「労働時間は1日3時間になる」はどこまで現実に近づいたのか?
1930年にジョン・メイナード・ケインズが示した大胆な未来予測――『1日3時間労働』。それから95年が経ち、テクノロジーは飛躍的に発展し、生活は驚くほど便利になりました。しかし私たちの働く時間は、果たしてその未来像に近づいているのでしょうか。
今回の放送では、長谷川忍と影山優佳の進行により、「働くとは何か」「なぜ働き続けるのか」「短時間労働は訪れるのか」を、歴史・社会・文化・技術の視点から徹底的に見つめ直す内容でした。
日々の仕事に追われている読者にこそ、未来へのヒントが詰まった回でした。
NHK【クローズアップ現代】外国人労働者“争奪戦”の実態|人手不足に挑む自治体の本気策とは|2025年6月17日放送
ケインズが見た“未来の働き方”はどれほど実現した?
番組で最初に紹介されたのは、100年前にジョン・メイナード・ケインズが示した未来予測です。
彼は1930年、世界恐慌のさなかに「100年後には生活水準が今の4〜8倍になり、働く時間は1日3時間で十分になる」と述べました。背景には以下のポイントがあります。
・1769年にジェームズ・ワットが蒸気機関を改良し機械化が進んだ
・産業革命により生産性が急上昇
・資本が毎年2%ずつ蓄積されれば、100年後には7.5倍の豊かさになる試算
その予測に基づけば「必要な労働量は4分の1になり、1日3時間・週15時間の労働で生活に必要なものが得られる」という未来が描かれました。
実際、イギリスの平均労働時間は今や6時間程度まで減少し、生産性は大きく向上しています。しかしケインズが見落としたのは“人間の欲望”。豊かになればなるほど、私たちは「もっと便利に」「もっと豊かに」という欲求を抱き、労働は減らない方向へ向かいました。
日本の労働文化はなぜ長時間だったのか?歴史で読み解く
日本は明治時代、繊維工場が急成長する中で12時間交代制という過酷な働き方が広がりました。場合によっては『1日18時間』という驚くべき労働も存在したと言います。
戦後、「三種の神器」と呼ばれたテレビ・洗濯機・冷蔵庫が普及し、暮らしは豊かになりました。しかし高度経済成長の勢いもあって、労働時間はなかなか減りませんでした。
1973年の『オイルショック』では物価が急上昇し景気悪化、多くの工場が閉鎖される事態に。さらに1970年代以降、外食チェーンやコンビニエンスストアなど24時間社会を支える産業が増え、働く人の負担はむしろ増える傾向もありました。
とくに建設業は屋外作業が中心で、天候や工期の影響が大きく、労働時間削減が難しい典型例として紹介されました。
事務仕事が“効率化”されても労働時間が減らない理由
番組中盤では、事務職として働き続けたヤスミさんが登場し、日本の事務仕事のリアルが語られます。
・表計算ソフトの普及で集計作業は劇的に簡単になった
・ワープロやパソコンで手書き作業はほぼ不要になった
・プレゼン資料も美しく作れるようになった
しかし、効率化したはずの仕事はなぜ減らないのか?
その理由は“上司のこだわり”。資料がきれいに作れるようになった分、修正や追加が増え、一枚の資料に対して何度もつくり直しが発生。結果的に、便利になったのに労働時間が増えるという逆説的な現象が生まれているのです。
バブル崩壊・働き方改革…日本の労働時間はどう動いた?
1990年代、バブル崩壊により企業収益は急落。長時間残業が当然だった時代から、徐々に「無駄を削る」働き方に移行し始めました。
そして2019年、『働き方改革関連法』が施行。残業時間の上限規制が導入され、日本の労働時間は2010年代より確実に減少してきています。
最新データでは、日本の労働時間はOECD38か国中23位で、平均より短い位置にあります。
対照的な国がドイツで、労働時間は日本より短い1335時間ですが平均年収は日本の1.4倍。生産性の差が大きな要因として示されました。
また、訪日外国人が驚く“高品質な接客”も取り上げられ、丁寧すぎるサービスが労働量を押し上げている可能性が指摘されました。
海外との働き方の違いは“文化の差”が大きい
番組では、八代尚宏がパリの経済協力開発機構(OECD)で働いていた際の体験談が語られ、視聴者の理解が深まりました。
フランスでは
・自分の担当業務は明確
・他人の仕事に口を出さない
・頼まれた仕事でも「できない」と断るのは普通
一方で日本では
・担当分野が曖昧
・“助け合い文化”で仕事が横に広がりがち
・結果として労働時間が伸びやすい
こうした文化的背景が労働時間の長さを左右しているという視点はとても印象的でした。
若い世代は“働き方価値観”が大きく変化している
データによると、2000年と2023年の日本人男性の労働時間を比較すると、20代・30代を中心に大幅に減少していました。
これは、働き方への価値観が確実に変化していることを示しています。
建設業界では
・現場を本社から遠隔で確認
・タワークレーンを本社から遠隔操作
といった最新の効率化が紹介され、長時間労働が当たり前だった業界にも改革が進んでいる様子が鮮明でした。
AIが仕事を奪うのか?という論点では、医療・福祉・介護のような“人の手が不可欠な仕事”は残り続けると語られ、視聴者に安心感を与える内容でした。
“短時間だけ働く”という新しい働き方が人気に
番組の終盤では、子育て世代やシニア世代を中心に『短時間労働』や『スポットワーク』が広がっている現状が紹介されました。
・働きたい時間だけ働く
・短時間でスキルを活かす
・時間を選べる自由が評価される
という新しい働き方が、すでに生活の一部になりつつあります。
働き方は一方向ではなく、多様化へ。
「長く働くのが良い」から、「その人に合った時間で働く」へと変化していることが、データと共に示されました。
1日3時間労働はやってくるのか?未来への答え
番組の結論はとても現実的でした。
・短時間労働を全員が望んでいるわけではない
・しかし長期的に見れば、少しずつ“3時間労働”に近づいている
技術の進化だけでなく、価値観・文化・働き方の仕組みがゆっくりと重なって未来を形づくる。その変化の途中に、今の私たちは立っているのだと感じられました。
労働時間を減らすことだけが目的ではなく、“より良い働き方とは何か”を考える回でもありました。自分の働き方や生活のバランスを見直すヒントになる内容でした。
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