首の痛みと首下がり症 今回のチョイスのポイント
番組のテーマは、私たちの身近な悩みである 首の痛み です。
その中でも、高齢者に多い 首下がり症候群、そして首の痛みと手のしびれを起こす 頸椎症性神経根症 や 頸椎椎間板ヘルニア に焦点が当てられます。
首が重くて前に落ちてしまう、顔をまっすぐ前に向けていられない。
そんな状態になると、歩くことやごはんを食べることさえ難しくなってしまいます。これが首下がり症候群です。
一方で、首から肩・腕にかけての痛みやしびれが出る病気が、頸椎症性神経根症や頸椎椎間板ヘルニアです。加齢や姿勢のくせで首の骨や椎間板が変形し、神経を圧迫することで起こります。
この記事では、番組のテーマに沿って「どんな病気なのか」「どんなサインに気づけばいいのか」「どんな治療や選択肢があるのか」を、一般的に知られている医療情報をもとに、わかりやすく整理していきます。
首下がり症候群とは?首が前に落ちてしまう病気の正体
首下がり症候群 は、体を起こしているときに顔をまっすぐ前に向けていられず、首が前に垂れ下がったままになってしまう病気です。体幹に対して頭が前に大きく傾き、前方を見にくくなるのが大きな特徴です。
多くの場合、最初は「肩こりがひどい」「首が重い」といった違和感から始まります。
少しずつ首が前に傾きやすくなり、やがて自分の力では頭を持ち上げて前を向くことが難しくなっていきます。進行すると、頑固な首の痛みだけでなく、手足のしびれや力が入りにくいといった神経の症状が出ることもあります。
原因は一つではありません。首を支える筋肉が弱くなる「筋原性」のタイプ、脊髄や神経の病気に伴うタイプ、姿勢のくせや変形性の変化が重なったタイプなど、背景はさまざまです。首の後ろ側の筋肉に負担がかかり続けることで筋肉が壊れ、線維化してしまうと、リハビリだけでは元に戻りにくくなることも指摘されています。
首下がり症の初期症状とセルフチェックのコツ
首下がり症は、初期のうちはレントゲンでも異常がはっきり出ないことがあり、「ただの首こり」と見過ごされがちです。初期の首下がり症候群の3割以上は、画像検査で首下がりがはっきりしないという報告もあります。
早めに気づくためには、次のような変化を意識してチェックしてみることが大切です。
・写真を撮ると、以前より頭が前に出ている
・歩くとき、自然と下を向いてしまい、前を向き続けるのがつらい
・「前を向いて」と言われても、首だけで顔を上げるのが大変
・長時間座っていると、首の後ろが強く痛くなる
専門家が提案している「首下がりテスト」では、立位や座位などいくつかの姿勢で、頭を持ち上げられるかどうかを確認します。自分や家族が「首を持ち上げ続けることができない」と感じる場面が増えてきたら、早めに相談するサインです。
日常でできる首下がり症予防の姿勢と簡単エクササイズ
首下がり症は、高齢の方に多く見られますが、日常の姿勢や筋力低下も大きく関わります。
そのため、予防の基本は「首の後ろの筋肉の負担を減らし、姿勢と筋力を整えること」です。
たとえば、こんなポイントがあります。
・スマホや読書で長時間うつむき続けない
・顔だけでなく、胸から上を少し起こすイメージで姿勢をととのえる
・椅子に深く座り、背もたれをうまく使う
・軽い首まわりの体操や、背筋を意識した運動を続ける
リハビリの現場では、首を支える筋肉を守るために、いきなりきつい筋トレをするのではなく、痛みを悪化させない範囲で、肩甲骨まわりや背中全体をゆるめるストレッチや、軽い抵抗運動から始めることが多いです。
医療的にも、姿勢と筋力を整えることが「進行をゆるやかにし、日常生活を保つ」意味で重要だとされています。
頸椎症性神経根症とは?首の痛みと腕のしびれのメカニズム
頸椎症性神経根症 は、首の骨(頸椎)の加齢による変化で、神経の通り道が狭くなり、腕に向かう神経根が圧迫される病気です。
中年以降に多く、主な症状は次のようなものです。
・首から肩、腕、手指にかけての痛み
・指先のしびれ
・ビンのふたを開けにくい、物を落としやすいなどの力の入りにくさ
・首を後ろに反らすと痛みが強くなる
原因としては、椎間板がふくらんだり、骨のとげ(骨棘)ができたりして、神経が通る出口が狭くなることが挙げられます。上を向く・振り向く・うがいをするなど、首を反らせる動きで痛みが強く出るのが特徴のひとつです。
「ただの肩こり」と思って市販薬やマッサージだけで様子を見てしまうケースもありますが、しびれや筋力低下が続くと、日常生活に大きな支障が出てきます。
頸椎椎間板ヘルニアの特徴と「ただのコリ」との違い
頸椎椎間板ヘルニア は、首の骨と骨の間にある椎間板が傷み、中身が外に飛び出して神経を圧迫する病気です。
椎間板は、水分を多く含んだクッションのような組織です。加齢や負担の積み重ねで乾燥し、ひび割れが入ると、中身が外に押し出されます。その飛び出した部分が神経に当たることで、強い痛みやしびれが起こります。
症状としては、
・首の痛み
・肩や腕、手のしびれ
・握力低下や細かな作業のしづらさ
・長く続くと腕や手の筋肉がやせてくる
などが見られます。
一時的な「コリ」とは違い、頸椎椎間板ヘルニアでは、神経に沿って電気が走るような痛みや、特定の方向に首を動かしたときに強く痛むなど、はっきりした特徴が出ることが少なくありません。「おかしいな」と感じる違和感が続く場合は、自己判断で放置しないことが大切です。
保存療法でできること 薬・装具・リハビリの役割
頸椎症性神経根症や頸椎椎間板ヘルニアは、いきなり手術になるわけではありません。
多くの方は、まず 保存療法 と呼ばれる「手術以外の治療」から始めます。
保存療法には、たとえば次のような方法があります。
・痛みや炎症を抑える内服薬・湿布
・首の動きをサポートするカラー(装具)
・物理療法(温める・電気刺激など)
・姿勢指導とリハビリテーション
日本整形外科学会などの情報でも、頸椎症性神経根症の多くは、安静や保存療法で3か月ほどのうちに症状が落ち着くとされています。
一方で、痛みが非常に強い場合や、しびれ・筋力低下が急速に進む場合には、早めの手術が検討されることもあります。保存療法には「時間をかけることで自然な改善を待つ」という意味がありますが、その間に症状が悪化していないかを医師と一緒に確認していくことが重要です。
手術を選ぶタイミングと、術後の生活で気をつけたいこと
手術が検討されるのは、次のような場合が多いとされています。
・強い痛みが長く続き、日常生活に大きな支障がある
・腕や手の筋力が明らかに低下している
・保存療法を続けても改善しない、または繰り返し再発する
頸椎椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板の一部を取り除いたり、圧迫を解除したりする手術が行われます。近年は、内視鏡を使った低侵襲の手術や、短期入院で行う方法なども報告されていますが、選べる術式は病状や施設によって違います。
首下がり症候群の場合も、原因となる頸椎の変形や神経の圧迫が強いときには、手術が選択肢に入ります。ただし、筋肉の障害が進んでからでは十分な改善が難しいこともあり、「早期診断と早期の対応」が重要だと強調されています。
術後は、すぐにすべてが元通りになるわけではありません。無理のない範囲で首を支える筋肉を回復させるリハビリを続け、長時間同じ姿勢を避けるなど、生活習慣の見直しもあわせて行うことが、再発予防につながります。
「病院へ行くべきサイン」はここを見る 受診の目安
「この程度なら様子を見てもいいのか」「すぐに病院へ行くべきなのか」。
首の痛みでは、この判断に迷う方がとても多いです。
一般的に、次のような場合は早めの受診がすすめられます。
・首の痛みが数週間続き、良くなったり悪くなったりを繰り返す
・肩から腕、手指にかけてしびれや痛みが広がっている
・ボタンをとめる、箸を持つなど細かい動きがしづらい
・足元がおぼつかない、ふらつきが出てきた
・頭が前に落ちてしまい、自分の力で顔を上げ続けるのが難しい
こうした症状は、「神経の圧迫」や「首下がり症候群」のサインである可能性があります。
首の病気は、早く見つけるほど治療の選択肢が広がり、回復のチャンスも大きくなります。「年齢のせいだから」とあきらめる前に、一度専門の医師に相談してみることが、自分の体を守る大事な一歩です。
首の専門家・遠藤健司医師のプロフィールとメッセージ的な視点
番組の講師をつとめる 遠藤健司 医師は、東京医科大学病院整形外科の教授で、脊椎・脊髄や頸椎の治療を専門とする整形外科医です。首下がり症候群についての診断や治療、首下がりテストの開発などにも関わり、患者さん向けの情報発信も行ってきました。
首下がり症の診療では、「進行してしまう前にどう気づくか」「日常生活のなかでどう支えていくか」が大きなテーマになります。遠藤医師らが行ってきた市民向けの講演や情報発信も、まさに「患者さん自身や家族が早く気づけるように」という思いから生まれたものです。
首の病気は、レントゲンやMRIだけでなく、普段の姿勢や生活の様子を丁寧に聞き取ることで見えてくる部分が多いと言われます。専門家の知見と、患者さん自身の気づき。その両方が合わさることで、よりよい「チョイス」ができるようになります。
首の痛みと上手につきあうために 今日からできる小さなチョイス
最後に、この記事全体のポイントをまとめます。
・首下がり症候群は、首が前に落ちて前を向けなくなる病気で、早期発見がとても大切です。
・頸椎症性神経根症や頸椎椎間板ヘルニアは、首の加齢変化や椎間板のトラブルで神経が圧迫されることで起こり、首の痛みと腕のしびれが主なサインです。
・治療は、まず薬や装具、リハビリなどの保存療法から始まることが多く、必要に応じて手術が検討されます。
・「痛みが長く続く」「しびれや力の入りにくさが出てきた」「頭を持ち上げていられない」といったサインは、早めに受診を考える目安になります。
首は、頭の重さを支えながら全身とつながっている、大切な通り道です。
だからこそ、痛みやしびれを「年のせい」と片づけず、自分の体の声として受け止めてあげることが大事です。
今日、この記事を読んだこのタイミングが、あなたにとっての チョイス になればうれしいです。
「ちょっと気になるな」と感じたら、一度しっかり首と向き合ってみてくださいね。
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