日本造船が世界に挑んだ逆襲の一隻
このページでは『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜 世界最大コンテナ船〜日本造船の逆襲〜(2026年1月17日)』の内容を分かりやすくまとめています。
かつて世界をリードした日本の造船業は、中国・韓国の台頭により、静かに追い込まれていきました。そんな中、常識を覆す挑戦が始まります。
国内最大手の今治造船と、ライバルだったジャパンマリンユナイテッドが手を組み、世界最大級のコンテナ船に挑む決断を下しました。
24000個のコンテナを積み、環境性能でも世界水準を超える一隻。その裏側には、誇りを懸けた技術者たちの執念と、日本造船の未来を取り戻そうとする静かな闘志がありました。
世界最大コンテナ船誕生 日本造船の逆襲
2023年、日本の造船業界は世界の海運関係者を一気にざわつかせる決断を実行しました。完成したのは、コンテナをおよそ24000個も積載できる世界最大コンテナ船です。全長はサッカーコート3面分を超え、幅も巨大ビル並みという、これまでの常識をはるかに超えたスケールを誇ります。その姿はまさに「海に浮かぶ超高層建築」と呼ぶにふさわしい存在です。
この前代未聞の船を生み出したのは、国内最大手の今治造船と、業界2位のジャパンマリンユナイテッドでした。かつて世界を席巻した日本造船は、中国・韓国の急成長に押され、世界シェアを失い続けてきました。「日本はもう造船で世界一には戻れない」。そんな空気が業界全体を覆っていたのです。
しかし、この巨大プロジェクトは、その流れを力強く断ち切ります。番組では、この船が単なる“大きな船”ではなく、日本造船が再び世界の主役に返り咲くための逆襲の象徴として描かれます。超大型船でも安全性を保つ構造設計、24000個のコンテナを積んでも沈まない浮力と強度の計算、世界各地の港で使える港湾設備との互換性、そして厳しさを増す国際的な環境規制への対応。そのすべてを同時に成立させた総合力こそが、この船の本質です。
この一隻の完成は、日本が今なお世界トップクラスの技術力と現場力を持っていることを、誰の目にもはっきり示しました。世界最大コンテナ船は、日本造船の名誉と未来を背負い、世界に向けて放たれた決定的な一手だったのです。
今治造船×ジャパンマリンユナイテッド “犬猿の仲”の共闘
かつて激しく競い合ってきた今治造船とジャパンマリンユナイテッドが、なぜ同じ船をつくる決断に至ったのか。ここは番組の中でも、最も象徴的で緊張感に満ちた場面です。
両社は長年、同じ市場で受注を争ってきた完全なライバルでした。顧客の奪い合い、価格競争、技術力や人材の比較。現場では「同じ船台に立つことはない」とさえ言われる関係でした。しかし、中国・韓国の巨大造船企業が国をあげた後押しを受け、低価格かつ大量の受注で世界シェアを一気に伸ばす中、日本造船全体が静かに追い詰められていきます。
このまま別々に戦い続ければ、日本の造船は世界の主役から完全に退く。そうした強烈な危機感が、両社の判断を変えました。プライドよりも未来を選び、今治造船とジャパンマリンユナイテッドは協業という道に踏み出します。
現場では、会社文化も設計思想も違う技術者同士が向き合うことになります。図面の考え方、品質基準、溶接の細かなルールに至るまで、すべてを一からすり合わせる作業が続きました。簡単にまとまるはずはなく、衝突は何度も起こります。それでも、目指すゴールはただ一つ、世界最大コンテナ船を完成させることでした。
番組では、会議室での激しい議論や、「ここだけは譲れない」と食い下がる技術者たちの姿が丁寧に描かれます。意見をぶつけ合い、最後は最良の答えを選ぶ。その積み重ねが、世界トップレベルの船を生み出しました。ライバル同士の本気の共闘は、日本のものづくりが新しい段階に入ったことを、はっきりと示しています。
24000個を積む超巨大船を支えた最新テクノロジー
24000個ものコンテナを積載できる世界最大コンテナ船を成立させるには、単なる巨大化では到底追いつきません。番組では、この船がどのように最先端技術の結晶として完成したのか、その核心に踏み込みます。
まず鍵となるのが、高い燃費性能です。国際海運ではCO2排出削減が絶対条件となり、大型船にも厳格な環境規制が課されています。そこで設計チームは、船体の抵抗を極限まで減らすため何百回ものコンピューターシミュレーションを実施しました。船首の角度、船底の曲線、わずかな膨らみや凹みで燃費が変わるため、最も効率が高いラインを追求し続けました。こうして生み出された船体形状は、「少ない燃料でより遠くへ」を可能にする、精密な科学そのものです。
推進システムには最新の大型主機関が搭載され、さらに将来の代替燃料に対応できる柔軟な設計が取り入れられています。排ガスを浄化する装置も組み合わせ、パワーと環境性能を両立させる仕組みが緻密に組み込まれています。
そして、この船づくりで最も難易度が高いのが「構造」です。24000個のコンテナ重量がかかる船体は、常にねじれやたわみにさらされます。甲板や側壁を単純に強くすれば重くなりすぎ、「積める量」が減ってしまう。そこで構造設計チームは、強度・重量・安全性を完璧に両立させるため、細部の骨組みまで徹底的に計算し直します。世界の荒海を航行しながらも船体を保ち続ける“理想のバランス”を形にしたのです。
番組では、設計室と建造現場を行き来しながら、数ミリ単位の誤差も許さず作業を続ける技術者たちの姿が描かれます。デジタルで緻密に積み上げた計算と、最終的に仕上げを担う職人の勘と技術。この2つが融合して初めて、超巨大コンテナ船は現実のものとなりました。
中国・韓国に奪われた「造船王国日本」の転落と焦り
かつて日本は、世界の海運をけん引する造船王国でした。高度経済成長期から1990年代にかけて、巨大タンカーからコンテナ船まで数多くの大型船を受注し、技術力・品質ともに世界トップの座を守り続けていました。しかし2000年代に入ると、その黄金時代は急速に崩れ始めます。
中国・韓国が国の強力な支援を背景に、巨大造船所を次々と建設。低コスト・大量生産を武器に一気に世界シェアを奪い取っていきました。価格競争で不利になった日本の造船所は受注を失い、採算悪化から統合・閉鎖に追い込まれるケースも増えていきます。人材流出、設備投資の遅れ、円高などの逆風も重なり、「日本の造船は終わった」という声がささやかれるほど追い詰められていきました。
番組では、その現実が率直に語られます。グラフが無情に右肩下がりを描く中、現場の技術者たちは、自分たちがいつの間にか世界の主役から転げ落ちていた事実に、深い悔しさを抱えていました。さらに、「このままでは日本の造船技術が世界から消える」という強烈な危機感が、彼らの胸を締めつけます。
そして、この焦りこそが、今回の巨大プロジェクトを生む原動力になりました。
「もう一度、日本の底力を世界に示す」
その思いが、これまで絶対に相容れないとさえ言われたライバル企業の共闘を実現させ、時間もコストも惜しまず挑む覚悟へとつながったのです。
技術者たちの執念が切り開く日本造船復活への道
世界最大コンテナ船の完成までの道のりは、困難の連続でした。設計段階では、想定した強度が出ない、船体が重くなりすぎる、燃費性能が目標に届かないなど、次々と課題が噴き出します。建造が始まれば、数十メートルにも及ぶ巨大な鋼板をミリ単位で組み上げる精密作業、溶接部分のわずかな不具合、部材の遅れといった問題が、ほぼ毎日のように現場を揺さぶりました。
それでもプロジェクトが止まらなかった理由は、技術者と職人たちが決して引き下がらなかったからです。トラブルが起きるたびに原因を一つずつ洗い出し、試験片を何度も作り直し、必要とあらば設計図そのものを書き換える判断も下しました。効率よりも品質を選び続けた背景には、「この一隻を成功させなければ、日本造船の未来はない」という切実な思いがありました。
番組では、現場を率いるリーダーたちが「妥協した瞬間に世界から置いていかれる」と語りながら、若手を鍛え、ベテランの経験を次世代へ伝えていく姿が描かれます。立場や世代を超えて知恵を出し合い、チーム全体で難題に立ち向かう姿は、日本のものづくりの本質そのものです。
こうして積み重ねられた技術と連携の経験は、単に一隻の船を完成させただけで終わりません。次の大型船や環境対応船へとつながる、かけがえのない財産として残っていきます。
世界最大コンテナ船は、日本造船が再び世界の最前線に立つためのゴールではなく、確かなスタートラインです。番組は、巨大な船が海に浮かぶ瞬間を頂点に、舞台裏で戦い続けた技術者たちの執念と、日本造船復活への長い道のりの始まりを力強く描き出しています。
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