未来予測の“なぜ?”が分かる東京1000m級ビルの話
1997年の未来予測で語られた「2020年ごろ東京に1000m級超高層ビルが建つ」というワクワクするようなビジョン。ところが現実の2025年、東京で一番高いビルはAzabudai Hills Mori JP Towerの約325m。数字だけ比べても大きく離れていて、当時の予測とは違う未来になっています。でも、ただ外れたわけではなく、そこには都市計画・経済・技術・需要など複数の理由が重なっていることが見えてきます。この記事では、その背景をひとつずつ整理しながら「なぜ実現しなかったのか」をていねいに読み解いていきます。まだ放送前のため、番組を見たあとの内容補完は後日追記します。
1000m級ビルが語られた時代の空気
1990年代後半の日本は、バブル崩壊後とはいえ「未来都市への夢」が強く語られていた時期です。とくに都市開発の分野では、Sky City 1000のような巨大建築の構想が注目され、「東京都心に1000m級の超々高層ビルが建つ」と予測されることも珍しくありませんでした。技術の進歩と都市の拡大を前提にした明るい未来像が語られ、超高層ビルそのものが象徴的な存在だったのです。
実現のカギだった“技術面”の本当のところ
当時の構想では、1000m級ビルに必要な要素として
・高速で移動できるエレベーター
・超高層特有の風の強さと横揺れへの対策
・地震国の日本ならではの耐震・免震構造
・避難のための複数の動線
など多くの課題が挙げられていました。
しかし、専門家の間では「技術的には可能」という評価もありました。つまり、“技術がないから建てられない”という単純な理由ではなく、もっと別の問題が大きく立ちはだかっていたのです。
最大の壁だった“お金”と“採算性”
都市開発でいちばん避けて通れないのは、建てたあとにきちんと採算がとれるかどうかです。1000m級ともなると
・建設費が途方もない規模になる
・メンテナンスや管理費が高額
・高層階のテナント料をどこまで高くできるか
・そもそも入居需要があるか
といった問題が重なります。
海外の超高層ビル、たとえばサウジアラビアのJeddah Towerのように国家の象徴として建てられる場合と違い、日本では「ビジネスとして利益が出るか」が重要視されます。バブル崩壊後の東京で、これほど巨大な投資を行う判断ができる企業や組織は限られ、現実的な計画にはなりにくかったのです。
東京特有の“都市構造の事情”
東京は国際都市でありながら、世界の大都市と比べても独自の事情を抱えています。
・航空法による高さ制限
・土地所有者の細分化
・地盤や地下インフラの複雑さ
・地震リスクへの備え
これらが組み合わさることで、巨大ビルを建てる条件はさらに厳しくなります。
特に都心は土地が細かく所有されているため、巨大プロジェクトに必要な面積をまとめること自体が難しくなります。都市インフラが完成されている東京ならではの悩みとも言えます。
世界では実現へ向かう1000m超プロジェクト
一方で、海外では1000m級の建設が現実味を帯びています。中でもJeddah Towerは2028年ごろの完成を目指す巨大計画で、1000m超える高さが予想されています。
海外で動きやすい理由として
・土地と規制の緩さ
・国家プロジェクトとしての象徴性
・周辺都市の価値向上を優先する方針
・広大な国土を背景にした都市計画
が挙げられます。
日本とは条件が大きく違うため、同じ「1000m級ビル」でも実現しやすい環境が整っているのです。
1000m級が東京で語られなくなったわけ
2025年の今、東京では325m級の超高層ビルが次々誕生していますが、“1000m級ビルを建てる”という方向には向かっていません。それは、
・都市構造が成熟しきっている
・巨大投資のリターンが見込みにくい
・建物単体での象徴性より、街全体の価値を重視する開発へシフト
といった時代の流れがあります。
技術的に不可能ではないものの、東京の都市計画や経済のなかでは優先順位が高くない、これが今の答えだと言えるでしょう。
放送後の追記について
この記事は放送前の情報に基づいています。番組内で語られた詳細や専門家のコメント、具体的な事例などは、放送後に内容を確認して追記します。
まとめ
1997年に語られた「2020年ごろ東京に1000m級ビルが建つ」という未来像は現実には実現しませんでした。しかし、その背景を見ると、夢が単に外れたのではなく、日本の都市・経済・制度の中で“優先されなかった”ことが分かります。世界では1000m超プロジェクトが進んでおり、時代と都市の条件によって未来予測の実現度は大きく変わっていきます。東京で1000m級が語られた時代の空気と、今の都市の姿を比べると、都市開発の価値観がどれほど変化したかが見えてきます。
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