静かな島が語りはじめる、台湾の歩みと「いま」
このページでは『あさイチ 特別編 鈴木奈穂子が見た台湾の歩みといま(2025年12月30日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
この特別編は、台湾という島がたどってきた長い歴史と、そこで生きる人々の現在を重ね合わせながら見つめていく紀行ドキュメンタリーです。鈴木奈穂子アナウンサーが各地を歩き、言葉よりも風景や営みから伝わってくる『台湾の価値観』『台湾の暮らし』『台湾の文化』を拾い上げていきます。
歴史の積み重なりから見える台湾の歩み
台湾の歴史は、一つの時代だけでは決して語りきれません。
この島には、まず先住民族が自然と共に暮らしてきた長い時間があります。山や海、石や言葉と深く結びついた生活は、今も台湾文化の根っこに残っています。
その後、台湾は外の世界と強く結びついていきます。
清の統治の時代には、中国大陸との関係が深まり、農業や都市の形が整えられていきました。人の移動が増え、社会の基盤が大きく変わった時期でもあります。
さらに1895年から始まる日本統治時代は、台湾の風景を大きく変えました。鉄道、道路、学校、百貨店など、今も使われている建物や制度の多くがこの時代につくられました。一方で、戦争へと向かう時代の中で、多くの人が不安や葛藤を抱えながら生きていたことも忘れられません。
戦後の激動を経て、台湾社会は新しい道を歩み始めます。政治や価値観が揺れ動く中でも、人々は日々の暮らしを守り、少しずつ「自分たちの社会」を形づくってきました。
番組が大切にしているのは、こうした歴史を年表のように並べて説明しないことです。
今も残る建物、受け継がれる仕事、変わらず続く暮らしを通して、歴史が現在とつながっていることを伝えていきます。
過去は、決して終わった出来事ではありません。
歴史は今の台湾を形づくる土台として、静かに息づいている。
その積み重なりが、現在の台湾社会の価値観や多様性を支えていることが、自然と伝わってきます。
日本統治時代から続く技術と記憶を守る人々
日本統治時代に台湾へ伝えられた技術の中には、時代が変わっても今なお守り続けられてきたものがあります。
それらは博物館の展示品ではなく、現在も人の手によって使われ、生活の中で息づいています。
番組で紹介されるのは、日本統治時代から続く製法や道具を今も変えずに使い続ける職人の姿です。
素材の選び方、道具の手入れ、作業の順番。どれも効率よりも積み重ねを大切にしてきた知恵であり、長い年月をかけて磨かれてきました。
そこにあるのは、単なる昔への懐古ではありません。
『技術を受け継ぐこと=生き方を受け継ぐこと』という思いが、日々の仕事の中に込められています。
手を動かし続けることで、先人の時間や考え方を今につなげているのです。
また番組では、太平洋戦争の記憶を今に刻む百貨店の存在も描かれます。
買い物客でにぎわう華やかな空間の中に、戦時中の痕跡や歴史が静かに残されています。
普段の生活の場として使われているからこそ、日常と歴史が重なり合う瞬間が浮かび上がります。
その光景からは、便利さや豊かさの裏側にある歴史の重みが、自然と伝わってきます。
先住民族パイワン族に受け継がれる暮らしと価値観
先住民族の一つであるパイワン族の家族との出会いも、この特別編の大きな見どころです。
台湾の山あいに暮らす彼らの生活には、長い時間をかけて受け継がれてきた知恵と価値観があります。
番組で映し出されるのは、石造りの家で暮らす家族の日常です。
自然の地形を生かした住まいは、見た目の美しさだけでなく、暑さや雨から身を守る工夫が詰まっています。家そのものが、土地と共に生きてきた歴史を語っています。
家族のつながりも、パイワン族の暮らしを支える大切な軸です。
親から子へ、年長者から若い世代へと、言葉や作法、考え方が日常の中で自然に伝えられていきます。特別な場で教えるのではなく、暮らしそのものが学びの場になっています。
また、独自の言語や習慣を守り続けていることも印象的です。
言葉には、その民族が大切にしてきた自然観や人との関わり方が込められています。失われれば二度と戻らないものだからこそ、家族の中で使い続けることが大きな意味を持っています。
便利さや効率だけを追い求めない暮らしの中に、
『何を大切にして生きるのか』という問いが、自然と浮かび上がってきます。
それは過去にとどまる価値観ではなく、今を生きるための選択として、静かに続けられている暮らしなのです。
生理・ジェンダーをめぐる台湾社会の新しい学び
台湾社会では、『生理』や『ジェンダー』といったテーマを、隠したり避けたりするものではなく、学び、共有するものとして捉える動きが広がっています。
個人の問題として押し込めるのではなく、社会全体で理解を深めていこうとする姿勢が、少しずつ形になっています。
番組で触れられる月経博物館は、その象徴的な存在です。
ここでは、生理を特別な出来事として扱うのではなく、誰にとっても起こりうる自然な体の働きとして紹介しています。
展示内容は、難しい専門知識を並べるのではなく、
体の仕組み、生理の変化、日常生活との関わりなどを、目で見て理解できる工夫がされています。
子どもから大人まで、立場や性別に関係なく学べる空間になっています。
こうした展示を通して伝えられるのは、
生理は個人だけが抱える問題ではないという考え方です。
体調や気持ちの変化を知ることは、周囲の理解につながり、支え合う社会の土台になります。
月経博物館は、
生理が日常の一部であり、社会全体で向き合うテーマであることを、静かに示しています。
台湾社会が大切にしているのは、声を上げることよりも、正しく知り、自然に受け止めることなのだと伝わってきます。
教育と公共空間に広がる多様性への取り組み
台湾の小学校では、ジェンダー平等教育が特別な授業ではなく、日常の学びの一部として行われています。
決まったイベントのために学ぶのではなく、普段の授業や学校生活の中で、少しずつ考える機会が用意されています。
子どもたちは、
「男だから」「女だから」と決めつけないこと、
人にはそれぞれ違った感じ方や考え方があることを、自然な流れで学んでいきます。
こうした学びを早い段階から重ねることで、
違いを特別視するのではなく、当たり前のこととして受け止める力が育まれていきます。
さらに番組では、オールジェンダートイレの導入にも触れられます。
これは考え方だけを示すものではなく、公共空間そのものを変えていく実践の一例です。
性別に関係なく使える設計や、プライバシーへの配慮が行き届いた空間は、
誰かを区別するためではなく、誰もが安心して使えることを目的としています。
こうした取り組みは、
「配慮が必要な人のため」ではなく、
社会全体にとって使いやすい環境をつくることとして進められています。
教育で育まれた価値観が、
学校の外にある公共空間へと広がっていく。
その積み重ねによって、
多様性を尊重することが特別ではない社会が、静かに形づくられていることが伝わってきます。
まとめ
『あさイチ 特別編 鈴木奈穂子が見た台湾の歩みといま』は、台湾の歴史と台湾の現在を切り離さず、人の暮らしを通して描く番組です。技術を守る職人、記憶を刻む建物、先住民族の家族、教育現場や公共空間の変化。その一つひとつが、『台湾とはどんな社会なのか』を静かに語っています。
まだ放送前のため、具体的な会話や細部については、放送後に内容を反映して書き直す予定です。
NHK【あさイチ】鈴木奈穂子が出会った台湾の素顔|パイワン族の伝統×スイカウーロン茶ブーム×共働き支援のリアル|2025年11月12日
日本と台湾で「歴史の伝え方」がどう違うのかを感じた点

今回の特別編を通して強く感じたのは、日本と台湾では歴史の伝え方そのものに考え方の違いがあるという点です。台湾では、歴史が教科書の中だけに閉じたものではなく、今の暮らしと地続きのものとして扱われている印象を受けました。建物や仕事、教育の現場に、過去の出来事が自然に重なり合って存在しています。
台湾では「自分たちの場所の歴史」として語られている
台湾では、歴史が台湾という島で生きてきた人々の物語として語られています。清の統治、日本統治時代、戦後の変化といった出来事も、良い・悪いを単純に分けるのではなく、生活の中でどう受け止められてきたのかという視点が大切にされています。歴史は遠い過去ではなく、今も続く時間の一部として扱われています。
建物や日常がそのまま「語り部」になっている
印象的なのは、建物や街並みが歴史を説明する役割を担っていることです。百貨店や学校、街の構造そのものが、時代の積み重なりを静かに伝えています。説明板や強いメッセージがなくても、日常の中で自然と歴史に触れることができます。歴史を「学ぶもの」ではなく、「そこにあるもの」として感じさせる伝え方です。
日本では「整理して教える歴史」が中心になりやすい
一方、日本では歴史は整理された知識として教えられることが多いと感じます。時代ごとに区切り、出来事を順番に理解する形が中心です。その分、歴史と今の生活との距離が生まれやすく、過去の出来事が「終わった話」として受け止められる場面も少なくありません。台湾のように、日常の中で自然に歴史と向き合う機会は多くないのが現状です。
台湾の伝え方からは、歴史は評価するものではなく、抱えながら生きるものだという姿勢が伝わってきます。過去を切り離さず、今を生きるための土台として受け止めている点が、日本との大きな違いとして心に残りました。
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