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Eテレ【きょうの健康】胆のう・胆管の病気 最新治療「胆のうに起こる病気とは?」“沈黙の臓器”に潜む胆のうポリープ10mmと東北大学 海野倫明教授の胆道外科最前線|2025年11月17日

きょうの健康

痛みが出にくいのが怖い…「沈黙の臓器」胆のう・胆管を知ろう

「右わき腹の奥が重い感じがする」「食後に少し気持ちが悪い」「なんとなくだるい」――そんな小さな体の変化を、忙しさのせいにしていませんか?
実はそれ、胆のうや胆管の病気のサインかもしれません。これらの臓器は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が進行しても痛みなどの自覚症状がほとんどないのが特徴です。
この記事では、東北大学の海野倫明教授(胆道・膵臓外科の名医)による最新知見をもとに、「沈黙の臓器」と呼ばれる理由や、代表的な胆のう・胆管の病気、その症状、早期発見のポイントまでを解説します。

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なぜ「沈黙の臓器」と呼ばれるの?

胆のうと胆管は、肝臓から分泌される「胆汁」を一時的に蓄え、消化のタイミングに合わせて腸へ送り出す器官です。特に脂質の消化に欠かせない重要な役割を担っています。
しかし、この2つの臓器は体の奥深くにあり、神経の分布が少ないため、炎症や異常が起きても「痛みとして感じにくい」構造をしています。そのため、病変があっても初期のうちはほとんど症状が出ないのです。

胆のうや胆管の病気は、発見されたときにはすでに進行していることも多く、なかには命に関わるケースもあります。特に、「腹痛」「黄疸」「尿や便の色の変化」が現れたときには、すでに胆汁の流れが大きく妨げられている可能性が高く、早急な対応が必要になります。

胆のう・胆管に起こりやすい主な病気

胆石症(たんせきしょう)

胆汁の成分が固まって「石(胆石)」となり、胆のうや胆管の中にできる病気です。石の大きさや数はさまざまで、小さいうちはまったく症状がない「無症候性胆石」として経過することもあります。健康診断のエコー検査などで偶然見つかることが多いのも、この病気の特徴です。

しかし、石が胆のうや胆管の出口に詰まると、右上腹部の激しい痛み(胆石発作)が起こります。痛みは背中や右肩まで広がることもあり、食後や夜間に強くなる傾向があります。
さらに炎症を起こすと「急性胆のう炎」になり、発熱や悪寒、吐き気を伴う場合も。胆管に石が移動して詰まると「黄疸」や「胆管炎」を引き起こし、放置すると命に関わることもあります。

リスク要因としては、中高年・女性・肥満・高脂肪食・急な体重減少などが挙げられます。特に女性ホルモンには胆汁のコレステロール濃度を高める作用があるため、閉経前後の女性に多いのが特徴です。

治療は、無症状であれば経過観察で済むこともありますが、症状が出た場合は腹腔鏡下胆のう摘出手術が一般的です。近年は体への負担が少ない低侵襲手術が主流になっています。

胆のうポリープ

胆のうの内壁にできる小さな突起物で、多くは良性の「コレステロールポリープ」や「炎症性ポリープ」です。大半は自覚症状がなく、健康診断や人間ドックのエコーで偶然見つかるケースがほとんどです。

ただし、ポリープが10ミリ以上ある、短期間で大きくなった、胆石が併発している、50歳以上であるといった場合には、悪性化(がん化)の可能性を考慮して手術が検討されます。
定期的な超音波検査でサイズの変化を観察することが大切です。

胆のうがん・胆管がん

胆道がんと総称されるこれらの病気は、発見が遅れやすく予後が厳しいタイプのがんとして知られています。胆石症や慢性胆のう炎、膵胆管合流異常などがリスク要因とされています。

初期には症状が出にくく、進行して初めて「右上腹部の痛み」「黄疸」「体重減少」「倦怠感」などが現れます。黄疸が出たときには、胆汁の通り道である胆管がすでに詰まっている状態であることが多く、早期発見が難しいのが現実です。

治療は、手術によるがんの切除が基本ですが、腫瘍の位置や進行度によっては肝臓や膵臓の一部を同時に切除する大きな手術が必要になることもあります。進行がんでは化学療法や放射線治療を組み合わせた「集学的治療」が行われます。

「腹痛」「黄疸」が出たときに考えられること

胆道の病気では、痛みや黄疸などの症状が出た時点でかなり進行していることがあります。

腹痛の場合、胆石が一時的に胆のうの出口を塞いでいる可能性があります。脂っこい食事をとったあとに右上腹部が強く痛む、背中や肩甲骨のあたりまで痛みが広がる――こうした症状は、胆石発作の典型です。

黄疸は、胆汁の流れが止まり、血液中に「ビリルビン」という色素が増えることで起こります。皮膚や白目が黄色くなるほか、尿が濃く、便が白っぽくなるのも特徴です。
黄疸に発熱や悪寒が加わった場合は、「胆管炎」という感染症の可能性があり、緊急治療が必要になります。

こうした症状が出たときは、我慢せずにすぐに消化器内科または外科を受診してください。

早期発見と予防のポイント

胆のうや胆管の病気は、定期的な検診生活習慣の見直しでかなりの確率で予防・早期発見ができます。

・脂っこい食事を控え、野菜や果物を多くとる
・暴飲暴食や断食ダイエットを避ける
・適正体重を保ち、急激な減量をしない
・年に一度は腹部エコー検査を受ける

胆石やポリープが見つかっても、すぐに手術が必要なわけではありません。定期的な観察で経過を見ることで、無駄な治療を避けることができます。症状が出てからでは遅いこともあるため、「早めに見つける姿勢」が何よりも大切です。

胆道外科の第一人者・海野倫明教授の取り組み

東北大学 大学院医学系研究科 消化器外科学分野 教授・海野倫明氏は、日本の肝胆膵外科を牽引する名医として知られています。
東北大学医学部を卒業後、長年にわたって胆道がんや膵がんなどの難治性疾患に取り組み、「治せる胆道がん治療」を目指して研究と臨床を両立させています。

教授が率いるチームでは、術前化学療法腹腔鏡下手術の精密化など、体に優しい新しい治療法の確立を進めています。また、若手医師の育成にも力を注ぎ、全国の医療現場で活躍できる外科医を数多く輩出しています。
海野教授は、日本胆道学会理事長日本肝胆膵外科学会理事など多くの学会でリーダーとして活動しており、胆のう・胆管の最新治療研究を牽引する存在です。

まとめ

この記事のポイントは次の3つです。
・胆のう・胆管は「沈黙の臓器」であり、初期には症状が出にくい
・代表的な病気は『胆石症』『胆のうポリープ』『胆のうがん・胆管がん』
・「腹痛」や「黄疸」が出たら早めに受診、定期検診で早期発見を

胆のうや胆管の異常は、自覚症状がほとんどないため、気づかぬうちに進行してしまうのが怖いところです。
しかし、日頃の生活を整え、年に一度でも検診を受けておけば、命に関わる病気を未然に防ぐことができます。
「沈黙の臓器」の声を聞くには、自分からチェックする勇気が必要です。小さなサインを見逃さず、体を大切にしていきましょう。

(番組の内容と異なる場合があります)

参考・出典リンク

・東北大学大学院 医学系研究科 消化器外科学分野 公式サイト(教授紹介・研究概要)
https://www.surg.med.tohoku.ac.jp/surg1/class/p-professor.html

・東北大学 研究者総覧(海野倫明 教授 プロフィール)
https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/82613fcfc0a4c0645b09a996b2fbad0c.html

・ResearchMap(海野倫明 教授 業績一覧)
https://researchmap.jp/read0055228

・MSDマニュアル(胆石症・胆道疾患の基礎情報)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/liver-and-gallbladder-disorders/gallbladder-and-bile-duct-disorders/gallstones

・Mayo Clinic(胆石症・胆のうがんの症状・治療解説)
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gallstones/symptoms-causes/syc-20354214

・Cleveland Clinic(胆管閉塞・黄疸の原因と治療)
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/bile-duct-obstruction

・National Center for Biotechnology Information(胆のうポリープの臨床ガイド)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470211/

・JAMA Network(胆のうポリープ長期追跡研究)
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2765996

・Medscape(胆道がんの診断・治療指針)
https://emedicine.medscape.com/article/190364-overview

・日本胆道学会(胆道がんの基礎知識・統計データ)
https://www.jsbds.jp/

・日本肝胆膵外科学会(胆道系疾患・専門医制度)
https://www.jshbps.jp/

・NHK『きょうの健康』公式サイト(胆のう・胆管の病気 最新治療)
https://www.nhk.jp/p/kyounokenkou/


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