「あなたの近くにもやって来る?!データセンターの光と影」とは?
番組は、クローズアップ現代の特集「あなたの近くにもやって来る?!データセンターの光と影」です。
放送日は2026年3月4日。テーマは、私たちの暮らしを裏側から支えているデータセンターが、いま静かに「ご近所の問題」に変わりつつある、というものです。
スマホの動画視聴、ネット通販、SNS、そして急速に広がるAI。便利さの影にあるのが、全国各地で建設ラッシュが続くデータセンターです。
番組では、その重要性だけでなく、騒音や排ガスをめぐる住民トラブル、電力ひっ迫への不安、そしてどうすれば地域と共存できるのかを、多くの事例と専門家の分析から掘り下げていきます。
案内役はキャスターの桑子真帆さん。スタジオには、三菱総合研究所フェローの西角直樹さん、京都大学大学院准教授の大庭哲治さんが登場し、最新の状況とこれからの課題を語ります。
データセンターは何をしている施設?スマホとAIを支える巨大な裏方
そもそもデータセンターとは何なのか。
番組は、まずこの基本から説明します。
データセンターは、世界中のサーバーやストレージを集中的に置き、膨大なデータの処理と保存を行う施設です。スマホで動画を見たり、通販サイトで買い物をしたり、エーアイに質問したりするとき、その裏側で動いているのがデータセンターのコンピューター群です。
建物の中には、冷蔵庫のようなラックがずらりと並び、その中に何千、何万というサーバーが収められています。これを冷やすために、大型の空調設備や冷却塔が24時間フル稼働しています。
背景知識として、アメリカではデータセンターが国全体の電力使用量の約4%を占め、2030年までにその2倍以上になるという試算もあります。
エーアイが広がるにつれて、世界中で電力とデータセンターの関係が重大なテーマになっているのです。
なぜ日本各地でデータセンター建設ラッシュが起きているのか
番組は続いて、「なぜ今こんなにデータセンターが増えているのか」という素朴な疑問に答えていきます。
理由の1つ目は、私たちが使うデータ量が急増しているからです。
高画質の動画配信、オンラインゲーム、クラウドサービス、エーアイを使ったサービスなど、データを大量にやり取りするサービスが一気に増えています。
2つ目は、日本政府や企業が、海外依存を減らし、国内にクラウド基盤を整えようとしているからです。災害リスクを分散し、セキュリティを高めるためにも、国内の複数地点に大規模なデータセンターを置く動きが進んでいます。
3つ目は、地方の土地や送電網を活用したいという狙いです。高速なネット回線と大規模な電力が確保できる場所なら、郊外や地方でもデータセンターを誘致しやすくなります。自治体にとっては、雇用や税収アップが期待できる「成長のタネ」に見える側面もあります。
生活圏のすぐそばに?近隣住民を悩ませる騒音・排ガス・工事負担
ところが、こうしたデータセンター建設ラッシュは、別の問題も生んでいます。
番組が取り上げるのは、住宅街のすぐそばに計画されたデータセンターをめぐる住民の不安と反発です。
千葉県や東京都の一部では、データセンター建設に対して住民が反対運動を起こし、計画が撤回されたり見直されたりした例もあります。
住民が訴えるポイントは大きく分けていくつかあります。
1つ目は、工事期間の長さと大型トラックの往来です。
災害に強い建物にするため工事が長期化し、そのあいだ住宅街を多くのトラックが行き来し、騒音や排気ガス、歩行者の安全への不安が続くこと。
2つ目は、完成後に続く「終わらない音」です。
サーバーを冷やす室外機や冷却塔が24時間動き続けることで、ブーンという低い音が常に聞こえる「低周波音」の問題が指摘されています。普通の防音壁では防ぎにくく、家の中まで響いてしまうケースもあるとされています。
3つ目は、自家発電設備から出る排ガスと排熱です。
停電に備えた非常用発電機は、重油などを燃やして試運転を行うため、その音と排気が住宅地に広がるのではないか、という心配も紹介されます。
番組は、こうした不安が「ただのイメージ」なのか、それとも対策が必要な現実のリスクなのかを、専門家や現地取材を交えて見ていきます。
電力ひっ迫と発電所不足の懸念 AIブームが押し上げる電力需要
もう1つの大きなテーマが、電力ひっ迫の問題です。
AIの学習や、膨大なデータ処理には、非常に大きな電力が必要です。アメリカではAIや暗号資産関連のデータセンター需要の増加が、電力会社の業績や地域の電力需給に大きな影響を与えているという報道も出ています。
三菱総合研究所の分析でも、生成AIの普及に伴い、世界的にデータセンターの電力消費が急増すると予測されています。電力効率を高める技術開発である程度は抑えられる可能性がある一方で、その進み方には不確実性が大きい、と指摘されています。
日本でも、再生可能エネルギーの導入や老朽化した発電所の対応など、電力システム全体の課題を抱える中で、大規模なデータセンターが増えることによる影響をどう見込むのかが、重要な論点になりつつあります。
番組は、「便利なサービスを支える電力」と「家庭や地域の電気料金」が、見えないところでつながっている可能性を、視聴者に分かりやすく投げかけます。
海外で何が起きている?アメリカの電気料金高騰と住民反発
番組は、日本だけでなく海外の状況にも目を向けます。
アメリカでは、AIブームに乗ったデータセンター建設計画が相次ぎ、その一方で地域住民の反発や建設の一時停止、モラトリアム(一定期間の新規建設停止)が検討されるケースが増えています。
住民が心配しているのは、
・電力需要の急増による電気料金の高騰
・水資源や土地利用への影響
・騒音や景観の変化
といった点です。
また、一部の地域では、データセンターが電力供給網に与える影響も問題になっています。例えば、アメリカ東部では、送電線のトラブル時に多数のデータセンターが一斉に自家発電に切り替わることで、逆に電力網が不安定になるリスクが指摘されています。
こうした海外の事例は、日本がこれから直面するかもしれない課題を先取りして見せてくれる“鏡”のような存在です、と番組は伝えます。
自治体と企業の思惑 地域経済のメリットとリスクのはざまで
データセンターを巡っては、地域の自治体と企業にも、それぞれの思惑があります。
自治体にとって、大手企業のデータセンター誘致は、固定資産税や法人税などの増収、インフラ整備、関連ビジネスの呼び込みなど、経済的なメリットが期待できる存在です。実際、日本各地で企業と自治体が連携して「デジタル田園都市」構想を進めるケースも増えています。
一方で、住民から「説明が不十分なまま話が進んでいる」「メリットだけ強調され、生活環境への影響が軽く見られている」といった不信感の声が上がることもあります。特に、準工業地域だから問題ない、というような一方的な説明に対しては、納得できない住民も多いことが取材から見えてきます。
番組は、企業側と自治体側の論理、そして生活者の感覚のズレを、具体的なやりとりを交えながら浮かび上がらせます。
「成長戦略」と「暮らしの安心」のどちらかを選ぶのではなく、両方をどう両立させるか。それがこれからの大きなテーマだと伝えます。
西角直樹フェロー・大庭哲治准教授が語る「ワット・ビット連携」と共存の道筋
スタジオでは、情報通信とエネルギーの両方に詳しい専門家として、西角直樹さんと大庭哲治さんが登場します。
西角さんは、情報通信インフラと電力インフラを一体で考える「ワット・ビット連携」というキーワードを紹介します。これは、電力(ワット)と情報(ビット)の両方のネットワークをセットで整備し、データセンターの立地や負荷と電力供給をうまく組み合わせていく発想です。
例えば、
・再生可能エネルギーが豊富な地域にデータセンターを置く
・夜間など電力に余裕がある時間帯に、負荷の大きい処理を回す
・AIの処理を複数地域に分散し、どこか1つに負荷が集中しないようにする
といった工夫が考えられます。
大庭さんは、環境社会学や地域政策の視点から、「技術的な解決策」だけでなく、住民との対話や合意形成のプロセスが重要だと指摘します。どれだけ省エネ技術が進んでも、情報公開や説明が不十分であれば、地域の信頼は得られないからです。
番組は、技術と社会の両方から、「共存への道筋」を描こうとします。
データセンターを“迷惑施設”にしないために必要な技術とルールづくり
では、データセンターを「迷惑施設」にしないためには何が必要なのか。
番組が紹介するポイントは、大きく3つです。
1つ目は、騒音・低周波音への本格的な対策です。
空調機を建物内部に配置したり、専用の防音構造を導入したりすることで、24時間続く音を抑える試みが始まっています。
2つ目は、排熱や排ガスの出し方を工夫することです。
例えば、排熱を地域の温浴施設や農業ハウスの暖房に利用する「地域熱供給」のような取り組みも世界では行われ始めています。これが広がれば、マイナスだった熱が、地域のプラスにもなり得ます。
3つ目は、立地や運用をルール化することです。
住宅地との距離や、工事時間帯、トラックの導線などを、自治体の条例やガイドラインであらかじめ定めておくことで、トラブルを減らすことができます。住民が事前に情報を知り、意見を出せる場をつくることも大切です。
番組は、「技術か規制か」という二者択一ではなく、両方を組み合わせることで、データセンターを地域のインフラとして位置付けていく必要がある、と結びます。
私たちの暮らしはどう変わる?今からできる向き合い方まとめ
最後に番組は、視聴者である私たち一人ひとりに視点を戻します。
スマホもネット通販も、AIも、もはや日常から切り離せません。
ということは、その裏側にあるデータセンターも、どこか遠くの話ではなく、「自分の街のインフラ」になりつつあるということです。
この回では、
・データセンターがなぜ増えているのか
・住民トラブルの具体的な内容
・電力ひっ迫や発電所不足の懸念
・海外の最前線で何が起きているのか
・専門家が考える共存への道筋
を通して、「便利さの裏側で何が起きているのか」を、やさしい言葉で浮かび上がらせます。
補足として、エネルギー政策や都市計画は、一見すると難しいテーマですが、「どんな施設がどこに建つのか」「その説明は十分だったのか」という、ごく身近な問いから関わることができます。
番組は、視聴者に「データセンターに賛成か反対か」を迫るのではなく、
「自分の暮らしと地域の未来をどうデザインしたいか」を一緒に考えよう、と静かに投げかけて終わります。
NHK【クローズアップ現代】友人や家族より 私の理解者はAI!?AI依存リスクとAI悩み相談の効果、AIが理解者になる時代とグリーフケアの新しい形|2026年1月20日
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