性差医療を知ることは、自分の体を守る第一歩
このページでは『みみより!解説(2026年2月4日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
男女で病気の出方が違う――その事実は、知れば知るほど命を守る手がかりになります。
とくに性差医療は、症状の見え方や薬の効き方にまで深く関わる大切な視点です。
番組では、心筋梗塞の症状の違いから薬の副作用まで、私たちが見落としがちなポイントを丁寧に解き明かしていました。
日常の“なんとなく不調”が、実は大きなサインかもしれません。
まずは自分の体を知る一歩として、このテーマに触れてみてください。
性差医療とは?男女の違いを前提にした新しい医療
性差医療とは、「病気のなりやすさ」「症状の出方」「検査の結果」「薬の効き方」などにある男女の違いをきちんと理解し、それぞれに合った診断や治療を行う考え方です。
これまでの医療は、「男性を基準にしたデータ」を女性にも当てはめて考えることが多くありました。特に心臓や脳の病気、生活習慣病など、男女で発症パターンが違う病気でも、同じ基準で見てしまうことが少なくありませんでした。
日本で「性差医療」という言葉が本格的に紹介されたのは1999年。内科医の天野惠子が学会でこの考え方を示し、「男女の違いを前提にした医療をめざそう」と強く訴えたのが始まりとされています。
番組では、アナウンサーの岩渕梢が、心筋梗塞やリウマチ、骨粗しょう症など身近な病気を例に挙げながら、「自分の体の性差を知ることが命を守る一歩になる」と、視聴者に語りかけていました。
男性と女性で「かかりやすい病気」はどう違う?
番組の前半では、「男性がかかりやすい病気」「女性がかかりやすい病気」が整理されていました。
男性で目立つのは、
・心筋梗塞
・痛風
・糖尿病
・脳卒中
一方、女性で多いのは、
・関節リウマチ
・骨粗しょう症
・貧血
・うつ病
というラインナップです。
同じ「生活習慣病」でも、男性は心筋梗塞や脳卒中のように血管が詰まる病気が目立ちます。背景には、喫煙や飲酒、ストレスに加え、男性ホルモンの影響も関係していると考えられています。
女性の場合は、骨や関節、メンタルに関わる病気が多くなります。例えば骨粗しょう症は、閉経によって女性ホルモンが減ることで骨がもろくなり、一気にリスクが高まります。関節リウマチも女性に多い自己免疫の病気で、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
番組では、「病気の名前は同じでも、誰に多い病気なのかを知ることが大事」と繰り返し説明していました。
自分の性別や年齢に応じて、「将来自分はどの病気に近づきやすいのか」を意識しておくことが性差医療のスタートラインだ、と位置づけていたのが印象的です。
心筋梗塞の症状と死亡率にひそむ男女差
続いて取り上げられたのが、心筋梗塞です。
心筋梗塞は、心臓の血管(冠動脈)が突然詰まり、心臓の筋肉に血液が届かなくなる病気です。
番組では、「男性と女性で症状が違う」というポイントが、はっきり強調されていました。
男性では、教科書どおりの
・強い胸の痛み
・胸が締め付けられる感じ
・左腕や肩に広がる痛み
といった症状が典型的です。
ところが女性では、
・あごや首、背中、みぞおち周りの痛み
・吐き気
・めまい
・いつもと違う強い疲労感
など、「一見すると胃腸や肩こりのように見える症状」が出やすいことが紹介されました。
その結果、女性は「まさか心臓とは思わなかった」と受診を遅らせてしまうことが多く、心筋梗塞の死亡率は男性の約2倍に達するという全国調査の結果も紹介されました。
背景にあるのは、
・症状が分かりにくく、見逃されやすいこと
・「少し休めば治る」と我慢してしまうこと
・医療者側も、まだ男女差を十分に意識しきれていないケースがあること
などです。
番組では、
「胸ではなく背中やあごが痛い」
「原因の分からない吐き気やだるさが急に出て、嫌な感じが続く」
こうしたサインが出た時、「女性の心筋梗塞かもしれない」と疑って早めに救急を受診してほしい、と強く呼びかけていました。
性差医療の視点を持つだけで、「ただの疲れ」と片づけていた症状が、「命のサイン」に見え方を変える。
番組は、その危機感をとてもわかりやすい言葉で伝えていました。
薬の効き方と副作用の違い 女性が注意したいポイント
後半では、「薬の効き方」にも男女差があることが取り上げられました。
一般的に、女性は
・体格が小さい
・体脂肪率が高い
・腸の長さやホルモンバランスが違う
・腎臓から薬を排出するスピードが男性より遅い
といった特徴があり、このため同じ量の薬を飲んでも、血液中の薬の濃度が高くなりやすいとされています。
番組では、「女性の方が薬がよく効く一方で、副作用のリスクも大きい」という点がはっきり示されました。
実際、アメリカでは1990年代までに市場から撤退した薬の多くで、「女性のほうが有害な副作用が出やすかった」ことが報告され、世界的に性差医療の重要性が見直されています。
なぜそんなことが起きたのか。
番組では、過去の臨床試験のあり方が説明されました。
・妊娠への影響を恐れて、女性は試験から除外されてきた
・生理周期によるデータのばらつきを嫌い、男性だけで試験を進めてきた
・動物実験でもオスのマウスが中心に使われていた
その結果、「薬の安全性や効果はほとんど男性のデータから判断されている」という状況が長く続いてしまったのです。
今は、「女性も必ず臨床試験に含めるべき」という流れに変わってきていますが、その歴史的な遅れが、今も副作用リスクや添付文書の情報不足につながっています。
視聴者に向けて番組は、
・「同じ薬でも、人より効きすぎる」感じがあるなら医師・薬剤師に必ず相談すること
・サプリや市販薬を自己判断で重ねて飲まないこと
・女性だからこそ、薬の量や飲み合わせに敏感になってほしいこと
を強く勧めていました。
山浦克典教授の調査と、日本で進み始めた性差医療のこれから
番組のクライマックスで紹介されたのが、山浦克典教授の調査結果です。
慶應義塾大学薬学部の山浦克典教授は、日本で使われている医療用医薬品の添付文書を調べ、「男女差についての情報がきちんと書かれている薬は、わずか4.5%しかなかった」と報告しています。
ここでいう添付文書とは、病院や薬局で使われる「薬の説明書」のこと。
本来なら、
・男性と女性で効き方が違うのか
・女性で副作用が出やすいのか
・妊娠や授乳との関係はどうか
といった情報が書かれていてほしい部分です。
しかし現状では、ほとんどの薬で「性別による違い」が十分に整理されておらず、医療者も患者も、「男女で違うのかどうか」を判断しづらい状況に置かれていると、番組は問題提起していました。
一方で、希望の光も紹介されました。
国の研究費を配分する日本医療研究開発機構(AMED)は、医療研究の公募要領の中で、「性差を考慮した研究開発」を新たな必須項目として盛り込み始めています。
これは、
「これから行われる研究では、最初から男女の違いを意識してデザインしてください」
という強いメッセージです。
番組では、
・性差医療を専門に診る女性専門外来
・性差医療に詳しい「性差医学・医療認定医」
といった取り組みも簡単に触れつつ、研究と臨床の両方で変化が始まっていることを伝えていました。
そして最後に強調されたのは、「患者側の姿勢」でした。
・診察のとき、「女性はこういう症状が出やすいと聞いた」と伝えてみる
・「この薬、女性にはどんな副作用が出やすいですか?」と質問してみる
・自分の体験を医師にきちんと話し、女性ならでは・男性ならではの感覚を共有する
こうした一つひとつの声が、性差医療を前に進める力になる、と番組は結んでいます。
男女どちらにとっても、「自分の性の特徴を知ること」は、将来の健康を守るための大きな武器です。
今日取り上げられた性差医療をきっかけに、家族や友人と、そしてかかりつけ医と、「男性と女性で病気はどう違うのか?」をぜひ話し合ってみてください。
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