藤花」のタイトル保持者と三番勝負を戦います。倉敷市芸文館での公開対局や大盤解説会は、毎年多くのファンが詰めかけるイベントになっています。

妊娠・出産とタイトル戦規定をめぐる“見えないリスク”

一方で、女流棋士には男性棋士とは違う現実もあります。それが【妊娠・出産】とタイトル戦の両立です。タイトル戦の日程は、年間スケジュールの中で細かく組み込まれており、対局場の確保やスポンサーの都合もからむため、簡単には動かせません。

かつての日本将棋連盟の規定では、天災や交通機関のマヒなど「社会通念上相当と認められる事由」に当てはまらない限り、対局できない側は不戦敗とする、という趣旨の条文がありました。妊娠や出産による体調不良は、原則としてその“例外”として扱われてこなかったのです。

女流タイトル戦は1年の中でぎっしり詰まったスケジュールで進行します。そのため、妊娠・出産と対局日が重なった場合、「延期できないなら不戦敗」という運用になりやすく、タイトル保持者にとっては、子どもを授かることとプロとして戦い続けることが、実質的に“二者択一”のように感じられる危険な状況でした。

さらに、規定の文言と実際の説明が食い違っていたことも問題を深刻にしました。表向きは「妥当と判断される場合は対局日の変更も可能」としながら、現場では「日程変更はほぼできない」と受け取れる説明がなされていたケースがあり、女流側と連盟側の認識ギャップが膨らんでいきます。

福間香奈女流六冠が味わった不戦敗と、その問題提起

この「見えないリスク」を、もっとも厳しい形で体験したのが【福間香奈】女流六冠です。福間は清麗・女流王座・女流名人・女流王位・白玲・倉敷藤花など、女流8大タイトルのうち6つを持つ“絶対女王”で、女流棋界の顔とも言える存在です。

2024年、福間が妊娠を公表したあと、タイトル戦の一部は椅子対局や服装の配慮など、母体への配慮をしつつ進められましたが、すべてがうまくいったわけではありません。日程変更が叶わなかったタイトル戦では、体調不良によってやむなく不戦敗となり、「戦う前に敗れる」という結果だけが公式記録として残ってしまいました。福間自身も「どうしようもない無念さが続いた」と語っており、この出来事は女流棋界に大きな衝撃を与えました。

その経験を踏まえ、福間は【日本将棋連盟】に対し、妊娠・出産に関わる規定の見直しを正式に要望します。特に問題視されたのは、「妊娠や出産によって事実上タイトル戦が不戦敗になる」構造そのものです。タイトル保持者が自らの意思で盤上に向かうこともできないまま、地位を失う――これは、競技の公正さ以前に、人としての尊厳の問題ではないかという強い問題提起でした。

同時に、福間は史上初の「女性棋士」を目指して【棋士編入試験】にも挑戦しています。直近の公式戦で10勝以上・勝率6割以上という厳しい条件を満たしての受験であり、女流という枠を越えて一般棋士の世界へ飛び込もうとする姿勢そのものが、将棋界に新しい「ロールモデル」を提示していると言えます。

日本将棋連盟の規定見直しと謝罪に至るまで

福間の声を受け、【日本将棋連盟】は2025年4月に、女流タイトル戦に関する新しい規定を設けました。妊娠中のタイトル保持者について、産前6週間から産後8週間までの期間と対局日が重なる場合、対局者の変更(いわば“代役”)を認める、という内容です。しかし、この案は「タイトル保持者本人が戦えないままタイトルを明け渡すことになりかねない」「本人の意思が十分尊重されていない」と、再び批判を招きました。

さらに決定的だったのは、規定の運用に関する説明の不十分さです。連盟の担当者が一部の女流棋士に対し、「対局日の変更はできない」と受け取られる説明をしていたことが判明。表向きの文言とは異なるニュアンスが伝わっていたことで、「妊娠したらタイトル戦から事実上締め出される」という不信感が一気に広がりました。

2026年1月23日、連盟は記者会見と説明会を開き、「コミュニケーションが足りていなかったことに尽きる」として謝罪しました。妊娠中の不戦敗の扱いについては、問題となった一部規定を削除。これまでの対応が適切ではなかったと認め、女流棋士や関係者に頭を下げる形となりました。

同時に、倉敷市など【倉敷藤花戦】の主催者にも直接出向き、経緯の説明とともに謝罪を行っています。タイトル戦は連盟だけでなく、地方自治体やメディア、スポンサーが一体となって作り上げる文化イベントでもあり、その信頼を傷つけたことへの反省もにじむ対応でした。

検討委員会が描く「出産とキャリア両立」の新ルール案

今後について日本将棋連盟は、医療・法律の専門家、現役女流棋士など9人からなる【検討委員会】を立ち上げ、妊娠・出産とタイトル戦をどう両立させるかという「運用指針案」を4月末までにまとめる方針を示しています。番組でも紹介されていたように、これまで連盟内部だけで決めてきたルールを、外部の専門家や当事者の視点を交えて練り直す初めての枠組みになります。

検討委員会が向き合うべきポイントは大きく三つあります。
ひとつ目は、母体と胎児の健康を最優先にしながらも、「戦いたい当事者の意思」をどう尊重するか。
ふたつ目は、対局延期や会場変更が必要になったとき、公平性をどう担保するか。
そして三つ目は、ルール文言だけでなく、女流棋士への説明や相談体制をどう整備するかです。

妊娠・出産は時間軸の長い出来事です。つわりの時期、臨月、産後の回復など、どのタイミングでどの程度負担がかかるかは人によって違います。「○週から○週まで一律で欠場扱い」と線引きするだけでは、個々の事情に寄り添い切れません。むしろ、医師の意見書や本人の希望をもとに、柔軟に日程調整・対局方式(椅子対局、持ち時間短縮など)を選べる仕組みが求められています。

また、ルールはどれだけ良くても、現場の説明や運用がずれていれば意味がありません。今回の問題でも、「変更できる」と書いてある規定が、「変更できない」と伝わっていたことが炎上の火種でした。今後は、文書・説明会・個別相談などのチャンネルを通じて、女流棋士が安心して妊娠・出産を選べる環境づくりが焦点になっていきます。

史上初の女性棋士を目指す挑戦と、これからの将棋界

もうひとつ見逃せないのが、福間香奈女流六冠が挑む【棋士編入試験】です。これは、一定の実績を挙げた女流棋士やアマチュアが、現役棋士と五番勝負を戦い、3勝すれば正式な「棋士」として編入される制度です。福間は過去にも一度挑戦しており、今回は2度目のチャレンジ。第1局の試験官を務めるのは、現役最年少棋士の山下数毅四段。すでに公式戦で一度敗れている相手に、改めて挑む構図になっています。

この挑戦は、「女流棋士は女性用の枠」「棋士は男性だけ」という長年の構図を揺さぶる試みでもあります。すでに本格派の実力を持つ女流棋士が多数いる中で、制度としての「壁」をどう乗り越えていくのか――福間の編入試験は、その象徴的なイベントと言えるでしょう。

一方、男性プロのトップには【藤井聡太】が君臨し、竜王・名人など複数タイトルを同時に保持しながら、圧倒的な勝率で将棋界を牽引しています。 盤上のレベルは年々上がり続け、その最前線に女性も男性も関係なく近づいている今だからこそ、「キャリアとライフイベントをどう両立させるか」というテーマは避けて通れません。

今回の番組で取り上げられた【女流棋士の出産とキャリアの両立】は、一人の棋士の物語であると同時に、プロ将棋界全体のルールを問い直すきっかけになっています。福間香奈というトッププレーヤーが声を上げ、連盟が謝罪し、検討委員会が動き出した今、「出産を理由に戦う前から負けてしまう世界」から、「出産を経てもなお盤上で堂々と戦い続けられる世界」へと、将棋界は確実に舵を切り始めています。

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