如月の山寺に春の気配が満ちていく
このページではやまと尼寺 四季ごよみ「如月(きさらぎ) 立春・雨水」(2月8日放送)の内容を分かりやすくまとめています。
冬の名残が色濃く残る音羽山に、静かに春の気配がしのび寄ります。音羽山観音寺の台所では、鏡餅をつき直す可愛らしいねこ餅が並び、湯気の向こうに新しい季節の光が揺れます。
やがて雪解けを告げる雨水が訪れ、里の人々を招いた桃の節句のお茶会が山寺をやさしく包み込みます。自然と暮らしが寄り添う瞬間が、胸に温かく流れ込むようです。
番組と舞台となる音羽山観音寺とは
やまと尼寺 四季ごよみの舞台になっているのは、奈良県桜井市の山あいにたたずむ音羽山観音寺です。標高およそ600メートルの音羽山中腹に建つ小さなお寺で、融通念仏宗に属し、新西国三十三所霊場の第17番札所としても知られています。
本尊は木造千手千眼十一面観音菩薩立像で、古くから「音羽の観音さま」と呼ばれ、人々の信仰を集めてきました。境内の奥からは奈良盆地、その向こうに二上山や大阪平野まで見渡せる絶景が広がり、山上の寺とは思えないほど開放感のある眺めが広がります。
やまと尼寺 精進日記は、この山寺で暮らす尼さんたちの日常の台所仕事や、里人との交流を丁寧に追いかけてきた人気シリーズです。その世界観を、二十四節気ごとの小さな物語として切り取るのがやまと尼寺 四季ごよみ。今回の「如月 立春・雨水」では、冬から春へと季節が切り替わる2月の音羽山の暮らしが、ぎゅっと詰め込まれています。
如月・立春の台所から生まれるカラフルな「ねこ餅」
如月前半のテーマは、「一年の始まりをもう一度味わう立春の台所」です。暦の上では春を告げる立春ですが、音羽山ではまだ空気が冷たく、吐く息も白くなるような厳しい寒さが残ります。それでも山の人たちは、「今日からは春です」と言い切ることで気持ちを切り替え、新しい季節の支度を始めます。
この回で主役になるのが、お正月に供えた鏡餅の残りをつき直して作るカラフルなねこ餅です。番組では、かたくなった鏡餅を丁寧に戻し、細かく刻んだ具材を混ぜ込んで、色とりどりの一口餅に仕立て直していきます。ガス台の上には蒸気が立ちのぼり、杵と臼、あるいは餅つき機のリズムが台所に響きます。
色合いのポイントは、白い餅生地に映える具材たち。山里ならではの野菜や豆類、時には乾物など、家にあるものを上手に組み合わせて、小さなころんとした丸餅に仕上げていきます。何度もつき直すうちに、台所には甘い米の香りと、具材の香ばしさが混ざり合った独特の香りが広がります。
「ねこ餅」という名前には、このお寺らしいユーモアも感じられます。小さくちぎって丸めた姿を猫の手に見立てているとも言われ、忙しい台所仕事の合間にも、思わず笑顔になってしまうような可愛らしさがあります。カラフルなねこ餅が並ぶ盆は、冬の名残が濃い台所に、ふっと春の光を差し込ませてくれる存在なのです。
「ねこ餅」に宿る冬越しと精進料理の知恵
ねこ餅は、単なるおやつではなく、山里の暮らしが生み出した合理的で優しい知恵の集大成です。お正月の鏡餅は本来、年神様に捧げるとても大切な供物で、食べ切ることが供養にもつながるとされてきました。かたくなった餅をそのまま捨てることなく、細かく刻んでつき直すことで、別のおいしい料理としてよみがえらせる発想は、まさに日本の精進料理そのものです。
冬の終わりは、保存食のストックも少しずつ心もとない時期です。山の暮らしでは、豆、海藻、根菜、乾物などを組み合わせて栄養バランスを整えてきました。ねこ餅にいろいろな具材を混ぜ込むことで、主食である餅にたんぱく質やビタミン、ミネラルを補い、まだ寒さの厳しい季節を乗り切る力を与えてくれます。
また、「つき直す」という手間も大切な要素です。一度かたくなった鏡餅を、時間をかけて蒸し直し、もう一度ついて丸める作業は、単なる調理以上に、新しい年への願いを込める儀式的な意味を持ちます。台所で餅をこねる手の動きに合わせて、「今年も一年、無事に過ごせますように」と、自然と祈りの言葉が心の中に浮かんできます。
この回では、音羽山観音寺の台所で、尼さんたちが笑い合いながら手を動かし、出来上がったねこ餅をみんなで味わう様子が描かれます。カラフルな丸餅を頬張る表情からは、寒さ厳しい山の冬を乗り越えた安堵感と、これから始まる春への期待がはっきりと伝わってきます。
雨水と桃の節句のお茶会 山里に春を呼ぶひととき
如月後半のテーマは、二十四節気の一つである**雨水(うすい)**です。雨水は、降るものが雪から雨に変わり、山に積もった雪や氷がゆっくりと解け始める時期を指します。昔から、この頃に雪解け水が田畑を潤し、農作業の準備を始める目安とされてきました。
この回では、雨水の頃に桃の節句のお茶会が開かれます。山上の寺に、里の人たちを招き、ひな祭りにちなんだ料理やお菓子を囲んで、一緒に春の訪れを喜ぶひとときです。雨水の頃に雛人形を飾ると、良縁に恵まれるという言い伝えもあり、この時期はもともと桃の節句と縁の深い節気とされています。
お茶会の席には、山で採れた野菜を使った精進料理や、ひな祭りをイメージした彩りのきれいな一品が並びます。ほんのりとピンクをまとった菱形のお餅や、春野菜のお浸し、優しい甘さの煮ものなど、どれも派手すぎないのに、確かな季節感が感じられる料理ばかりです。
お堂の外では、まだ冬の冷気が残っているものの、日差しの中には柔らかなぬくもりが混じり始めます。遠くの山肌からは、雪解け水が小さな音を立てて流れ出し、奈良盆地の向こう側までかすんで見える景色が、確かに「春への入口」に差しかかっていることを教えてくれます。
お茶会で交わされる会話は、ごく日常的なものです。「今年は雪が多かった」「畑の準備はもう始めたか」そんな何気ない言葉の中に、山里で暮らす人たちが自然とともに季節を読み、食卓を整え、互いの無事を確かめ合ってきた歴史がにじんでいます。
二十四節気で味わうやまと尼寺の早春の暮らし
やまと尼寺 四季ごよみ「如月 立春・雨水」は、派手な出来事が起こる番組ではありません。けれど、二十四節気の立春と雨水という区切りを通して、山寺と里の人々がどのように季節を感じ取り、暮らしに取り入れているのかが、驚くほど豊かに伝わってきます。
厳しい寒さが残る中で、鏡餅をつき直してねこ餅を作り、残り少ない保存食を工夫して春を待つ前半。雪解け水が流れ出す雨水の頃に、桃の節句のお茶会で里人を招き、ひな祭りを先取りする後半。どちらの場面にも共通しているのは、「季節の境目をちゃんと祝う」という姿勢です。
山の暮らしは、気候の変化に大きく左右されます。だからこそ、暦の上の「今日から春です」「今日からは雪が雨に変わる頃です」といった言葉を、単なるカレンダーの数字ではなく、台所や畑の仕事、近所づきあいのリズムとして受け止めてきました。音羽山観音寺を取り巻く山と里の風景は、その姿勢を今も色濃く残しています。
この回を通して見えてくるのは、「特別なことは何もしていないのに、季節を祝う暮らしはこんなにも豊かになる」という事実です。鏡餅を無駄なく使い切るねこ餅、雪解けの頃に開く桃の節句のお茶会。どれも、少しの手間と心づかいで、私たちの毎日にも取り入れられる工夫ばかりです。
やまと尼寺 四季ごよみは、山の上のお寺の話でありながら、見る人それぞれの台所や食卓に、小さな「春の始まり」を運んでくれる番組だと言えます。「如月 立春・雨水」の回は、その中でも特に、冬から春への橋渡しを感じさせる、印象的なひとコマになっています。
まとめ
やまと尼寺 四季ごよみ「如月 立春・雨水」は、冬の名残が濃い2月に、音羽山観音寺の台所と山里の行事を通して、春の入り口を感じさせてくれる回です。鏡餅をつき直すねこ餅づくりや、雪解けの兆しとともに開かれる桃の節句のお茶会など、季節の移ろいを丁寧に描いています。暮らしの知恵や精進料理の工夫がそこかしこに光り、日々の生活の中に季節を迎える心くばりが息づいています。
※内容は放送と一部異なる場合があります。
【やまと尼寺 四季ごよみ】睦月(むつき)小寒・大寒 七草がゆと寒こうじ 音羽山観音寺の冬仕事|2026年1月2日
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