秋色に染まる古民家村とepisode.27の舞台
番組の舞台になっているのは、新潟県十日町市の山あいにある竹所集落です。ここは、ドイツ出身の建築デザイナー カール・ベンクス が、次々と古民家を再生してきたことで「奇跡の集落」とも呼ばれる場所です。
竹所は豪雪地帯で、冬には2メートルを超える雪が積もることもあります。それでもカールさんは、この厳しさも含めて「世界一美しい村」と語り、古民家を直しながら移住者を迎えてきました。
今回のepisode.27は、そんな集落が紅葉に包まれる秋が舞台です。色づいた山々の中に、黒い瓦屋根と木の外壁を持つ古民家がぽつりぽつりと並びます。昔ながらの日本の山里でありながら、どこかヨーロッパの田舎のようにも見える独特の風景です。
秋の空気と「古民家村」の暮らし
秋の竹所は、空気がきゅっと冷たくなり、朝晩の気温差も大きくなります。そのぶん、囲炉裏や薪ストーブの火がいっそうありがたく感じられます。
番組では、そんな空気の中で暮らす人たちの一日が、ゆっくりとしたテンポで映し出されます。田んぼの稲刈りを終えた後の静けさ、畑に残る秋野菜、山に入ってムカゴやキノコを探す人たち。どの場面にも、「ここで暮らしているからこそ見える秋」があります。
ティーナさん流・タラのフリカッセであったか夕ごはん
フリカッセってどんな料理?
この回でいちばんおいしそうなシーンが、ティーナさんが作る タラのフリカッセ です。
フリカッセは、フランスで親しまれてきた白いクリーム煮のような料理で、肉や魚をバターで軽く焼いてから、白ワインやスープ、生クリームや牛乳で煮込むのが基本の形です。煮込みの途中で、タマネギやキノコ、じゃがいもなどの野菜を一緒に加えることも多く、やさしい味わいが特徴です。
番組では、ふだんなら鶏肉を使うところを、秋らしくタラに変えて作ると紹介されています。タラは脂がほどよく、白身で崩れやすい魚ですが、バターや牛乳との相性がとてもよいことで知られています。
ティーナさん流・あっさり仕上げのコツ
ティーナさんのフリカッセは、クリーム煮でありながら「あっさり」しているのがポイントです。生クリームを控えめにして牛乳を多めにしたり、タラの脂だけでコクを出したりと、重くなりすぎない工夫が感じられます。
タラは下ごしらえで軽く塩をふり、水分と一緒に臭みを抜くことで、仕上がりがぐっと上品になります。実際のフリカッセのレシピでも、タラの皮を取り、塩をしてから水分をふき取る下処理が大事だとされています。
鍋の中では、タラの切り身が白くふっくらとした身に変わり、とろりとしたソースがからんでいきます。窓の外には赤や黄色に色づいた木々。そんな風景を背景に、湯気の立つフリカッセがテーブルに並ぶと、それだけで「秋のごちそう」という感じがします。
ムカゴと山のキノコを楽しむ村の秋の食卓
ムカゴって何?山里ならではの小さな主役
番組に登場する移住者たちは、散歩の途中でムカゴを摘んでいます。ムカゴはヤマイモのつるにできる、小さな球状の芽のような部分で、皮つきのまま炊き込みご飯にしたり、素揚げや塩ゆでにして食べられます。
ムカゴご飯は、米と一緒に炊き込むだけで、ほくほくした食感とほのかな山の香りが楽しめる、秋の定番料理です。家庭料理のレシピでは、米2合に対してカップ1杯ほどのムカゴを使うと、バランスよく仕上がるとされています。
番組の中でも、移住してきた住民が、散歩で見つけたムカゴを大事そうに持ち帰り、炊き込みご飯に仕立てていました。派手さはないけれど、「この土地に住んでいるからこそ味わえる秋」が、その一杯のご飯にぎゅっと詰まっています。
山のキノコは慎重に、でも最高のごちそう
山に入れば、もう一つの主役がキノコです。番組では詳しい種類までは語られていませんが、日本の山里では、ナメコ、シメジ、ナラタケ、マイタケなど、さまざまなキノコが地元の人たちの知恵によって見分けられ、食卓にのぼります。
キノコは種類によって香りや食感が大きく違います。炊き込みご飯、味噌汁、炒め物、バターソテー……どんな料理にしても、秋の湿った山の空気を思わせる風味が広がります。
一方で、山のキノコは毒を持つ種類も多く、素人判断は危険です。実際に山菜やキノコ採りの情報では、必ず「地元で経験豊かな人と一緒に行くこと」が勧められています。番組でも、山の恵みを楽しみながらも、長く住む人たちの知恵や注意があることが暗黙の前提になっています。
カールさんが通うお寺の境内と、心を整える時間
通勤途中に立ち寄る「より道」の場所
episode.27では、カールさんが通勤途中にしばしば立ち寄るお寺の境内の様子が描かれます。
境内には、大きく枝を広げたケヤキの木が立ち、足もとには苔むしたお地蔵さまが並んでいます。そこは派手な観光地ではなく、村の人にとってはごく身近な祈りの場所。
カールさんは、その木々や石の表情に心を落ち着かせ、仕事に向かう前の気持ちを整えていると語ります。
ドイツ人建築デザイナーが感じる日本の寺の魅力
竹所の古民家を数多く手がけてきた カール・ベンクス は、日本の建物だけでなく、日本の宗教的な空間の雰囲気にも強く惹かれてきたとされています。
木造の本堂、石段、苔むした石仏、そして山の空気。そうした要素は、古民家と同じように「時間の重なり」を感じさせる存在です。
お寺の境内でふと立ち止まり、ケヤキの木を見上げるカールさんの姿からは、建物を直すだけでなく、土地そのものの歴史や気配を大切にしていることが伝わってきます。
集落に残る最後の古民家と、亡き古老から託された思い
元は小学校だった建物との出会い
今回のepisode.27で大きなテーマになるのが、「集落に残る最後の古民家」です。
この建物は、もともと小学校の校舎として使われていたものを移築し、住居として活用してきた家だと紹介されています。今は亡くなった古老が守ってきた家で、その方からカールさんに「頼むよ」と託された大切な建物です。
木の廊下や高い天井、大きな窓など、学校だったころの面影が残る空間には、たくさんの子どもたちの笑い声や、村の歴史が詰まっています。
「最後の一軒」をどう生かすかという問い
集落から古民家が姿を消していく中で、最後に残った一軒をどう守り、どう未来につないでいくか。これは竹所だけでなく、日本中の地方が抱えている大きなテーマでもあります。
空き家が増え、取り壊されていく中で、単に「壊すか残すか」ではなく、誰かが暮らし続けられる形に変えていくこと。カールさんは、この家を通して、その答えを探ろうとしています。
古老から託された「思い出の家」を、生きた家としてよみがえらせること。その挑戦が、episode.27の大きな軸になっています。
棟梁と進める「脚にやさしい」古民家再生の工夫
ティーナさんの脚の状態を考えたプランづくり
カールさんがこの古民家を再生しようと決めた理由には、妻の ティーナさん の存在があります。ティーナさんは脚を悪くしており、段差の多い古民家での暮らしは、これまで以上に負担が大きくなっています。
そこでカールさんは、「昔ながらの趣を残しながら、暮らしやすさを高める」ことを目標に、棟梁と相談を重ねていきます。
棟梁と話し合う、具体的な改善ポイント
番組の中では、棟梁と図面を前に話し合うシーンが描かれます。
たとえば、こんなポイントが考えられます。
・玄関や廊下の段差をできるだけ減らす
・よく使う場所(台所・トイレ・寝室)を近くにまとめる
・手すりを設けて移動を楽にする
・冬の寒さを和らげるための断熱や二重窓
日本各地の古民家再生でも、高齢の家主の暮らしを支えるために、同じような工夫が多く取り入れられています。段差の解消や動線の改善は、介護や医療の現場でも「転倒を防ぎ、体力を温存する」ために大切なポイントだとされています。
カールさんは、ただおしゃれなリノベーションを目指しているのではありません。長く暮らしてきた人が、これからも安心して暮らせるように、家の形を変えていこうとしているのです。
ドイツ人建築デザイナー・カールさんが見つけた日本の山里の価値
古民家を通して「村全体」をデザインする
ドイツ生まれのカールさんは、東京やヨーロッパの都会で仕事をしたあと、この竹所に拠点を移しました。ここで彼は、60軒以上の古民家を再生し、新しい住民を呼び込んできたと紹介されています。
カールさんの考え方は、「家だけをきれいにする」のではなく、「村全体を美しくデザインする」ことです。休耕田にミズバショウを植えたり、牛小屋の外壁を直したりと、周りの風景も含めて一つの作品として整えてきました。
episode.27が伝える、これからの地方のヒント
episode.27で描かれるのは、派手な成功物語ではありません。
秋の山里で、タラのフリカッセやムカゴご飯を作り、近くの山でキノコを採り、お寺に手を合わせる。そんな、ごくふつうの一日です。
しかし、その一日一日の積み重ねの中に、「集落に残る最後の古民家をどう生かすか」という、大きな問いが含まれています。
・高齢の夫婦が、どんな工夫で暮らしを続けていくのか
・移住してきた人たちが、どうやって土地の恵みを自分の暮らしに取り入れていくのか
・古い建物を、次の世代につなげるために何ができるのか
古民家、田舎暮らし、移住といったテーマに関心がある人にとって、この回は具体的なヒントと、静かな勇気を与えてくれる内容になっています。
紅葉に染まった竹所の風景の中で、ゆっくり進んでいく家づくりの物語。episode.27は、その途中経過をじっくり見せてくれる、秋らしい一編です。
本記事は番組の事前情報をもとに内容や見どころを整理したものであり、実際の放送内容と異なる場合があります。
Eテレ【チャオ!森の家のおくりもの 春】ボローニャの森で描く家族の物語と再生する古民家の日々|2026年2月2日
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