プロも驚いた!魂のしょうゆラーメン頂上対決の結末とは|2025年4月2日放送
2025年4月2日(水)放送のNHK『激突メシあがれ〜自作グルメ頂上決戦〜』は、アマチュア料理人による本気のしょうゆラーメン対決がテーマでした。「プロには絶対作れないラーメン」を合言葉に、公務員、元エンジニア、設計士の3人が1か月間かけて準備した“魂の一杯”で勝負。食材・技術・想いすべてがぶつかり合う真剣勝負に、審査員のプロラーメン職人たちも驚きと称賛を惜しまず、視聴者の心にも強く残る内容となりました。
ルールは90分勝負、食材費は1杯1000円以内
頂上決戦に参加したのは全国から選ばれた3人のアマチュア料理人。
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愛知県の元エンジニア・壁谷さん
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山形県の設計士・渡邊さん
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栃木県の公務員・星さん
審査員は、ラーメン職人の飯田将太さんと、ラーメン食材スペシャリストの佐野しおりさん。評価基準はレシピの工夫・見た目・オリジナリティーの3点。与えられた条件は、90分以内に完成させること、そして1杯あたり1000円以内で食材をそろえるという厳しい制限でした。
壁谷さん|夜空を映した一杯「岡崎ブラック・満天の星空」の世界
壁谷さんは愛知県在住の元エンジニア。長年にわたり精密金属加工の世界で生きてきた彼は、50代で仕事に一区切りをつけ、そこから本格的にラーメン作りの世界に足を踏み入れました。自宅には、自ら工具を使って仕上げたラーメン専用の“秘密基地”があり、仕込みから盛りつけまでを1人でこなす環境を整えています。
今回、彼が挑んだテーマは「夜空」。スープのベースには、創業200年を超える地元のしょうゆ蔵に特注したたまりしょうゆを使用。深く黒いそのスープは、空一面に広がる夜空をイメージしています。具材には、白しょうゆで漬けた食材を乗せ、そこに「満月」を演出するという美的表現まで取り入れられました。
この一杯には、彼自身が人生の中で味わってきた孤独や希望が込められています。仕事で追い込まれる日々の中、夜中に作ったブラックラーメンが自分の心を救ってくれた。その時の感動が忘れられず、「夜空に願いを込めるようなラーメンを作りたい」と考えるようになったそうです。
ラーメンに使った素材にもこだわりがあります。
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タコ:噛むほどに味が広がるアクセント
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タラ:上品な旨みがスープに深みを加える
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ニギス:地元でなじみのある白身魚で、ラーメンに個性を加える
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里芋:やわらかく仕上げたトッピングで、優しさと食感の変化を演出
仕上がった一杯は、見た目のインパクトだけでなく、味の重なりとストーリー性を併せ持つ作品になっていました。トッピングの配置も計算されており、スープの表面に映る“星空”は、まるで絵画のような静けさと奥行きを感じさせます。
壁谷さんのラーメンは、味だけでなく、自らの人生の節目と向き合った証。プロの職人では決して表現できない、個人の感情と時間を詰め込んだ一杯が完成した瞬間でした。
渡邊さん|庄内の恵みを一杯に込めた「鱈福ラーメン」の物語
渡邊さんは山形県庄内地方に暮らす現役の設計士です。日々建築設計に向き合う中で、地元の自然と伝統を大切にする心を持ち続けてきました。2024年7月、彼の暮らす地域は記録的な大雨に見舞われ、自宅も職場も大きな被害を受けました。その経験から、「ふるさとの味をもう一度自分の手で表現したい」という強い想いが芽生え、今回のラーメン作りにつながりました。
モチーフにしたのは、庄内地方の冬の定番料理である寒ダラ汁。寒い季節に体を温める郷土料理を、自作のラーメンという形で再構成しようと考えたのです。
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麺は庄内産の小麦を使用
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小麦の特徴は香りが高く粘りが少ないこと
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この特徴を活かすため、水分量の調整は1ml単位で繊細に調整
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スープはあえて白しょうゆを選び、タラや野菜など素材本来の味を際立たせる工夫を凝らす
使用した寒ダラは、日本海でとれる地元ならではの新鮮な魚。食感と風味を活かすため、下処理にも時間をかけています。さらに、トッピングには庄内ならではの野菜も取り入れ、「食べることで庄内の風景が浮かぶ」ような構成を意識したといいます。
試作中には、愛用していた製麺機が突然故障するというアクシデントもありました。新品の製麺機は高額で、すぐには手が出せませんでしたが、奥さんの理解と協力により、家計を節約して購入。その新しい製麺機で理想の麺を再現するために、毎晩深夜まで試作を重ねる日々が続きました。
ラーメン作りに対する渡邊さんの情熱は、10年前に母親が舌がんを患った経験にも根ざしています。当時、治療の影響で味覚が変化した母のために、塩分を感じにくいラーメンを試行錯誤。塩分量は0.01g単位で調整を重ね、ようやく「おいしい」と言ってもらえたあの一杯が、彼の料理の原点となりました。
今回完成した「庄内の恵み・鱈福ラーメン」は、見た目も味も庄内の自然を表現しています。スープには鱈の旨みが染みわたり、やさしいしょうゆの香りが鼻を抜けます。粘りの少ない庄内小麦の麺は、スープとの一体感を大切にした仕上がりで、主役が麺とスープ両方であることを意識した構成になっていました。
彼にとってこの一杯は、家族への感謝、ふるさとへの誇り、そして再生への強い願いが込められたものでした。渡邊さんの「鱈福ラーメン」は、単なる再現ではなく、人生そのものを表現したラーメンとして、視聴者の記憶に深く刻まれました。
星さん|家族の記憶と向き合った「旬野菜を使った星家のしょうゆらーめん」
栃木県の公務員・星さんは、自作歴9年、これまでに作ったラーメンの数は500杯以上にのぼります。日々仕事の合間に研究を重ね、家族のため、そして自分の想いを形にするために、ラーメンを作り続けてきました。今回、彼が出場するにあたって選んだテーマは「家族」。その想いを込めたのが、「旬野菜を使った星家のしょうゆらーめん」でした。
使用された素材には、星さんの家庭菜園で丁寧に育てられた大根、白菜、菜の花など、旬の野菜がふんだんに使われています。野菜だけでなく、豚ひき肉と豚ばら肉も加えることで、コクとボリュームを持たせつつ、優しいスープとのバランスをとっています。スープは野菜から取った自家製出汁を使用し、まろやかでやさしい味わいに仕上げられていました。
星さんが家庭菜園と向き合う理由には、深い家族の物語があります。彼の妹は重度の身体障害と知的障害を抱えており、家族全体で彼女を支える日々を過ごしてきました。2024年11月11日、その妹が亡くなり、星さんにとって今回のラーメンは妹との記憶と向き合うための一杯となったのです。
幼い頃、妹の介護が日常だった家庭では、星さん自身がわがままを言ったり、夢を語ったりすることが難しかったといいます。大学時代に一度はラーメン屋になる夢を抱いたものの、「自分の夢より家族を優先すべき」と、公務員という安定した道を選びました。そんな彼が、家の畑で野菜を育て、その野菜を使ってラーメンを作るようになったのは、自己表現の一つであり、家族への感謝の形でもあったのです。
完成したラーメンには、妹の好きだった野菜を意識して取り入れ、彩りにも配慮がされていました。菜の花の鮮やかな緑、大根の白、白菜のやさしい甘みが調和し、スープに溶け込むことで、食べる人の心をほっとさせるような温かい一杯になっていました。
決戦の当日、星さんのラーメンは見事優勝。評価されたのは、プロでは作れない家庭の味と、野菜のうまみを丁寧に引き出す技術。そして何より、妹との記憶や、家族への深い愛情がそのまま料理に表れていたことが、審査員の心を強く打ちました。
「旬野菜を使った星家のしょうゆらーめん」は、見た目の派手さではなく、日々の暮らしと想いが積み重なった一杯として、多くの人の心に残る作品となりました。星さんが抱えてきた過去や願いが、温かな湯気となって一杯の中に立ち上り、観る人すべての胸を打つラーメンだったと言えるでしょう。
それぞれのラーメン、三者三様の人間ドラマ
3人のラーメンには、それぞれに異なる人生の物語と技術の探求が込められていました。壁谷さんのラーメンは独創的なビジュアルと醤油の深み、渡邊さんのラーメンは郷土愛と再生への希望、星さんのラーメンは家庭と向き合う優しさ。いずれも「プロには作れない」個性と説得力を備えた逸品でした。
試食した審査員は、どの一杯にも高い評価を与え、甲乙つけがたいと悩む様子が印象的でした。プロの舌をもうならせるアマチュアの実力が、あらためて浮き彫りになった瞬間でした。
栄冠は「星家のしょうゆらーめん」に
最終審査の結果、優勝に輝いたのは星さんの「旬野菜を使った星家のしょうゆらーめん」でした。
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プロでは表現できない家庭の温もり
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野菜を主役にした優しいスープ構成
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自作9年で培った技術と、食材の活かし方
これらが高く評価されました。特に「家の野菜で勝負した姿勢」と「野菜出汁の高度な仕立て」が決め手となりました。自分と家族に向き合ってきた時間そのものが、優勝の理由となったといえます。
今後の放送にも注目
初回から深い人間ドラマと本格的な料理技術が交差する『激突メシあがれ』。料理のうまさだけでなく、その背後にある“想い”が視聴者の心を打つ番組です。次回のテーマや参加者にも期待が高まります。
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