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NHK【ブラタモリ】長野・上高地▼山岳リゾート・上高地の絶景はどう生まれた?火山と湧き水が描く奇跡の盆地|2025年10月4日

ブラタモリ

上高地の絶景はなぜ人を惹きつけるのか?自然が描いた奇跡の地形

長野県の山奥にある上高地。行ったことがある人なら、あの静けさと透き通る水の青さを忘れられないでしょう。でもふと疑問に思いませんか?あんなに険しい北アルプスの真ん中に、なぜあれほど平らで広い土地があるのか。どうして、あの美しい川や山々が今の形をしているのか。
私も初めて訪れたとき、自然が作ったとは思えない“整いすぎた風景”に息をのみました。この記事では、ブラタモリ(2025年10月4日放送)で明らかになった「上高地の絶景の成り立ち」を、自然の仕組みと人の努力の両面から解き明かします。読むころには、上高地を“ただの観光地”ではなく、“生きた地球の記録”として見られるようになるはずです。

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火山がつくった「平らで歩きやすい大地」

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まず、上高地の魅力のひとつが「平らで広い盆地」であることです。標高1500メートルという高地にありながら、まるで平原のように穏やかに広がる地形は、訪れる人を驚かせます。山に囲まれた場所でこれほど整った地形が存在するのは非常に珍しく、まさに上高地ならではの特徴です。

この広大な平地を生み出したのが、活火山として知られる焼岳を中心とした焼岳火山群です。およそ数万年前、この地域では何度も噴火が起こり、そのたびに火山灰や溶岩が谷を埋め尽くしました。熱く流れ出た溶岩はやがて冷えて固まり、長い年月を経て現在のような平らな盆地を形成したのです。焼岳火山群には活動時期の異なる火山が複数あり、地層を掘るとそれぞれの時代の噴出物が重なっていることもわかっています。

タモリさんも上高地を歩きながら、「こんなに平らなのに、まわりは全部山なんだね」と感嘆していました。まさにその通りで、上高地は周囲を穂高連峰焼岳といった高山に囲まれながらも、中央部だけが穏やかに広がるという独特の地形をしています。この地形こそが、上高地が“歩いて楽しめる山岳リゾート”として多くの人に愛されている理由のひとつです。

また、上高地を流れる梓川は、この平らな盆地をゆったりと横切るように流れています。川が急流ではなく緩やかに流れるのも、火山活動で作られた堆積地形のおかげです。その結果、訪れる人々は山々を背景に、穏やかな流れと広々とした平地が織りなす雄大な風景を楽しむことができます。

自然の猛々しい力が、一見穏やかな景観を作り上げている――それが上高地の大きな魅力です。火山の噴火という破壊的な現象が、結果的にこの美しいリゾート地の土台を築いたと考えると、まさに「自然のドラマ」を感じずにはいられません。


120万年前の隆起が生んだ「高い山々」

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2つ目の要素は、上高地を取り囲む穂高連峰です。これらの雄大な山々を形づくっているのが、白く美しい花崗岩と呼ばれる岩石です。花崗岩は、地下の深い場所でマグマが長い時間をかけてゆっくり冷え固まることで生まれます。表面で一気に冷える溶岩とは異なり、地中深くで時間をかけて固まるため、粒のそろった滑らかな石質になり、とても硬く風化しにくいのが特徴です。

この花崗岩が地上に現れるまでには、気の遠くなるような年月がかかっています。約120万年前海側のプレートと陸側のプレートが互いに押し合い、強い圧力がかかることで地下の岩盤にひずみが生じました。その力は断層に沿って集中し、地殻を押し上げるような動きを起こします。その結果、地中にあった花崗岩が少しずつ隆起し、長い時間をかけて今のような3000メートル級の山々、つまり穂高連峰が誕生したのです。

この連峰の中心には奥穂高岳前穂高岳など、日本を代表する名峰が連なっています。鋭くとがった山肌や、長年の侵食によって削られた岩壁は、地球のダイナミックな動きの証そのものです。まるで地面そのものが呼吸しているように、山々は今もわずかに動き続けています。

そして、この雄大な地形を世界に紹介した人物が、イギリス人登山家のウォルター・ウェストンです。彼は明治時代の終わりごろ日本に滞在し、『日本アルプスの登山と探検』という本を出版しました。この本によって、上高地や北アルプスの美しさが世界に知られるようになり、日本に近代登山文化を広めたとも言われています。現在、河童橋のそばに建つウェストンのレリーフは、彼の功績をたたえる記念碑として多くの登山者に親しまれています。

大地の動きが山を生み、そして一人の探検家がその美しさを世界に伝えた――上高地の風景には、自然の力と人間の情熱、その二つが重なり合った深い物語が刻まれています。


湧き水が育む「透明な川」

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3つ目の秘密は、上高地を流れる梓川清水川の透明な美しさです。上高地を訪れた人なら、その水の澄み切った青さに思わず立ち止まってしまうでしょう。なかでも清水川は特別な存在です。全長はわずか300メートルほどしかなく、山の湧き水だけを源とする小さな川です。短い距離のあいだに濁ることがないため、流れの底までくっきりと見えるほどの透明度を保っています。

この清らかな水の中には、清流にしか生きられない植物であるバイカモが白い花を咲かせています。バイカモは、冷たく酸素の多い水でしか育たない繊細な水草です。そのそばには、自然の豊かさを象徴する天然のワサビも自生しています。ワサビはきれいな湧き水でなければ根を張れないため、上高地の水質の良さを物語っています。川底には小石が光を反射し、日差しを受けてキラキラと輝く様子は、まるで宝石を散りばめたようです。

清水川の水は、地中の断層の隙間を通って流れ出しています。山に降った雨や雪が地層の奥深くまで染み込み、何年もの時間をかけて自然のフィルターを通過しながら浄化されます。やがて地下から湧き出したその水が、梓川へと注ぎ込むのです。川が短い分、地表に出てから汚れる時間がほとんどなく、常に清らかな状態で流れ続けています。

その結果、上高地全体の水系は濁りのない透明な輝きを放っています。風のない日には、穂高連峰の姿が川面にくっきりと映り込み、まるで鏡のように周囲の景色を映し出します。タモリさんも「この水の透明さは特別だね」と目を細めて見入っていました。

こうした湧き水の仕組みは、まさに自然の浄化装置ともいえるものです。人工的なろ過装置がなくても、地層そのものが水をろ過し、きれいな状態で地表に戻してくれる。この見えない循環が、上高地の美しい景観を何千年も守り続けてきました。清らかな水が生んだこの風景こそ、上高地の中でも最も心を打つ魅力です。


自然を守るための人の知恵「砂防堰堤」

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この美しい上高地の景観を支えているのは、自然の力だけではありません。実はその陰には、長年にわたる人々の知恵と努力があります。かつて上高地では、活火山である焼岳の周辺から大量の土砂や岩が崩れ落ち、それが梓川に流れ込むことで下流域に深刻な被害をもたらしていました。大雨や噴火の影響で発生する土石流は、時に道をふさぎ、橋を壊し、川の流れを変えてしまうこともありました。こうした自然災害を防ぐために建設されたのが、現在の砂防堰堤(さぼうえんてい)です。

砂防堰堤は、山から流れ下る土砂や流木をせき止める巨大な構造物です。上流の谷間や斜面に設けられ、流れの勢いを弱めることで下流への被害を防ぎます。上高地では、梓川上流部から大正池周辺にかけて複数の堰堤が設置されています。これらは一見地形の一部のように自然に溶け込んでおり、観光客には気づかれにくい存在ですが、実際には景観を守るための重要な防衛ラインです。

もしこの砂防堰堤がなかったら、上高地の平らな盆地は長い年月のうちに削り取られ、現在のような穏やかな地形は失われていた可能性があります。洪水や土砂崩れが繰り返されれば、梓川の水は濁り、かつての清流の輝きも保てなかったでしょう。つまり、この穏やかな風景の裏には、自然の猛威とそれに立ち向かう人間の努力の歴史があるのです。

さらに、これらの砂防施設の整備には長野県砂防事務所環境省上高地管理事務所など、複数の機関が関わっています。定期的な点検や補修が行われ、災害の危険を最小限に抑えながら、自然景観を損なわない設計が工夫されています。こうした取り組みのおかげで、上高地は世界的にも珍しい「人が入れる自然保護区」としての姿を保ち続けているのです。

自然が作り出した奇跡の景観を、人の手が守り、次の世代へつないでいく――この絶妙なバランスこそが、上高地が今も“奇跡のリゾート”と呼ばれる理由です。


まとめ:上高地の風景は「自然と人の共作」

上高地の絶景は、
・焼岳火山群の活動がつくった平らな大地
・断層運動が生んだ3000メートル級の山々
・湧き水が磨いた透明な川
そして、
・砂防堰堤による人の保全活動
これらが重なって形づくられた“自然と人の共作”です。
だからこそ、見る人の心を掴み、何度訪れても新しい発見があります。

この地を歩くときは、ぜひ足元の石や流れる水にも目を向けてみてください。数百万年の地球の歴史が、静かに息づいていることに気づくはずです。


出典・参考:
NHK総合『ブラタモリ 長野・上高地〜山岳リゾート・上高地の絶景はどう生まれた?〜』(2025年10月4日放送)
https://www.nhk.jp/p/buratamori/


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