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NHK【映像の世紀バタフライエフェクト 昭和百年(3)高度成長 やがて悲しき奇跡かな】18年間10%成長の光と影、公害・長時間労働・東京五輪を映像で振り返る(2025年9月8日放送)

昭和百年(3)高度成長 やがて悲しき奇跡かな

2025年9月8日放送のNHK「映像の世紀バタフライエフェクト」では、3回シリーズ「昭和百年」の最終回として、高度経済成長をテーマに取り上げます。戦後の焼け野原から立ち上がり、1950年代後半から1970年代初頭までの約18年間、毎年ほぼ10%前後という驚異的な成長を続けた日本。その姿は「経済の奇跡」と呼ばれました。当時の人々は「明日は今日より豊かになる」と信じ、未来への期待と熱狂に包まれていました。しかし、その光の裏には多くの犠牲と負の側面が潜んでいました。今回の放送は、その両面を映像で振り返り、私たちに「豊かさとは何か」を問い直すきっかけを与えてくれます。

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戦後復興から高度成長への出発点

高度経済成長の出発点は、戦後の復興です。焼け跡からの再建には莫大なエネルギーが必要でしたが、人々の強い意志と努力によって、産業の基盤が整えられました。さらに、1950年代初頭の朝鮮戦争が「特需」を生み、鉄鋼や化学工業をはじめとする重工業の発展を大きく後押ししました。これにより日本は、農業国から工業国へと急速にシフトしていきます。

景気を彩った「四つの波」

1955年からの「神武景気」、1958年からの「岩戸景気」、1963〜1964年の東京オリンピックを背景にした「オリンピック景気」、そして1965年から1970年にかけての「いざなぎ景気」。これら四つの大きな景気の波は、日本経済を力強く押し上げました。特に1964年の東京オリンピックは、新幹線や高速道路などの社会資本整備を急ピッチで進め、日本の近代化を象徴する出来事となりました。「もはや戦後ではない」と宣言された1956年の経済白書は、国民の意識を大きく変える一文でした。

豊かさの象徴「三種の神器」

この時代の国民にとって、毎年の昇給は現実でした。さらに家庭にはテレビ・冷蔵庫・洗濯機の「三種の神器」が次々と普及し、生活の質が大きく向上しました。家電製品の普及は、家事の負担を軽減し、余暇の時間を生み出しました。人々は「より便利に、より快適に」という暮らしの変化を実感し、未来への希望を強く持つようになったのです。加えて、自動車やカラーテレビといった新たな消費財も流行し、消費ブームが社会を彩りました。

長時間労働と犠牲の影

しかし、急成長の裏では労働者に大きな負担がのしかかりました。長時間労働は常態化し、終身雇用や年功序列のシステムのもと、従業員は会社に人生を捧げるような働き方を強いられました。サービス残業は当たり前で、声を上げにくい風潮もありました。やがて「過労死」という言葉が社会に登場し、健康被害や精神的な犠牲が大きな問題となっていきます。表向きの「豊かさ」の裏で、多くの人々が命や生活を削らざるを得なかった現実があったのです。

東京の急激な変化と都市問題

高度経済成長の中心にあったのは東京です。地方からの人口流入が急激に進み、都市の人口は膨張しました。その結果、ごみが街にあふれ、川は汚水で悪臭を放ち、「臭いまち」と呼ばれるほどに環境は悪化しました。特に1960年代前半の隅田川や神田川は深刻な水質汚濁に悩まされ、花火大会やボート競技が中止される事態もありました。1964年の東京オリンピックを前に、「一千万人の手で東京をきれいに」というスローガンのもと、下水道の整備や清掃活動が大々的に進められました。この整備が都市環境改善の大きな転機となりました。

公害の発生と環境問題

経済の急拡大は、公害という深刻な代償を生みました。熊本の水俣病、新潟水俣病、富山のイタイイタイ病、三重の四日市ぜんそく――これら四大公害病は、多くの人々に健康被害を与え、日本社会を揺るがしました。加えて、田子の浦のヘドロ公害や光化学スモッグなど、各地で環境破壊が進みました。市民運動が全国で高まり、政府は1970年に公害対策基本法を制定し、1971年には環境庁(現・環境省)が設立されるに至りました。高度成長は、自然と人々の健康に大きな代償を払うことで成立していたのです。

番組が問いかける「豊かさ」の意味

今回の番組では、「経済の奇跡」と呼ばれた成長の熱狂と、同時に生じた長時間労働・都市問題・公害といった代償を、貴重な映像で振り返ります。当時の国民は確かに未来に夢を抱きましたが、その陰で多くの人々が苦しみ、自然が傷つけられました。豊かさとは単に経済規模の拡大なのか、それとも人々が安心して暮らせる社会なのか――。この放送は、現代の私たちにも大切な問いを投げかけてくれるはずです。


この記事は放送前に公開されている情報をもとにまとめています。放送後には、番組で取り上げられた映像や証言を反映し、さらに詳細な内容を追記予定です。

出典:NHK公式番組表・関連史料

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