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Eテレ【生きていく力を、君たちへ】大阪市の小中一貫校が取り組む生きる教育、子どもの権利からデートDV教育まで──自分を守る力の育て方|2026年3月1日

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大阪の小中一貫校「田島南小中一貫校」と『生きる』教育とは

番組「生きていく力を、君たちへ 子どもに託したい知恵 ある小中一貫校の『生きる』教育(2026年3月1日放送)」の舞台は、大阪市生野区にある公立の小中一貫校・田島南小中一貫校です。

ここでは、子どもたちが社会の中で直面しうるつらい出来事から自分を守り、まわりの人と支え合って生きる力を育てるための独自の教育が行われています。この取り組みは、もともと大阪市立生野南小学校で始まった「性・生教育」が土台になっていて、現在は小学校1年から中学3年まで、9年間を通したプログラムとして続いています。

授業のテーマは、「プライベートゾーン」「子どもの権利」「悩みを相談する力」「デートDV」「児童虐待」など、一見すると重く、子どもに話すのは躊躇してしまいそうな言葉ばかりです。けれども、この学校ではそうしたテーマこそ、子どもたちの日常の安全と未来の幸せに直結すると考え、年齢に合わせた形で少しずつ学びを積み上げています。

近年、日本でも「生命の安全教育」と呼ばれる取り組みが文部科学省のモデル事業として始まり、性暴力や虐待から子どもを守るカリキュラムの重要性が広く語られるようになりました。田島南小中一貫校の実践は、その先駆けとして注目されてきた背景があります。

番組は、この学校で行われている授業の様子を追いながら、「生きていく力」とは何か、そして大人は子どもに何を手渡せるのかを、静かに、しかし力強く問いかけていきます。

小学1年「プライベートゾーン」自分の体を守る授業

もっとも最初に出てくるキーワードが、小学1年生で学ぶプライベートゾーンです。

ここで子どもたちは、水着で隠れる部分など「人に見せたり、さわらせたりしてはいけない場所」が自分の体の中にあることを知ります。同時に、「いやだと思ったら、いやと言っていい」「自分の体は自分のものだ」という、当たり前だけれど、教えてもらわないと気づきにくい感覚を育てていきます。

授業では、先生がやさしい言葉で説明しながら、絵やイラストを使って体の部位を確認していきます。子どもたちは真剣な顔で話を聞き、「いやなことをされたら、信頼できる大人に伝えていい」というメッセージを受け取ります。

性被害の多くは、子どもが「これはおかしい」と気づきにくかったり、「言ってはいけないことだ」と思い込んでしまったりすることで長く見過ごされてしまいます。だからこそ、小さなうちから自分の体を大切にする感覚と、「いや」と言う権利があることを知ることは、将来の被害を減らすうえで重要だと考えられています。

小学3年「子どもの権利」条約から学ぶ“守られるべき自分”

小学3年生になると、学びのテーマは子どもの権利に広がります。

子どもの権利条約では、「命を守られること」「意見を聞いてもらうこと」「教育を受けること」など、子どもが持つさまざまな権利がうたわれています。授業では、難しい条約の文章をそのまま読むのではなく、「家でいつも怒鳴られてつらいとき、あなたにはどうする権利があると思う?」「学校でいやなことがあったら、だれに話してもいいだろう?」といった、日常に引き寄せた問いかけを通して学んでいきます。

ここで大切にされているのは、「困ったときに助けを求めるのはわがままではない」という感覚です。日本では、今もなお「がまんしてがんばる」ことが美徳として語られる場面が少なくありません。そのため、つらくても誰にも言えず、一人で抱え込んでしまう子どもも多いのが現実です。

田島南小中一貫校の『生きる』教育では、「助けを求める力」を受援力として前向きに捉え直し、友だちや先生、大人に気持ちを伝えることを練習していきます。

4〜6年生「悩みを相談する力」と「心の傷との向き合い方」

高学年になると、子どもたちは友だち関係や家庭の事情など、より複雑な悩みを抱えやすくなります。ここでテーマになるのが、悩みを相談する力心の傷との向き合い方です。

授業では、「だれにも話したくない」と感じる気持ちを否定せず、そのうえで「ちょっとだけ話してみる」「信頼できる人にだけ話す」といった段階的な相談の方法が紹介されます。また、「つらい体験をしたとき、人はどう感じるのか」「心の傷はどんな形であらわれるのか」といった、トラウマに関する基礎的な知識も、子ども向けの言葉で説明されます。

近年、心理学の分野では、トラウマへの理解を前提にした教育や支援を「トラウマ・インフォームド・エデュケーション」と呼び、世界的に広がりつつあります。田島南小中一貫校で行われている『生きる』教育も、こうした考え方を取り入れた実践として評価されています。

番組では、ただ知識を教えるだけでなく、グループで気持ちを共有したり、自分の過去を振り返って整理したりする活動を通して、子どもたちが少しずつ自分の心と向き合っていく様子が映し出されます。

中学生の学び① デートドメスティックバイオレンス(デートDV)を知る意味

中学生になると、学びのテーマはさらに一歩踏み込みます。そのひとつが**デートドメスティックバイオレンス(デートDV)**です。

デートDVとは、付き合っている相手からの暴力や支配のことです。殴る・蹴るといったわかりやすい暴力だけでなく、「スマートフォンを勝手に見られる」「友だちと話すなと言われる」「気に入らないと無視される」など、心をしめつけるような行為も含まれます。

授業では、具体的な場面を描いたプリントなどをもとに、「これは愛情なのか、支配なのか」「どこからが暴力と言えるのか」を一つひとつ考えていきます。子どもたちは、最初は「ちょっとくらい束縛は仕方ないのでは」と感じるかもしれません。しかし、話し合いを通して、「相手の自由や安全をうばう行為は、たとえ恋人であっても許されない」という視点を身につけていきます。

日本では、若い世代の中にもデートDVの被害は存在しますが、「恥ずかしい」「自分が悪い」と感じて相談できない人も少なくありません。中学生の段階から、暴力のサインに気づく目と、「おかしい」と言える力を育てることは、将来の被害を減らす大きな一歩になります。

中学生の学び② 児童虐待を“加害者の視点”から考える理由

番組の中でも特に印象的なのが、児童虐待を「加害者の視点」から捉え直す授業です。

ここで子どもたちは、「なぜ虐待する大人が生まれてしまうのか」という、重く、考えるのも苦しくなるような問いに向き合います。もちろん、虐待行為を正当化することが目的ではありません。むしろ、「虐待する大人もまた、過去に傷つけられた経験を持つことがある」「支援につながらなかった結果、問題がくり返されてしまうことがある」といった現実を知ることで、「暴力の連鎖をどこで断ち切れるのか」を考える授業です。

こうした学びを通して、子どもたちは「自分が親になったとき、どんなふうに子どもと向き合いたいか」を想像するようになります。家族について考える授業や、将来の仕事・生き方を考える時間ともつながり、長い目で見た生き方の選択を支える土台になっていきます。

児童虐待・性被害・ヤングケアラー…子どもたちを取り巻く現実

番組の冒頭では、児童虐待、性被害、ヤングケアラーなど、今の日本で子どもたちを取り巻いている厳しい現実が紹介されます。

ニュースでは、「虐待事件」「性犯罪」「家族の介護を担う子どもたち」といったショッキングな見出しが並びますが、その背景には、家庭の貧困、孤立、ジェンダー不平等など、さまざまな社会問題が絡み合っています。

ヤングケアラーとは、本来大人が担うべき家事や介護、きょうだいの世話などを、日常的に行っている子どものことです。親の病気や障害、経済的な事情などがきっかけで、本人の意思とは別に大きな負担を背負うケースもあります。

こうした現実を前にして、「子どもを守るのは家族の責任だけ」と考えるのは、もはや難しい時代になっています。だからこそ、学校という場で、子ども自身が自分の状況を言葉にし、助けを求める力を身につけることが、社会全体の課題になっているのです。

田島南小中一貫校の『生きる』教育は、この現実から目をそらさず、子どもたちと正面から向き合おうとする試みでもあります。

9年間のプログラムとして続く『生きる』教育と全国への広がり

田島南小中一貫校の特徴は、1年生から9年生までの9年間を通したプログラムとして『生きる』教育を位置づけていることです。

1年生の「プライベートゾーン」から始まり、2年生の「みんなむかしは赤ちゃんだった」、3年生の「子どもの権利」、4年生の「自分の歴史をふり返る学び」、5年生の「愛か支配かを考える授業」、6年生の「家族や結婚を考える時間」、そして中学生の「思春期の心と脳」「デートDV」「社会の中の親と子」へと、テーマは少しずつ深まりながらつながっていきます。

この連続したカリキュラムによって、子どもたちは単発の知識ではなく、「自分の体」「自分の心」「自分の人生」を長い時間をかけて考え続けることになります。

こうした『生きる』教育の実践は、書籍や講演を通じて全国に紹介され、他の自治体や学校でも参考にされ始めています。また、国連の国際機関や国内の団体が開催する国際女性デー関連企画の中でも、この番組が取り上げられるなど、国内外から注目を集めています。

番組が問いかける「生きていく力」とは何か

最後に、番組がいちばん伝えようとしているメッセージは何かを考えてみます。

それは、「生きていく力は、がんばりだけで身につくものではない」ということです。

自分の体を大切にすること。
おかしいと感じたときに「いや」と言えること。
困ったときに「助けて」と言えること。
人を傷つけない関係を選び取ろうとすること。

これらはどれも、子どもたちが自分の力だけで身につけられるものではありません。学校や家庭、大人たちが環境を整え、言葉をかけ、一緒に考えていく中で、少しずつ育っていく力です。

田島南小中一貫校の『生きる』教育は、その一つの答えを示してくれます。しかし同時に、「あなたの地域ではどうだろう」「あなたの周りの子どもたちには、どんな支えが必要だろう」と、私たち一人ひとりに問いかけているようにも感じられます。

この番組をきっかけに、画面の向こうの子どもたちだけでなく、今まさにそばにいる子どもたちの生きていく力について、あらためて考えてみたくなる。そんな、静かだけれど心に残るドキュメンタリーになっています。

【ETV特集】のびのびと 思いのままに −子どもたちが描いた100年−|山下清の原点と八幡学園児童作品、貼り絵が育てた知的障害児アート100年|2026年1月31日


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