Eテレ【ふるカフェ系ハルさんの休日】群馬・甘楽町「OBATA」カフェで味わう焼きおにぎりと城下町の時間｜2025年6月5日放送

群馬・甘楽町「OBATA」｜築120年の商店が今も“地域のハブ”として生きるカフェ

群馬・甘楽町「OBATA」｜築120年の商店が今も“地域のハブ”として生きるカフェ

2025年6月5日放送の『ふるカフェ系ハルさんの休日』の舞台は、群馬県南西部の甘楽町（かんらまち）。かつて織田家の城下町として栄えたこの町には、復元された大名庭園や歴史的な街並みが今も美しく残っています。そんな町にある築120年の商店建築を改装したカフェ「OBATA（オバタ）」が、今回の物語の中心です。

地域の暮らしを支えた“ハブ”だった店

群馬県甘楽町にある「OBATA（オバタ）」は、明治時代に建てられた築120年の商店建築を活用した歴史ある建物です。かつてこの店は、地域の暮らしに欠かせない「なんでも屋」として、さまざまな商品を取り扱っていました。呉服や薬、たばこに加え、日用品なども揃っており、まさに町の人たちが日々訪れる“生活の中心”のような場所でした。

当時は珍しかったガス灯を設置しており、夜でも明るく、地域の安心につながっていました
店の奥では養蚕も行われており、農家と商人の機能を併せ持っていた多機能な空間でした
広い土間や高い天井が特徴で、風通しも良く、夏でも快適に買い物ができたと言われています
瓦屋根と格子窓のある外観は、町並みと調和しながらも目印になる存在でした

こうした特徴から、「OBATA」は単なる店舗以上の存在でした。たとえば、近くの人が立ち寄って天気や作物の話をしたり、時には遠方から品物を求めて来る人もいたとされます。商品を買うだけでなく、人と人がつながる場だったことがよくわかります。

現在の姿でも、この「人が集まる場」としての機能は受け継がれています。NPO法人が運営する農業研修の拠点としても活用され、国内外の研修生たちが交流する場所になっています。かつての住民が日々の生活を支えたように、今は農や地域に関心のある人たちが集まり、知識や文化を共有するハブの役割を果たしています。

当時の名残を残した木製の棚や看板、床の間の設えなどはそのままに、建物全体に歴史と温もりが残されています。時間の流れを静かに受け入れながら、それでも地域にとって必要な場として機能し続けている、そんな稀有なカフェです。

農業研修の拠点に生まれ変わる

群馬県甘楽町にある「OBATA（オバタ）」は、かつて地域の商いや暮らしを支える場所でしたが、今では農業研修を行うNPO法人の拠点として生まれ変わっています。築120年の歴史ある商店建築をそのまま活用しながら、新しい学びの場として機能しているのが特徴です。静かな城下町の中で、国内外からやって来た人たちが集まり、自然とふれ合いながら農業の技術や地域の文化を学んでいます。

運営しているのは地元のNPO法人で、地域農業の継承や活性化を目的に活動しています
日本各地だけでなく、海外からの研修生も受け入れており、国際交流の場としても機能しています
滞在中は地元農家の手伝いや季節の作物の栽培、収穫体験などを行い、実践的に農を学ぶ内容になっています
宿泊や食事もこの建物内で完結できるようになっており、築120年の空間で暮らしながら学ぶという特別な体験ができるのも大きな魅力です

研修に参加した人たちは、土を触り、野菜を育て、地域の人々と一緒に食卓を囲みながら、ただ作物を育てるだけでなく、人と人がつながる農業の本質を体感しています。こうした場を提供している「OBATA」は、今や地域にとっての学びの場であり、同時に世界とつながる入り口でもあります。静かな町にありながら、毎年多くの人が訪れ、新しい気づきと経験を持ち帰っていきます。

また、季節ごとの農作業や行事に参加することで、自然のリズムや土地の文化を体で感じることができるのも、この場所の強みです。店の一角では地域の野菜や加工品も販売しており、訪れた人が地域の味を持ち帰ることもできます。

このようにして「OBATA」は、かつての商店が持っていた“人が集まり、情報やモノが行き交う”という役割を、現代のかたちで引き継いでいるカフェとして、静かに、でも確かに地域の未来を支え続けています。

地元の味「おこじはん」を味わえる

「OBATA（オバタ）」では、甘楽町の風土や暮らしを感じられる地元ならではの食事が提供されています。その代表が「おこじはん」という素朴なランチです。この名前には、「お小昼（おこひる）」のような意味合いがあり、農作業の合間に食べる簡単で栄養のあるごはんとして、昔から親しまれてきました。忙しい農作業の手を止めて、ちょっと一息入れるための食事。それが「おこじはん」です。

主役は地元産のみそを使った焼きおにぎりで、外側はパリッと香ばしく焼かれ、中はふっくらと炊き立てのごはんの甘みが感じられます
焼き加減は絶妙で、味噌のこうばしさと米のうまみが一体となり、ひと口で“田舎のおふくろの味”が広がるような安心感があります
焼きおにぎりのそばには、季節の野菜を使ったおひたしや煮物などの小鉢が添えられ、どれも家庭的で優しい味つけです
料理はすべて手づくりで提供されており、地元の食材の良さを丁寧に引き出した内容になっています

この「おこじはん」は、見た目はシンプルですが、地域の食文化や暮らしの知恵が詰まった奥深い料理です。食材はなるべくその季節に採れる新鮮なものが使われ、訪れるたびに少しずつ変化があるのも楽しみのひとつです。体にやさしく、飽きのこない味わいで、初めて訪れる人にもどこか懐かしく感じられるような一皿です。

また、農業研修の合間にこの「おこじはん」を食べることで、参加者たちは地元の生活リズムを体験し、食と農のつながりを実感できます。ただ食べるだけでなく、土地の恵みや人の手間に思いを馳せながら味わうことで、心までほっと満たされる時間が流れます。こうして「OBATA」のランチは、料理以上の価値を持つ“地域との対話”のような存在になっているのです。