フクロウの首が驚くほど回る本当の理由は?知ればもっと面白くなる“体のしくみ”の話
フクロウが音もなく飛び、くるっと首を大きく回す姿には、不思議な魅力があります。普段なんとなく見ているこの動きには、実は『目の特徴』『骨の数』『血管の秘密』『夜の狩りの習性』と、いろいろな理由がかくれています。この記事では、その“本質”をわかりやすくまとめます。読んだあと、フクロウを見る目がガラッと変わります。
【ダーウィンが来た!】絶滅危惧種シマフクロウの野生復帰へ密着3年!人とフクロウの感動ドキュメント|2025年4月13日放送
目が動かないから、首で視界をカバーしている
まず知っておきたいのは、フクロウの“目の構造”です。フクロウの眼球は丸いボール型ではなく、筒のように細長い形をしており、眼窩(目の骨のくぼみ)にしっかり固定されています。
そのため、私たちのように眼球を左右に動かすことがほとんどできません。視線を変えるには、顔ごと向きを変える必要があります。
つまり、目が動かない=首を大きく動かす必要があるということです。
この不便さをカバーするために、フクロウは体の構造そのものを進化させ、首を大きく回せるようになっていきました。
頸椎が多くて柔軟。骨のつくりそのものが特別
次に注目したいのは、首の骨の数です。
人間は頸椎(けいつい)が7個ですが、フクロウは種類によって14個前後持っているといわれています。
単純に数が多いだけでなく、ひとつひとつの骨が非常に可動域を持ち、関節もなめらかに動きやすい構造です。
さらに、頸椎には動脈が通る穴がありますが、この穴が通常より大きく開いています。
この“穴の大きさ”が重要で、首をひねったときに血管が押しつぶされず、血流が保たれる仕組みになっています。
骨そのものが柔軟で、血管を守るための空間まで確保されている――この組み合わせが、驚異の270度回転を支えているのです。
首を回しても脳が無事な“血管の工夫”
首を大きく回すと、普通なら血管がねじれたり圧迫されたりして危険ですが、フクロウにはそれを避ける工夫が備わっています。
・動脈が通る穴が、血管よりもかなり大きい
・首の血管が複数のルートに枝分かれしていて、片方が押されても別の道から血が流れる
・血管内部に“余裕スペース”のようなふくらみがあり、回転中の血流低下を補ってくれる
これらの仕組みによって、激しく首を回しても脳への血流が途絶えず、安全に視界を確保できるわけです。
フクロウの首の回転は、血管・神経・骨がすべて連動した“生きた仕組みの結晶”ともいえるでしょう。
夜の狩りにぴったりの動き。音と光を最大限キャッチ
フクロウが首を大きく回す理由には、夜行性という生活習性も密接に関係しています。
暗い森の中では、光が少なく視界が不安定です。そのため、視線をすばやく切り替えて周囲を広く把握する必要があります。
さらにフクロウは“顔盤(かおばん)”と呼ばれる円形の羽根を持ち、これが音を集める皿のような役割を果たします。
耳は左右で高さが微妙に違う“ずれ耳”。
首を回すことで、
・音の方向をより正確に聞き分ける
・獲物の動きを正確につかむ
・視覚と聴覚の両方をベストな位置に向ける
という働きができるようになります。
この「視覚+聴覚」を最大限に活かす動きこそ、フクロウが首を回す大きな理由のひとつです。
フクロウは360度回らない
よく「フクロウは首が360度回る」と信じられていますが、実際には『約270度』が限界です。
背中側まで大きく回るため一見一周するように見えますが、完全な一回転にはなりません。
誤解されやすいポイントですが、逆にいえば“270度”という数字だけでも相当な驚異です。
観察がもっと面白くなる豆知識
フクロウが首をくるっと回す姿を見る時、「これは目が動かないぶん首で視界を確保しているんだな」と意識すると、生き物のしくみがぐっと身近に感じられます。
動物の行動には、必ず理由があります。
とくにフクロウは骨・血管・目・耳という複数の要素が巧みに組み合わさった“静かなハンター”。
知れば知るほど、その姿が一層魅力的に見えてきます。
ポイント
・フクロウは眼球を動かせないため、首を大きく回して視界を補っている
・頸椎が多く、動脈の通り道に余裕がある特別な構造を持っている
・血管の分岐やスペースによって、回転中でも血流が確保される
・夜の狩りに適した進化で、音と光の両方を最大限キャッチできる
放送後に追記します
この記事は放送前の情報をもとに構成しています。
2025年11月21日の番組放送後、番組内で紹介された映像や専門家の説明を反映し、内容をさらに詳しく追記します。
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