川崎大師に息づく“まちの志”
このページでは『小さな旅 選「この街の志を 〜神奈川県 川崎大師界わい〜」(2025年3月2日)』の内容を分かりやすくまとめています。
京浜工業地帯のすぐそばにありながら、温かな下町の空気が残る【川崎大師】界わい。参道で受け継がれる【久寿餅】の技、喫茶店マスターとしても【漁師】としても生きる男の姿、そして地域を声で結ぶ【FM大師】の挑戦。
静かな日常の奥から立ち上がる“志”が、ひとつの街を力強く形づくっていきます。
川崎大師界わいという特別な場所
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京浜工業地帯のすぐそばにありながら、川崎大師界わいには昔ながらの下町の時間が流れています。巨大な産業の影にのみ込まれることなく、人の顔が見える距離で商いと暮らしが続いてきました。旅の出発点となる川崎大師 平間寺は、平安時代に開かれた由緒ある寺院で、厄除けの大師さまとして今も多くの人が足を運びます。参拝を終え参道を歩くと、そこには観光地というより「生活の道」としての門前町があり、この街が積み重ねてきた時間の厚みを感じさせます。
参道名物・久寿餅に込められた職人の覚悟
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川崎大師の参道名物として知られるのが久寿餅です。番組で紹介された職人親子が向き合っているのは、流行でも効率でもなく「理想の食感」です。久寿餅は一般的な葛餅とは異なり、小麦でんぷんを長期間発酵させて作られます。13か月以上寝かせたでんぷんを見極め、湯を入れてかき混ぜる「種かき」の工程で、その日の湿度や温度まで感覚で調整します。参道の老舗として知られる住吉などでは、この工程が今も人の手で行われています。親から子へ受け継がれるのは技術だけでなく、味を守り続ける姿勢そのものです。
喫茶店と漁師を両立する高澤さん夫妻の生き方
住宅街の一角で57年続く喫茶店には、もう一つの顔があります。マスターの高澤五郎さんは、店を切り盛りしながら地域でただ一人の漁師でもあります。自ら船を出し、川崎の海で獲った魚を自分の店で料理する。その舞台となっているのが、川崎区川中島にある喫茶りんでんです。コーヒーと定食が並ぶ店内に、釣り物の魚料理が自然に溶け込む光景は、この街ならではのものです。仕事を分けず、暮らしとしてまとめて引き受ける姿に、言葉にしない強い志がにじみ出ています。
声で街をつなぐコミュニティFMの挑戦
番組後半で描かれるのが、地域密着のラジオ局FM大師です。スタジオでは、運営に関わる須山さん夫妻や新人パーソナリティーが、住民同士のつながりを生み出そうと日々放送に向き合っています。FM大師は、ニュースやイベント情報だけでなく、地元の子どもたちの声や日常の話題をそのまま電波に乗せます。遠くへ届けるためではなく、近くを結び直すための放送。その積み重ねが、街の関係性を静かに支えています。
この街の志が静かに続いていく理由
川崎大師界わいで描かれる志は、声高に語られる理想ではありません。久寿餅を仕込み続ける手、海に出る背中、スタジオでマイクに向かう姿。その一つ一つが、この街を形づくっています。工業地帯のそばという立地だからこそ、生活の輪郭がはっきりと残り、人の営みが互いに支え合ってきました。番組が映し出したのは、特別な人ではなく、特別な続け方を選んだ人たちの姿です。そこにこそ、この街が持つ揺るがない魅力があります。
NHK【ブラタモリ】川崎大師と鉄道▼なぜ川崎大師は人気なのか、参詣路線と工業地帯が作った街の記憶|2025年12月20日
川崎大師参道が「観光地」と「生活の場」を両立してきた理由

川崎大師参道は、全国から参拝者が訪れる有名な場所でありながら、地元の人たちの生活の場としても長く使われてきました。その理由は、観光向けにつくられた場所ではなく、暮らしの延長線上に信仰と商いがあったことにあります。参道は「見せるための通り」ではなく、「使われ続けてきた道」でした。この積み重ねが、今も観光と日常を自然に結びつけています。
寺を支えた人々の暮らしが町の形を決めた
川崎大師 平間寺は、漁師が弘法大師像を見つけたという伝承を起点に広まりました。最初から大きな権力や計画で整えられた町ではなく、寺を中心に人が集まり、住み、商いを始めたことで参道が育っていきました。参道沿いの店は、参拝者のためだけでなく、近所の人の普段の買い物や食事を支える存在でもありました。そのため、観光客が増えても、生活の機能が失われることはありませんでした。
商いが「特別」ではなく「日常」として続いてきた
参道の和菓子屋や飲食店は、特別なイベントの時だけ動く店ではありません。毎日店を開け、地元の人にも同じように商品を届けてきました。久寿餅の店も、参拝者向けの名物でありながら、町の味として親しまれてきました。観光用に作られた商品ではなく、日々の仕事として続けてきたからこそ、参道は「非日常」になりきらず、暮らしの匂いを残しています。
観光客と住民が同じ道を歩き続けている
川崎大師参道では、観光客と地元の人が同じ道を歩き、同じ店に立ち寄ります。通勤や買い物の途中で参道を通る人と、参拝に訪れた人が自然に交わる風景が今も続いています。通りを分けず、役割を切り離さなかったことが、観光地化が進んでも生活の場としての機能を守ってきました。この重なりこそが、川崎大師参道が持つ一番の強さです。
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