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【ETV特集】グッドモーニング オハイオ|ラストベルトの町で広がる絶望死とフェンタニル、トランプ支持の背景 2026年1月10日

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失われた町の朝に、何が起きているのか

アメリカ中西部、かつて製鉄業で栄えたオハイオ州の町。工場の灯りが消え、仕事と誇りを同時に失ったこの場所で、いま静かに、しかし確実に広がっているものがあります。それが、合成麻薬フェンタニルによる死、そして「絶望死」と呼ばれる現実です。番組は、統計や遠い出来事ではなく、名前のある人の死として、その重さを描き出します。
一方で、この町はトランプ大統領を熱狂的に支持した土地でもあります。「偉大なアメリカの復活」という言葉は、なぜここで強く響いたのか。反エリート、移民排斥、その感情の裏側にあるものは何なのか。
元軍人として戦地に立った人、働き者の父を失いホームレスとなった若者。番組は彼ら一人ひとりの人生を通して、変わりゆくアメリカの姿と、消えない喪失の痛みに静かに迫っていきます。

グッドモーニング オハイオが見つめる「ラストベルト」と町のいま

番組が舞台に選んだのは、アメリカ中西部に広がるラストベルトの一角、オハイオ州です。かつて製鉄業で栄え、働く場所があり、家族を支える収入があった町は、工場の閉鎖とともに姿を変えていきました。雇用が減り、若者が去り、残された人たちは「ここで生き続ける」ことそのものに重さを感じるようになります。
番組は、この町を特別な場所として描くのではなく、アメリカ各地に共通する現実として示します。産業の衰退は単なる経済の話ではなく、生活のリズム、人とのつながり、自分の役割を少しずつ失わせてきました。その積み重なった時間が、現在の町の空気を形づくっています。

合成麻薬フェンタニルが入り込んだ背景と「薬物死」の現実

製鉄業が衰退した町に入り込んだのが、合成麻薬フェンタニルでした。番組では、元ディーラーの証言を通して、薬が広がっていった現実が語られます。そこでは特別な犯罪の世界ではなく、日常の延長として薬物が存在していた様子が示されています。
フェンタニルによる薬物過量摂取死は、アメリカ全体で深刻な問題となり、オハイオ州も例外ではありません。番組が描くのは、数字ではなく、「あの人が死んだ」「この人もいなくなった」と、名前を失った死が町の記憶として重なっていく姿です。薬物は、衰退した町の空白に入り込み、人の命を静かに奪っていきました。

「絶望死」と呼ばれる死が増えてきた理由

番組で使われる絶望死という言葉は、薬物死、自殺、アルコール関連死などを含む概念として知られています。特徴は、突然の事故ではなく、長い時間をかけて追い込まれた末に起きる死であることです。
オハイオ州の町では、仕事を失うことが収入の問題だけでなく、自分の存在価値を失う感覚につながってきました。将来の見通しが立たず、努力が報われないという感覚が続く中で、心と体がすり減っていく。その結果として、薬物やアルコールに頼り、命を落とす人が増えていった現実が、番組では背景として示されています。

なぜトランプ支持が強く広がったのか

オハイオ州は、トランプ大統領を強く支持した州の一つです。番組では、反エリートや移民排斥といった言葉が、なぜこの町で力を持ったのかを問いかけます。
「偉大なアメリカの復活」というスローガンは、取り残されたと感じてきた人々にとって、自分たちの苦しみが認められたように響きました。番組は、支持を善悪で切り分けるのではなく、産業の衰退と喪失の積み重ねの中で、その言葉が受け取られていった過程を描きます。政治的熱狂の背後には、長年続いた不満と孤立がありました。

元軍人とホームレスの若者が示すもの

番組に登場するのは、アフガニスタンで戦った元軍人と、働き者の父を亡くしホームレスとなった若者です。彼らは象徴的な存在ではなく、実在の人生を生きてきた人として描かれます。
戦争から戻った元軍人は、社会に戻る過程で孤立を深めていきました。父を失った若者は、家族と生活の基盤を同時に失います。番組は、この二人を通して、国家の政策や経済の変化が、個人の人生にどのような形で影を落としてきたのかを示します。
人々の傷みは特別なものではなく、同じ国の中で、同じ時代に生まれた現実であることが、静かに伝えられていきます。

まとめ

『ETV特集 グッドモーニング オハイオ』は、製鉄業の衰退によって姿を変えたオハイオ州の町を通して、ラストベルトが抱える現実を描き出します。そこでは、フェンタニルによる薬物死や絶望死が、特別な出来事ではなく日常の延長として存在していました。トランプ支持の熱狂も、怒りや排除の感情だけでなく、長年積み重なった喪失と孤立の中から生まれたものとして示されます。元軍人やホームレスの若者の人生は、変わりゆくアメリカが抱える痛みを、静かに、しかし確かな形で伝えています。

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筆者からの補足として紹介します

しげゆき
しげゆき

ここで少し補足として、「ラストベルト」という言葉がどのように生まれ、日本の地方衰退とどんな共通点を持っているのかを整理しておきます。番組で描かれたオハイオ州の姿は、決してアメリカだけの特別な話ではありません。産業が町を支え、やがてその産業が去っていったあとに何が残ったのか。その流れは、日本の地方がたどってきた道とも重なっています。

ラストベルトという言葉が生まれた背景

ラストベルトという言葉は、もともと「製造業地帯」「鉄鋼地帯」と呼ばれていた地域が、1970年代以降に急速に衰退していく中で使われるようになりました。アメリカ中西部から北東部にかけて広がるこの地域では、鉄鋼や自動車産業が町の中心であり、多くの人が同じ工場で働き、同じ時間を共有してきました。
しかし国際競争の激化や技術の変化によって工場が閉鎖され、雇用が失われていきます。動かなくなった設備が錆びていく様子から、「錆びた地帯」という意味の言葉が定着しました。これは単なる景色の変化ではなく、仕事・誇り・役割を同時に失っていく過程を表す言葉でもあります。

産業の衰退が町にもたらした変化

工場が止まると、給料だけでなく生活のリズムも失われます。商店が閉まり、人が減り、若い世代は町を離れていきました。ラストベルトでは、こうした変化が何十年もかけて積み重なってきました。
番組で描かれるオハイオ州の町も、かつては働く場所があり、家族を養い、将来を思い描ける土地でした。ところが産業の衰退によって、「ここに残る理由」が少しずつ消えていきます。この長い喪失の時間こそが、現在の孤立や不安の土台になっています。

日本の地方衰退との共通点

この構造は、日本の地方とも重なります。炭鉱の閉山や工場移転によって仕事が減り、人口が流出し、高齢化が進む地域は日本各地にあります。そこでも、問題は経済だけではありません。働く場を失うことは、自分が社会に必要とされているという感覚を失うことにつながってきました。
ラストベルトも日本の地方も、成長の時代に国を支えた場所であり、その役割が終わったあとに十分な受け皿が用意されなかった点で共通しています。番組が描くオハイオの現実は、遠い国の出来事ではなく、日本の地方が抱える課題を映し出す鏡でもあります。


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