長引くせき…実は「ぜんそく」かも?
秋から冬にかけて多くの人が経験する“長引くせき”。「風邪がなかなか治らない」「エアコンのせいかな」と気にせず放置している人も多いのではないでしょうか。しかし、今回の『あしたが変わるトリセツショー』(NHK総合・2025年10月23日放送)では、そのせきの裏に“命に関わる病気”が隠れている可能性があることが明らかになりました。番組のテーマは「長引くせき」。案内役の石原さとみさんが、最新の医学的データと患者の実例をもとに、“放置してはいけない理由”を丁寧に伝えてくれました。
【あしたが変わるトリセツショー】毎日続けられる秘訣は“完璧をやめる勇気”高血圧対策エクササイズ完全版|2025年10月13日
せきが止まらない…それは“ぜんそく”のサインかもしれない
番組の冒頭、街頭インタビューで「せきが出ても気にしない」「病院に行くほどではない」という声が多く聞かれました。しかし、長年放置したことで重症化した例も紹介されます。武川篤之さん(76)は、ある日突然「息が吸えないほどの激しいせき」に襲われ、救急搬送されました。診断結果はまさかのぜんそく。
ぜんそくというと“子どもの病気”というイメージを持つ人が多いですが、実際には患者の比率は子ども1:大人2。つまり、大人のほうが多いのです。国内の推定患者数は1000万人以上、そのうち治療を受けているのは約185万人に過ぎません。残りの800万人以上が「気づいていない患者」といわれています。
呼吸器内科医の熱田了さんが、ぜんそくを見つけるために使用したのが「呼気NO測定装置」。息の中に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測ることで、気道の炎症レベルを知ることができます。スタジオではなすなかにしとヒコロヒーが挑戦。結果は那須さんが37ppb、中西さんが52ppbと高数値を記録し、ぜんそくの強い疑いがあることがわかりました。22ppbを超えると要注意、37ppbを超えると“ぜんそくの疑いが強い”とされます。
さらに熱田医師は、「喫煙者はNOの値が低く出るため、低数値でも安心してはいけない」と警鐘を鳴らしました。
「3週間」と「8週間」―せきの長さがカギ
番組で紹介された見分け方のキーワードが「3」と「8」。
・3週間以内のせき → 風邪や感染症が原因のことが多い
・3〜8週間続くせき → ぜんそくや後鼻漏、胃酸逆流などの疑い
・8週間以上続くせき → 慢性ぜんそくの可能性大
このシンプルな判断基準を知っておくことで、早期発見につながります。日本喘息学会理事長・東田有智さんもスタジオに登場し、「朝晩にせきが出る」「笑ったり話したりするとせき込む」「冷たい空気でせきが強くなる」などの特徴を挙げました。中西さんもこの症状に該当し、ぜんそくの可能性があると診断。
ぜんそくを引き起こすのは、体の中にいる好酸球という白血球の一種。もともとは寄生虫などの外敵から体を守る“防衛隊”ですが、ほこりやカビ、花粉などに過剰反応してしまうと、味方であるはずの気道を攻撃し、炎症を起こします。この炎症が慢性化すると気道が敏感になり、少しの刺激でも発作的なせきや息苦しさを感じるようになります。
吸入薬が人生を変える!最新治療の現場から
長引くせきに苦しんでいた寺内則子さん(47)。8週間以上続いたせきで「ぜんそく」と診断され、吸入薬を使い始めたところ、生活が一変しました。
2024年の最新ガイドラインでは、ぜんそく治療の目標を「臨床的寛解=症状ゼロ」と設定。つまり、症状を抑えるだけでなく“完全に快適な生活”を取り戻すことを目指しています。
吸入薬には次の2種類があります。
・気管支拡張薬:気管支を広げ、呼吸を楽にする
・抗炎症薬(ステロイド):炎症を根本的に抑える
この2つを1本にまとめたタイプが主流で、使いやすく進化しています。
ただし、治療を途中でやめてしまう人が非常に多いのが現実。調査では「治ったと思った」「面倒」「忘れていた」という理由が上位を占めました。しかし、吸入薬をやめると好酸球が再び暴走し、炎症が悪化してしまいます。たとえ症状が軽くても、少なくとも3カ月は継続して吸うことが重要。
続ける工夫!「TP作戦」で習慣化する
長野県の市立大町総合病院・駒瀬裕子さんは、患者の吸入忘れを防ぐ独自の方法を紹介しました。それが「TP作戦」=Time(時間)とPlace(場所)。
自分の生活リズムの中で“吸入の時間”を固定し、毎日目にする“場所”に置くことがコツです。
例えば、朝の洗顔後や歯磨きのあとに吸入する、洗面台に置くなどのルールを決めることで、自然と習慣になります。番組では八尋悟史さんが実践し、1か月間吸入を続けることに成功。以前は「サボりがちだった」という八尋さんも、「ライブでせき込まず楽しめるようになった」と笑顔を見せていました。
重症でも諦めないで!希望をくれる最新薬
京都市の尾㘴奈保子さん(74)は、重症ぜんそくのため3年間外出もままならない生活を送っていました。しかし、新たに登場した生物学的製剤により劇的に改善。これまで吸入薬でも抑えられなかった症状が和らぎ、再び外出や趣味を楽しめるようになりました。
重症患者の約3割が「臨床的寛解」を達成しており、保険適用によって月数万円で使用可能。軽症・中等症であれば、吸入薬だけで症状ゼロを目指せる人も多いといいます。
尾㘴さんは番組の最後で、「どんなに苦しくても、最後まで諦めないでください」と語りました。この言葉は、長引くせきに悩む多くの人に勇気を与えました。
まとめ:せきを軽く見ず、早めの受診を
この記事のポイントを整理します。
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3週間以上続くせきは「ぜんそく」の可能性がある。放置せず呼吸器内科へ。
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治療の中心は吸入薬。続けることが大切で、自己判断で中止しない。
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吸入を習慣化する「TP作戦」で継続率アップ。
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重症化しても新薬「生物学的製剤」で改善が期待できる。
ぜんそくは決して“治らない病気”ではありません。現代の医療では、症状ゼロを目指せる時代になっています。長引くせきを感じたら、それはあなたの体からのサイン。早めに専門医に相談し、健康な毎日を取り戻しましょう。
出典:NHK総合『あしたが変わるトリセツショー』「長引くせき 放置は命の危険!?気づくには?」(2025年10月23日放送)
https://www.nhk.jp/p/torisetsu-show/
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