突然発症する“カチカチ心不全”とは?心臓を守る秘策まとめ
2025年5月15日放送の『あしたが変わるトリセツショー』(NHK総合)では、「心臓の取説」をテーマに、“カチカチ心不全”という新たなリスクに焦点が当てられました。見た目は元気でも心臓が硬くなっている人が増えており、気づかないうちに深刻な状態へ進行している可能性があるといいます。番組では最新研究をもとに、心不全の兆候や予防法、そしてセルフチェック方法まで幅広く紹介されました。放送内容を詳しくまとめてご紹介します。
透明な魚で心臓の研究が進化
番組の冒頭では、心臓の働きのすごさがわかりやすく紹介されていました。心臓は毎日およそ10万回拍動し、その結果として200リットルのドラム缶で35本分もの血液を全身に送り出しています。人間の命を守るために、休むことなく働き続けているのです。この大切な働きを支えるのが「心筋細胞」という特別な細胞です。
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心筋細胞は筋肉のように動いて血液を押し出すポンプの役割をしています
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皮膚や内臓の細胞は古くなると新しく生まれ変わりますが、心筋細胞は一度できるとほとんど再生しない特徴があります
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そのため、一度傷ついた心筋細胞はなかなか元に戻らず、心臓の病気にもつながりやすくなります
この心筋細胞を詳しく研究するために注目されているのが「ダニオネラ・セレブラム」という体が透きとおる小さな魚です。この魚の心臓は皮膚の外からでも見えるため、生きたまま心臓の拍動や細胞の動きを観察できるという大きなメリットがあります。
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魚の体がとても透明で、心臓の位置や動きが顕微鏡でそのまま見える
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魚のサイズが小さく、研究施設でもたくさん飼うことができる(研究者は2万匹も飼育している)
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心筋細胞の動きがリアルタイムで観察できるため、心臓病が起きる過程を正確に記録することができる
特に、心臓が硬くなっていく“カチカチ心不全”の進行状態や、その予防・改善の手がかりをつかむために、この魚は貴重な役割を果たしています。目に見える形で心臓の変化を追えることは、今後の治療法の開発にもつながる重要なステップです。
このように、身近ではないけれどとても大切な研究が、私たちの命を守るために静かに進められています。透明な魚が、未来の医療を支えているのです。
“カチカチ心不全”とは?目立たない症状が危険
“カチカチ心不全”とは、心臓が硬くなってしまい、血液を受け取ることが難しくなるタイプの心不全です。普通の心不全はポンプの力が弱まることが原因ですが、カチカチ心不全は「ふくらまないこと」が問題になります。心臓は、血液を送り出すだけでなく、全身から戻ってくる血液をしっかりと受け取らなければなりません。ところが、心臓が硬くなるとこの“受け取る動き”ができなくなり、体全体に影響が出てきます。
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心臓が硬くなると、血液が中に入りにくくなる
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血液が入りにくいことで、肺に血液が逆流しやすくなり、息苦しさやむくみなどの症状が起こる
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表立った症状が出にくいため、気づいたときには進行しているケースが多い
このカチカチ心不全の最大の原因は高血圧です。血圧が高いと、心臓はそれに打ち勝つために、より強い力で血液を押し出さなければなりません。その結果、心筋細胞がどんどん大きく(肥大)なり、心臓の壁が厚くなっていきます。
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厚くなった心臓の壁は、十分にふくらめなくなる
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膨らめないことで、血液をため込む量が減り、一度に送り出せる血液の量も減ってしまう
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血液がうっ滞(とどこおり)すると、肺にまであふれ、呼吸にも支障が出る
こうして、目に見える症状が少ないまま進行しやすい“カチカチ心不全”は、気づいたときにはすでに体にさまざまな不調が起きている状態です。特に高血圧が長期間続くと、心臓の構造そのものが変化してしまうため、早めの対策と定期的なチェックがとても大切です。高血圧の人はもちろん、自覚症状のない人でも、年齢や生活習慣を考えて心臓の状態に目を向けることが求められます。
高血圧の影響を受けやすい人とは?
番組では、高血圧の影響がどのように心臓に現れるのかを明らかにするため、高血圧の人5人を対象に心臓の検査を行った結果、4人に異常が見つかったという驚きのデータが紹介されました。見た目には元気そうでも、心臓の内部ではすでに変化が始まっていたということになります。
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見た目に症状がなくても、心臓はじわじわと硬くなっている可能性がある
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心臓の異常は初期には感じにくく、気づきにくいのが特徴
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異常が見つかった人の多くが、生活習慣病(糖尿病や脂質異常症)を抱えていた
特に、女性や高齢者では“カチカチ心不全”になりやすいとされています。これは、加齢により血管や心筋が硬くなりやすくなることや、ホルモンの影響などが関係していると考えられています。さらに、若い人でも生活習慣病を放置していると、同じようにカチカチ心不全のリスクが高まります。
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女性は更年期以降、心臓病のリスクが上昇する傾向がある
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男性は“カチカチ心不全”になる前に、心筋梗塞などで心筋そのものが弱るケースが多い
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いずれの場合も、長年の生活習慣の積み重ねが原因となるため、数ヶ月で急に悪くなるわけではない
心臓の硬化がまだ軽度の段階であれば、適切な治療や生活改善によって改善できる可能性もあると専門家は説明していました。しかし、症状が進んで心筋が厚くなり、柔軟性が失われてしまうと、元の状態に戻すのは非常に難しくなるとのことです。
自分では気づかないうちに進んでしまうのが“カチカチ心不全”の怖さです。だからこそ、早期の発見と予防的な生活習慣の見直しがとても重要になります。特に、高血圧を持っている人や、生活習慣病を指摘されたことがある人は、定期的に心臓の状態をチェックすることが勧められます。
心臓のSOSを見逃さない!BNPホルモンとは
心臓に異常があるかどうかを調べる方法として、BNPというホルモンの数値測定が紹介されました。BNPは心臓にストレスがかかると増えるもので、尿の排出を促す働きがあり、心臓の負担を減らす役割を担います。
前橋市ではこのBNP検査の普及を目指し、かかりつけ医が適切に検査を勧める仕組みを整備。その結果、心不全の早期発見率が5割向上したと報告されていました。
自分でできるチェックシートと予防法
番組では、大島美幸さんと中西茂樹さんが心不全のセルフチェックシートに挑戦。以下の項目が1つでも当てはまれば、心不全のリスクがある可能性があります。
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高血圧
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糖尿病
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脂質異常症
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肥満
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下半身のむくみ
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貧血
心臓が発する小さなSOSを見逃さず、早めに医師に相談することが大切です。
生活の中でできる高血圧対策と心臓ケア
番組後半では、高血圧の対策として、運動と減塩が基本であると紹介されました。野菜や果物に含まれるカリウムは血圧を下げる働きがあるため、積極的に摂取したい栄養素です。
また、心臓の負担を減らすためには、足を動かして「第2の心臓」を鍛えることが効果的だとされました。76歳の中山さん(仮名)は、心不全の診断を受けたあとも、足を使う習慣を続けることで健康を取り戻したとのこと。
特に次の運動が紹介されました。
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太ももを水平まで上げて歩く動作(難しければ5~10cmでもOK)
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1日8000歩を週3回、少し早歩きで行う
これだけでも、血圧や糖代謝に良い影響があるそうです。
心臓は沈黙の臓器とも言われ、異変が出たときにはすでに手遅れということも少なくありません。そのため、日々の生活の中でのケアと、異常の兆候を逃さないことが、長く元気に過ごす鍵になります。今回の放送をきっかけに、心臓をもっといたわる生活を意識していきたいものです。
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