京都の透明な物語が動き出す
このページでは『京都極上モノ紀行 ガラス工芸編(2026年1月31日)』の内容を分かりやすくまとめています。
京都に伝わる技が、ガラス工芸という透明な世界で息づいています。料亭のもてなしを彩る器、清水焼の精神を受け継いだ食器、そして科学と職人技が融合した理化学ガラス。さらに、リサイクルの命が再び光となる法然院のガラス枯山水まで、京都の美意識が結晶した景色が広がります。
古都に流れる長い時間と、今を生きる職人の手が重なる瞬間。その輝きを追う旅が始まります。
京都とガラス工芸――戦国から続く透明な系譜をたどる旅
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京都は、漆や染色だけでなく、実はガラスでも長い歴史を持つ都市です。ガラスは戦国時代に都にもたらされたとされ、当時はきらびやかなもてなしの器や、貴重な舶来品として珍重されてきました。やがて江戸から近代にかけて、京の町には職人たちの手によるガラス器が広まり、茶席や料亭、日常の食卓まで、さまざまな場面で使われるようになります。
今回の『京都極上モノ紀行 ガラス工芸編』は、そうした歴史を土台にしながら、2026年の京都で花開く新しいガラスの姿に迫る内容です。伝統的な技を受け継ぐ職人たちが、最新の技術や現代アートの発想と出会うことで、これまでになかった器や空間表現を生み出しています。
番組では、京料理を彩るもてなしの器、清水焼の精神を受け継いだ食器、京都の近代化を支えた理化学ガラス、そしてリサイクルガラスでつくられたガラス枯山水まで、京都ならではの多彩なガラス工芸を一気に見せてくれます。京都という都市そのものが、一つの大きなガラス作品のように輝いて見えてくる構成になっているのです。
料亭が誂える京のもてなしガラス
京都のガラス工芸の魅力が最もはっきり現れるのが、京料理の世界です。番組では、老舗料亭が季節ごとに誂えた特別なガラスの器が紹介されます。春は桜や若葉を思わせる淡い色ガラス、夏は氷のように透明で冷涼感あふれる鉢、秋は琥珀色の光を帯びたグラス、冬は雪を閉じ込めたような乳白色の片口など、四季の移ろいが器の表情に刻み込まれています。
京料理は「目で食べる」と言われるほど、見た目の美しさが重視されます。だからこそ、ガラスの器は単なる入れものではなく、料理と対になるもう一つの作品として扱われます。例えば、透明な小鉢の底に金箔を忍ばせて、盛りつけた向こう側にかすかな輝きを生ませたり、水を張ったガラス皿に青もみじを浮かべ、その上にお造りを置いて川面のような景色をつくったりと、京都らしい遊び心と演出が随所に潜んでいます。
ここで活躍するのが、京都の料亭と二人三脚で器を作るガラス作家たちです。料亭側から「初夏の川床で使いたい」「八寸に涼を添えたい」といった具体的な要望が出され、それに応える形で器の厚みや重さ、口径、光の反射まで細かく調整されていきます。ガラスの透明感と、京料理の繊細な盛りつけが合わさることで、京都ならではの“もてなしのガラス”が完成していくのです。
清水焼の用の美を受け継ぐガラス食器
番組のもう一つの柱が、清水焼の精神を受け継いだガラス食器です。清水寺周辺で育まれてきた清水焼は、「用の美」、つまり実際に使われる道具であることと、美しさが同時に成り立つことを大切にしてきました。その考え方をガラスに引き継いだ職人が、京都には存在します。
たとえば、清水焼の鉢や皿のシルエットをベースにしながら、素材をガラスに置き換えた作品。高台の高さや縁の立ち上がり方は陶器そのものなのに、透き通るガラス越しにテーブルの木目が見える不思議な感覚が生まれます。そこに盛られるのは、炊き合わせや和え物、あんみつなど、伝統的な和の料理や甘味。陶器では重厚に見える料理も、ガラスになることで一気に軽やかに、モダンな印象へと変わります。
また、清水焼の絵付けを思わせる模様を、ガラスの内部に封じ込めるような技法も登場します。色ガラスを重ねて流し込み、窯で焼き締めることで、器の内側に絵画のような景色を生み出す手法です。これにより、器を覗き込む角度によって見える模様が変わり、使うたびに新しい表情が現れます。日常使いの飯椀や湯のみをガラスで作る試みもあり、「和の器=陶磁器」という固定観念をやさしく裏切ってくれます。
こうした取り組みは、清水焼の窯元とガラス工房がコラボレーションする形で進んでおり、「京都らしい器とは何か」を改めて問い直すきっかけにもなっています。陶器とガラス、それぞれの素材の良さを生かし合うことで、京都の食卓はさらに多彩で自由な世界へと広がっているのです。
理化学ガラス工房と“スリ付き茶筒”の衝撃
このガラス工芸編で特に印象的なのが、京都の近代化を支えてきた理化学ガラスの工房です。番組では、試験管や冷却管、蒸留装置など、化学実験に欠かせないガラス器具を手作業で作り続けてきた職人の姿が紹介されます。火のついたバーナーの炎の中でガラス管をくるくると回し、息を吹き込みながら、わずかな厚みの違いも許されない精度で成形していく光景は、まさに“科学の裏側に潜む工芸”そのものです。
特に注目されるのが、ガラス同士を精密に接続する「スリ」と呼ばれる加工技術です。化学実験では不純物の混入を防ぐため、ゴムや樹脂ではなく、ガラス同士で密閉することが理想とされます。そのため、わずか0.01ミリ単位の誤差も許されない研磨技術が必要になります。京都には、こうした理化学ガラス器具の製造で国内有数の精度を誇るメーカーや工房があり、高精度なガラス管や水準器を作る技術が、そのまま工芸品へと応用されています。
番組で登場する“スリ付きガラス茶筒”は、その象徴的な存在です。太いガラス管を高温で柔らかくしながら、蓋と本体がぴたりと合うように薄く削り出していく作業は、まさに神業レベル。蓋をそっと筒の上に置くと、内部の空気が押し出されるように音もなく沈み込み、最後の一瞬でふっと止まって密閉されます。その様子は、単なる容器というより、一つのからくり装置を見ているような驚きがあります。
このガラス茶筒は、茶葉を湿気から守るための実用的な道具でありながら、バーやカウンターではウイスキーのデキャンタとしても使われています。理化学ガラスの高い気密性と、ガラス工芸の美しさが融合した結果、生まれたアイテムと言えるでしょう。京都のガラス工芸は、こうした“科学の技術”と“生活の美”をダイレクトにつなげているのです。
法然院のガラス枯山水「つながる」――リサイクルガラスが描く宇宙庭園
番組のクライマックスを飾るのが、京都・左京区の哲学の道近くにある法然院のガラス枯山水です。山門へと続く参道には、苔むした築山や白砂の上に、無数のガラスオブジェが散りばめられています。光を受けてきらめくガラスは、水の流れや星々、あるいは宇宙の粒子のようにも見え、訪れる時間帯や季節によって、まったく違う表情を見せます。
このガラス枯山水「つながる」を手がけたのは、ガラス造形作家の西中千人です。作品に使われているのは、すべてリサイクルされたガラス瓶。使用済みの瓶を回収し、洗浄・溶融した上で新たなオブジェとして生まれ変わらせたものが、法然院の参道約40メートルにわたって配置されています。伝統的な枯山水が石と砂で山水の風景を象徴的に表すのに対し、この作品は透明なガラスを媒介として、「循環する命」と「宇宙とのつながり」を表現しているのです。
参道を歩くと、苔の上に置かれたガラスが、木漏れ日を受けてエメラルドグリーンに光ったり、夕暮れにはアンバー色に染まったりと、時間の経過そのものが作品の一部になっていることに気づきます。近くでじっと眺めると、瓶の底や口のねじ部分など、“かつての姿”の名残がうっすらと見え、廃棄されるはずだったガラスが、新しい形で長い時間を生き続けていることが伝わってきます。
番組では、法然院の住職が「何十年、何百年先にこのガラスが庭や森にどのように溶け込んでいくのかを楽しみにしている」と語る姿も紹介されています。ガラスという素材が持つ“永遠性”と、“いつか風化していく時間”の両方を引き受けるこの庭は、京都という街そのものの姿を象徴しているように見えます。
2026年の京都ガラス工芸が照らす未来
2026年の今、京都のガラス工芸は、単なる「きれいな器づくり」の段階を超えています。料亭の器や清水焼由来の食器には、もてなしの心と使い勝手の良さが宿り、理化学ガラスから生まれた茶筒には、科学技術の粋と遊び心が同居しています。そして法然院のガラス枯山水「つながる」には、リサイクルとサステナビリティという現代的なテーマが、静かな宇宙庭園として結晶しています。
『京都極上モノ紀行 ガラス工芸編』は、京都の街に点在するこうした場所をつなぎ合わせることで、一つの物語として見せてくれます。戦国時代に都にもたらされたガラスが、京の伝統工芸と出会い、科学と出会い、現代アートと出会いながら、今もなお進化し続けている――その連続性こそが、京都のガラス工芸の真の魅力です。
視聴者は、この番組をきっかけに、料亭で出される一枚の皿や、理化学ガラス出身の茶筒、法然院の透明な枯山水に出会ったとき、「これは京都の歴史と未来をつなぐ一片なのだ」と感じるはずです。2026年の京都は、ガラスという透明な素材を通して、自分たちの文化と暮らしを新たに照らし出しているのだと、強く実感させてくれる構成になっているのです。
まとめ
京都の伝統が息づくガラス工芸の世界をめぐる物語が広がります。料亭の特別な器、清水焼の心を継ぐ食器、精巧な理化学ガラス、そして法然院のガラス枯山水まで、古都ならではの美が立ち上がります。放送内容と違う場合があります。
京都で受け継がれてきた技と新しい感性が交わり、ガラスは静かに輝きを増しています。放送後に内容を追記します。
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