春、北イタリアの森で揺れ動く家族の物語
森の息吹が満ちる季節、北イタリア・ボローニャ郊外の静かな森で暮らす小林千鶴さん一家に、新しい春が訪れます。大自然に抱かれた森の家で、畑や動物とともに営まれる日常。その中で、思春期を迎えた娘との距離に揺れる母のまなざしが、温かく力強く映し出されます。
このページでは『チャオ!森の家のおくりもの 春(2026年2月2日)』の内容を分かりやすくまとめています。
森の家と北イタリア・ボローニャの舞台設定
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番組の舞台は、北イタリア・エミリア=ロマーニャ州の都市ボローニャから少し離れた森の中にある、築200年以上の石造りの家です。現地では家族が暮らすこの住まいを森の家と呼び、広い庭と森がそのまま生活の一部になっています。
重厚な石壁の家のまわりには、ブドウ畑やオリーブ畑の広がるボローニャ郊外らしい景色が広がり、朝は鳥のさえずり、昼は風に揺れる木々の音、夜は満天の星空に包まれます。家の敷地内にはロバやニワトリ、犬や猫が自由に行き来し、まさに“大きな森の中の小さな村”のような空間になっています。
都会のアパートとは対照的に、ここでは季節の変化がダイレクトに暮らしに影響します。冬の寒さを耐えた石の家に、春の光が差し込み始めると、庭や森の表情が一気に色づき、番組はその“春の立ち上がり”から家族の日々を追いかけていきます。
ワイヤーアーティスト小林千鶴が選んだ森の暮らし
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この森の家で暮らすのが、ワイヤーアーティストの小林千鶴さん。武蔵野美術大学で金属工芸を学んだのちイタリアへ渡り、現在はボローニャを拠点にレストランやホテル、ブティックの装飾、個人宅のオブジェなど、オーダーメイドのワイヤーアートを数多く手がけています。
ボローニャ旧市街のアパート暮らしから一歩踏み出し、2014年に郊外の森にある古い石造りの家を購入。長い年月で傷んだ建物を、家族や仲間と少しずつ手を入れながら再生してきました。石壁の補修、窓枠の交換、アトリエスペースづくりなど、“つくる人”らしい視点で家そのものを作品のように育てているのが番組から伝わります。
小林さんは、オンラインメディアmadameFIGARO.jpで「ボローニャ「森の家」暮らし」という連載も持っており、そこで綴られてきた四季折々の日常が、この番組では映像として立ち上がってきます。森での暮らしは、単なる田舎移住ではなく、作品づくりと家族の時間が溶け合った“生き方そのもの”として描かれます。
畑・動物・ミツバチとともに過ごす春の日常
番組の大きな柱となるのが、春の森の家のルーティンです。家の周りには、野菜畑とハーブガーデンが広がり、春になるとレタスやほうれん草、ソラマメ、ローズマリーやタイム、セージなどのハーブが一斉に芽吹きます。家族は朝の光の中で土の様子を確かめ、小さな芽の成長に一喜一憂しながら畑仕事を進めていきます。
庭では、放し飼いのロバやニワトリが当たり前のように暮らしています。ニワトリが産んだ卵はその日の朝食のオムレツに、ロバは草を食みながら子どもたちの良き遊び相手にもなります。動物たちとの距離が近いからこそ、命を預かる責任と、日々の癒やしの両方を子どもたちが自然に学んでいきます。
春になると、庭にはミツバチの巣箱も置かれます。森に咲く野の花やハーブの花を求めて飛び回るミツバチの姿は、森の家の春の象徴です。番組では、花々を摘んでパスタ生地に練り込み、“森の恵みの生パスタ”をつくるシーンも印象的に映し出されます。視覚的にも美しいこのシーンは、自然と食卓と創作が一体になった暮らし方を象徴する場面として描かれます。
こうした日常の積み重ねが、そのまま小林さんのワイヤーアートのインスピレーション源になります。宙に浮かぶ気球のモチーフや、食卓の野菜をかたどったオブジェなど、森の色や形が作品に変わっていくプロセスが、静かなカメラワークで丁寧に追われます。
思春期の長女と向き合う母のまなざし
春の森の家で、もう一つ大きな変化を迎えているのが、3人娘の一番上、長女の心の成長です。大自然に囲まれて伸びやかに育ってきた長女は、いままさに思春期のまっただ中。自分の時間を大切にしたい気持ちと、家族と一緒に過ごす安心感のあいだで揺れ動きます。
番組では、そんな長女の変化を前にした母・小林千鶴さんの迷いや戸惑いが、率直に映し出されます。いつものように一緒に畑に出ようと誘っても応じない日があったり、森の散歩よりもオンラインのつながりを優先したくなる瞬間があったり。親としては寂しさを覚えながらも、「それも成長の一部」と受け止めようとする小林さんの姿が印象的です。
同時に、小林さん自身も作品づくりや仕事に向き合う一人の女性です。思春期の娘との距離感に悩みながらも、自分の制作時間を手放さず、時にはぶつかり、時には歩み寄りながら“母であること”と“表現者であること”のバランスを探っていきます。その葛藤が、番組のドラマ性を強く浮かび上がらせます。
三姉妹それぞれの成長と家族の支え合い
番組が描くのは長女だけではありません。3人の娘たちは、それぞれ違うステージの成長を迎えています。次女には自我が芽生え始め、姉とは違う自分の世界を持とうとし始めます。三女はまだ幼く、庭や森を全身で楽しむ無邪気さを残しています。
畑仕事を手伝う子、動物と遊び続ける子、家の中で本を読みふける子。3人それぞれのスタイルを、両親はできるだけ尊重しようとします。ときには姉妹同士が言い合いになりながらも、食卓に集まると、その日の出来事を共有し合う空気が自然に生まれます。森の家の広いリビングと大きなテーブルが、家族の関係をつなぐ重要な場所として機能しているのが伝わってきます。
父であるイタリア人の夫も、家事や子育てに積極的に関わります。薪を運び、家の補修をしながら、娘たちの話に耳を傾ける姿が繰り返し映され、国や文化の違いを超えて“チームとしての家族”が成り立っていることが強く印象づけられます。
こうして、3人の娘たちがそれぞれのペースで大人への階段を上っていく過程が、春という季節の光と影とともに描かれます。番組は、子どもたちの微妙な心の変化を、過剰な演出をせず、静かな観察者として切り取っていきます。
森の家が教えてくれる“これからの生き方”
ドキュメンタリー「チャオ!森の家のおくりもの 春」が伝える一番のメッセージは、“どう暮らすかが、そのまま家族の形をつくる”ということです。都市部から離れたボローニャ郊外の森で、家族はエネルギーも食べ物も、できる限り自分たちの手でまかなうことを選びました。その結果、季節や天候、動物たちの状態がダイレクトに生活に影響し、毎日が少し大変で、でも驚くほど豊かに見えてきます。
一方で、森での暮らしだからといって、すべてが穏やかというわけではありません。思春期の揺らぎ、仕事と子育ての両立、将来への不安など、現代の家族が抱えるテーマはそのままここにも存在します。それでも小林千鶴さん一家は、森のリズムに身を委ねながら、一つひとつの出来事と真正面から向き合っていきます。
ナレーションを務める俳優井之脇海さんの落ち着いた声が、映像に寄り添いながら、視聴者の感情をそっと導きます。番組を見終えたとき、視聴者はきっと、自分の暮らしや家族との時間をもう一度見つめ直したくなるはずです。
北イタリアの森の中に建つ一軒の森の家。そこで紡がれる、ワイヤーアートと家族の物語は、“どこで、どう生きたいか”を静かに問いかけてくる強い一本の軸を持った作品として描かれています。
まとめ
番組では、北イタリアの穏やかな森で暮らす小林千鶴さん一家の、季節とともに変わる日常が丁寧に描かれます。思春期を迎えた娘との向き合い方や、森の家で育まれる家族の絆が、自然の光景と重なりながら静かに心に残ります。実際の放送内容と異なる場合があります。
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