がんが肝臓に転移しても、道は残っている
このページでは『きょうの健康(2025年12月17日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
「肝臓に転移した」と聞いた瞬間、多くの人が治療の限界を想像してしまいます。しかし今、転移性肝がんの治療は大きく変わりつつあります。薬だけ、手術だけではなく、その両方を組み合わせることで、予後を伸ばす可能性が見えてきました。
転移性肝がんとは何か 肝臓に集まりやすい理由
『転移性肝がん』は、肝臓で最初にできたがんではありません。大腸がんや胃がんなど、ほかの臓器で発生したがん細胞が血液の流れに乗り、肝臓にたどり着いて増えた状態を指します。肝臓は全身の血液が集まる臓器で、栄養や老廃物を処理する役割を担っています。その構造ゆえに、がん細胞も集まりやすく、特に消化器系のがんでは肝転移が起こりやすいとされています。ここで重要なのは、肝臓にできたがんでも「元のがんの性質」を持ち続けている点です。治療は肝臓だけを見るのではなく、原発がんの特徴も踏まえて考えられます。
ステージ4と診断される理由 なぜ難しいとされてきたのか
がんが原発の臓器を超えて、肝臓のような別の臓器に転移した場合、多くは『ステージ4』に分類されます。これはがんが体の一部にとどまらず、全身の病気として広がっていることを意味します。これまで転移性肝がんが難しいとされてきた理由は、肝臓に複数の転移ができやすいこと、肝臓の機能を守りながら治療する必要があること、そして一度に完全に取り切れないケースが多かったことにあります。そのため「延命が中心」と考えられてきた時代が長く続きました。
進歩する薬物療法 小さくしてから次を考える時代へ
近年、転移性肝がんの治療を大きく変えているのが『薬物療法』です。抗がん剤の組み合わせや分子標的薬の登場により、がんの勢いを抑えたり、転移巣を縮小させたりできるケースが増えています。特に大腸がん由来の肝転移では、最初に薬でがんを小さくし、その後に手術を目指す流れが現実的な選択肢になっています。薬は「手術ができない人のため」だけでなく、「手術につなげるため」の重要な役割を担うようになっています。
手術による肝切除 薬と組み合わせる意味
肝臓の一部を切除する『肝切除』は、条件が合えば根治を目指せる治療です。特に大腸がんからの肝転移では、切除できた人の長期生存が報告されています。ただし、すべての人が最初から手術できるわけではありません。転移が多い場合や広がりが大きい場合には、まず薬物療法で数を減らし、切除できる状態に近づけます。肝臓をどれだけ残せるか、機能を保てるかを見極めながら進める治療は、専門的な判断が欠かせません。
治療の適応をどう考えるか セカンドオピニオンという選択
転移性肝がんの治療方針は一人ひとり異なります。肝臓の状態、転移の数、原発がんの性質、体力など、考える材料は多くあります。そのため番組では、肝臓外科による『セカンドオピニオン』の重要性も示されます。「手術は無理」と言われた場合でも、別の専門家の視点で可能性が見えることがあります。複数の選択肢を知ること自体が、治療の一部になりつつあります。
専門家が伝えたいこと あきらめない治療の現在地
今回の『きょうの健康』で講師を務めるのは、大阪公立大学 肝胆膵外科教授の 石沢武彰 先生です。番組全体を通して伝えられるのは、「転移がある=終わり」ではないという現実です。薬物療法と手術を組み合わせる集学的治療により、予後を延ばす道が確かに広がっています。短い放送時間ですが、今どこまでできるのか、誰に相談すべきか、そのヒントが凝縮されています。
Eテレ【きょうの健康】肝臓がん 早期発見・徹底治療「手術や薬物療法の効果とは」再発しやすい理由と最新治療2025年12月16日
セカンドオピニオンを受ける前に、ここだけは準備しておきたい資料

治療の選択肢を広げるためにセカンドオピニオンを考えるとき、事前にどんな資料をそろえておくかで、得られる情報の深さが大きく変わります。これは医師の腕の差ではなく、判断に使える材料が十分かどうかの違いです。ここでは、実際の医療現場で必要とされる資料を、準備の流れがイメージしやすいように整理して紹介します。
診断の根拠が分かる資料
まず欠かせないのが、現在の診断内容が分かる資料です。主治医から発行される診療情報提供書(紹介状)には、病名や進行状況、これまでの経過が簡潔にまとめられています。これに加えて、血液検査の結果や腫瘍マーカーの数値、CTやMRIなどの画像データが重要になります。画像は紙だけでなく、CDなどのデータ形式で求められることが多く、実際の画像を見て判断することで、治療の可能性がより具体的に検討されます。
これまでの治療が分かる資料
次に大切なのが、これまでに受けた治療の内容が分かる資料です。手術を受けている場合は、その手術名や時期、切除した範囲が分かる記録が必要になります。抗がん剤治療や薬物療法を行っている場合は、使用した薬の名前、治療期間、副作用の有無などが分かる一覧があると判断がしやすくなります。治療歴は「いつ・何を・どれくらい行ったか」が分かることがポイントです。
判断を助ける補足資料
余裕があれば、病理診断の結果や病理標本に関する情報も役立ちます。がんの性質を詳しく見るために、組織の診断結果が重要になるケースがあるからです。また、現在服用している薬の一覧や、持病に関する情報もまとめておくと、治療の安全性を考える材料になります。これらは細かいようでいて、治療方針を決める場面では大きな意味を持ちます。
セカンドオピニオンは、ただ別の意見を聞く場ではありません。正確な資料をそろえることで、治療の可能性を正しく見極める場になります。準備は少し手間がかかりますが、その一つ一つが、次の一歩を考えるための大切な土台になります。
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