石川・金沢市が舞台の「ひむバス!」300年の伝統・はしご登りに密着
人気ドキュメントバラエティー番組の ひむバス! が向かったのは、石川県の中心都市 金沢市 です。
今回のテーマは、金沢で約300年受け継がれてきた はしご登り。新春恒例の 出初式(でぞめしき) でこの伝統技に挑む消防団員を、日村勇紀さんが全力でお手伝いします。
舞台は、金沢城のすぐそばに広がる 金沢城公園。
ここに市内の消防団が集まり、高さ6メートルのはしごを立て、観客の前で勇ましい妙技を披露します。金沢の正月の顔ともいえる行事に、バラエティ番組がぐっと踏み込んでいく回です。
ひむバスが向かった石川・金沢市の今回の舞台
今回のひむバスが走ったのは、北陸新幹線の開通でますます注目を集める城下町・金沢市です。金沢市
兼六園や金沢城公園のある中心部から少し離れたエリアまで、バスはゆっくりと走りながら、雪をいただいた山と日本海からの冷たい風がまじり合う冬の空気を映し出します。
運転席に座るのは、人気お笑いコンビ・バナナマン日村勇紀。バナナマン日村勇紀
隣にはアナウンサーの是永千恵が座り、金沢のまちを舞台にした今回の“送迎物語”が静かに始まります。
金沢は、江戸時代に加賀藩の城下町として栄え、今も伝統工芸や祭りなど、歴史と暮らしが近い距離で息づく街です。とくに冬の金沢は、雪・曇り・晴れがめまぐるしく変わり、消防にとっても厳しい季節。そんな土地で守りを担う人たちの素顔に、ひむバスが迫ります。
出初式前日に出会った消防団員の依頼
最初の停留所で待っていたのは、地元の消防団員・舟田さんと加藤さん。
ふたりは作業着姿で、どこか引き締まった表情をしています。
翌日は、金沢の消防関係者にとって一年で最も大事な行事のひとつ・出初式。
そこで披露される「はしご登り」に向けて、最後の練習に行きたいので送迎してほしい、とひむバスに依頼します。
出初式は、江戸時代に始まったと言われる新春の消防行事で、消防隊員の士気を高め、防火への意識を市民と共有する役割があります。現在の金沢市消防出初式には、市内の多くの消防団が参加し、ポンプ車の行進や一斉放水などが行われています。
今回、ひむバスが関わるのは、その中でも特に注目される「はしご登り」。
ふたりの真剣さに引き込まれるように、日村さんと是永さんも緊張した面持ちでハンドルを握ります。
金沢に受け継がれる300年の伝統「はしご登り」とは
到着したのは、金沢市第三消防団・鞍月分団の拠点。
ここで行われているのが、金沢の冬を象徴する伝統芸・はしご登りの練習です。金沢市第三消防団 鞍月分団
はしご登りは、江戸時代の火消たちが火災現場で高いはしごに登り、火の勢いや風向きを確かめたことが始まりとされています。高所での作業に慣れる訓練でもあり、住民に「自分たちが街を守っている」という姿を見せる意味も込められていました。
なかでも金沢の「加賀鳶はしご登り」は、日本のはしご登りの元祖とされ、300年以上受け継がれてきた歴史があります。現在は石川県の無形民俗文化財にも指定されており、出初式や金沢百万石まつりなどの行事で披露されています。
番組では、江戸時代の火消を描いた浮世絵「加賀鳶の圖」や、東京の八代洲町で行われた出初風景を描く「警視庁火消出初階子乗之図」などの資料も紹介。昔からはしごの上で技を決める姿は、人々にとって“勇気の象徴”だったことが伝わってきます。
鞍月分団で行われた厳しい練習と27の技
練習場に立てられた竹のはしごは、高さおよそ6メートル。
真下で見ると、テレビ越しでも思わず息をのむ高さです。
このはしごを支えているのは、10人の団員たち。
足場をしっかり押さえ、わずかな揺れも逃さないように体重をかけて支えます。
その上をひとりで登っていくのが、今回の主役・加藤さん。
金沢のはしご登りには、全部で27種類の技があり、逆立ちのように体を反らせるものや、片足だけでバランスを取るものなど、どれも落ちれば命に関わるような高度な動きばかりです。
日村さんと是永さんも、実際にはしごに上ってポーズの一部に挑戦。
腰に専用の縄を巻いていても、真下をのぞき込めば足がすくむ高さで、「これを本番で全部やるのか」と、スタジオでは伝わらない緊張感が画面からも伝わってきます。
背景の補足として、金沢市の消防団には市内各地区ごとに分団があり、その多くが仕事を持ちながら活動する「兼業消防団員」です。平日は会社員・公務員・農業など、それぞれの仕事を持ちつつ、有事には命をかけて街を守ります。
そうした“ふつうの暮らし”と“非常時の顔”が、はしご登りの練習場で一気に切り替わる様子が印象的です。
農協で働きながら消防団員として生きる加藤さん
加藤さんは、普段は地元の**農業協同組合(農協)**で働きながら、夜間や週末には消防団の一員として活動しています。
今回、各地域の消防団から選ばれる「登り手」に、初めて抜擢されました。
つまり、金沢中の消防団員の中から「はしごの上に立つ代表」に選ばれた存在です。
その責任の重さを受け止めた加藤さんは、約4か月間かけて体を作り直しました。
体重は67キロから59キロへ。
高い場所で技を決めるためには、無駄な重さを落とし、体幹を鍛え直す必要があったからです。
農協の仕事は、農家との打ち合わせや書類仕事、時には重い荷物を運ぶこともあり、決して楽ではありません。
それでも仕事を終えた夜に練習に向かい、休日も消防団の訓練に費やす日々。
番組は、その生活の一部を丁寧に映し出し、「地域の安全は、誰かの日常の犠牲の上に成り立っている」という現実を静かに伝えます。
こうした兼業消防団員の存在は、全国どの地域でも防災の要となっており、高齢化や人口減少が進む中で団員確保が大きな課題になっています。金沢も例外ではなく、その意味で加藤さんの挑戦は、街全体にとっても希望の象徴といえます。
体育館での本番さながらのリハーサル
練習は屋外だけでは終わりません。
本番直前には、体育館に会場を移して、出初式と同じ流れでのリハーサルが行われます。
体育館の床に立てられた6メートルのはしご。
天井近くまで伸びた竹の先端で、加藤さんは次々に技を繰り出します。
体を真横に倒す技、片足だけで立つ技、腕だけで体を支える技。
27種類すべてをこなす様子は、まるでサーカスのような迫力ですが、ここにあるのは「見せ物」ではなく、「街を守る者の誇り」です。
支える団員たちも、一切の妥協を許しません。
視線は常に加藤さんの足元と、はしごの揺れ。
誰かの力が少しでも抜ければ、はしごは大きくしなってしまいます。
体育館で行うのは、天候に左右されない環境で最終確認をするためでもあります。
冬の金沢は風が強く、雪や雨も多いため、本番で何が起こるか分かりません。
だからこそ「どんな状況でも技ができる準備」を整えておくことが、消防団員としての最低条件なのです。
出初式当日の朝 金沢城公園へ向かうひむバス
本番当日の朝、まだ外が薄暗い時間に消防団員たちは集合します。
時計の針が午前6時30分を指すころ、すでに姿勢はしゃんと伸び、表情は引き締まっています。
まず行われるのは、はしごの安全祈願。
竹一本一本に、これまでの練習と、これからの本番に向けた思いが込められています。
その後、ひむバスを含む車列は、出初式の会場である金沢城公園へと向かいます。金沢城公園
金沢城公園は、かつて加賀藩主・前田家の居城があった場所で、現在は石垣や門、長屋などが整備された市民の憩いの場です。出初式は、その一角・新丸広場で行われるのが通例で、冬の金沢の風物詩として知られています。
ところが、この日は厄介な強風。
はしご登りにとって、風は最大の敵です。
到着した会場で、団員たちは空をにらみながら、何度も風の強さを確かめます。
53台のポンプ車が並ぶ車両分列行進
午前9時、出初式が始まります。
会場には市内各地から集まった消防団や消防職員が整列し、式典が粛々と進んでいきます。
続いて行われるのが、車両分列行進。
金沢市全消防団から集まったポンプ車など、53台の車両が次々と入場してきます。
赤い消防車が、金沢城の白い石垣と冬空を背景に列をなす光景は圧巻です。
一台一台が、ふだんの現場でどれだけの火災や災害と向き合ってきたのかを思うと、単なるパレードではなく、「これからの一年を守り抜く」という宣言のようにも感じられます。
こうした分列行進は、全国各地の出初式でも見られますが、金沢では城下町の景観と重なることで、どこか“歴史の延長線上にある今”を感じさせてくれます。
強風の中で下された「はしご登り中止」という決断
そして、いよいよ、はしご登りの出番――のはずでした。
しかし、この日の風は一向に弱まりません。
はしごを立てれば、大きくしなってしまうほどの強さ。
団員たちは何度も風を読み、はしごを持ち上げては下ろし、最終判断を迫られます。
最終的に下されたのは、「はしご登り中止」という決断でした。
4か月かけて体を作り、27種類の技を体に叩き込み、深夜まで練習を続けてきた加藤さん。
支えてきた鞍月分団の仲間たち。
その誰もが、心のどこかで「どうにかやらせてあげたい」と願っていたはずです。
それでも、命を守る立場にある消防団員として、「危険だ」と判断した以上、引き返す勇気を選びます。
番組はその瞬間を大げさに盛り上げることなく、静かに、しかししっかりと映し出していました。
実は、消防の世界では「無理をしない」という判断こそが最も重要とされます。
ヒーローのような活躍よりも、隊員自身が安全であることが、長く街を守り続けるための条件だからです。
一斉放水とともに迎えた出初式の締めくくり
はしご登りは中止になったものの、出初式の最後には恒例の一斉放水が行われます。
金沢城公園の広場から、何本もの水のアーチが冬空に向かって伸びていく様子は、まるで「この一年、街を守ります」という消防団の誓いが、視覚化されたようです。
水しぶき越しに見える金沢城の建物や木々。
その奥には、普段から市民の暮らしを背中で支えている人たちが大勢立っています。
はしごの上に立つことはできなかったけれど、準備してきた日々がムダになることはありません。
体を鍛え、技を磨き、仲間との呼吸をそろえた経験は、そのまま火災現場でも発揮される力になります。
番組は、派手な技こそ披露されなかったものの、「それでも、彼らは金沢を守るためにここに立っている」というメッセージを、たっぷりと時間をかけて伝えていました。
番組を通して見えた消防団の誇りと金沢のまちの思い
エンディングでひむバスが金沢の街並みを走り抜ける中、日村さんと是永さんは、消防団員たちの横顔を思い返します。
農協で働きながらも体を絞り込んだ加藤さん。
出初式の準備から後片づけまで黙々と動く鞍月分団の仲間たち。
そして、金沢という街全体が、300年以上続くはしご登りという文化を誇りに思いながら、現代の防災へとつなごうとしている姿。
番組では、観光ガイドにはなかなか載らない「金沢のもう一つの顔」が描かれていました。
それは、華やかな観光地の裏側で、静かに街を支える人たちの物語です。
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