身のまわりの「やさしさ」を考える特集
2025年3月19日放送のNHK総合「あさイチ」では、「やさしさ」をテーマにした特集が放送されました。身のまわりにある小さな「やさしさ」について考え、視聴者のエピソードや専門家の分析を交えながら、現代の「やさしさ」のあり方を深掘りしました。番組内で紹介された「いい人すぎるよ展」や、ゲスト・視聴者のエピソード、世代間の「やさしさ」の違いについて詳しく紹介します。
「いい人すぎるよ展」が大人気の理由
「いい人すぎるよ展」は、クリエイティブディレクターの明円卓(あきえん たく)氏を中心としたチーム「entaku」が手掛ける展示会です。2023年6月に初開催されたこの展覧会は、チケットが即完売となり、その後の第2シーズンではわずか16日間で2万5,000人を動員しました。現在では全国各地のPARCOを巡回し、累計で50万人以上の来場者を記録しています。
この展覧会の特徴は、誰もが共感できる「いい人」の行動にスポットを当てた展示内容にあります。日常のさりげない優しさや気遣いに注目し、「ああ、こういう人いる!」と思わずうなずいてしまうシーンが数多く紹介されています。
- 「集合写真で中腰の人」 … 後ろの人がちゃんと映るように、自然と中腰になって調整する人。
- 「電話なのにお辞儀してる人」 … 相手に敬意を払っているつもりはなくても、無意識にお辞儀をしてしまう人。
- 「カラオケで率先して最初の曲を入れる人」 … みんなの緊張をほぐすため、最初に歌う役を引き受ける人。
- 「『最後食べちゃうね』と声をかける人」 … みんなが遠慮して食べられない最後のひと口を、気を遣って処理する人。
こうした展示内容は、「あるある!」と共感を呼ぶだけでなく、自分の周りの人々の行動を振り返るきっかけにもなります。「普段気づいていなかったけど、あの人って実はすごく優しかったんだな」と、改めて身近な人への感謝の気持ちが芽生えることも少なくありません。
SNSで話題沸騰!「いい人すぎるよ展」の魅力
この展覧会が多くの人に広まったのは、SNSの影響が大きいといえます。特に10代・20代の若い世代を中心に、「#いい人すぎるよ展」のハッシュタグをつけた投稿が相次ぎ、SNS上で大きな話題となりました。
- 来場者が展示内容を写真や動画に撮って投稿し、それが拡散されることで認知度がアップ。
- 「これ私のことじゃん!」と、自分自身の行動と重ねる人が続出。
- 「あの展示、見てみたい!」と、興味を持った人たちが次々に会場を訪れる。
こうした流れが続き、「いい人すぎるよ展」の人気はどんどん高まり、ついには全国巡回開催が決定しました。地方在住の人々も参加できるようになり、さらに多くの人に共感の輪が広がっています。
「いい人すぎるよ展」の今後の開催予定
現在「いい人すぎるよ展」は、全国のPARCOを巡回する形で開催されています。次の開催予定は以下の通りです。
- 名古屋会場(アルベホール名古屋):2024年12月10日~2025年2月9日
- 大阪会場(PARCO GALLERY):近日発表予定
入場料は1,500円(税込)で、12歳以下は無料となっています。全国各地で開催される予定なので、最新情報は公式サイトやSNSでチェックしてみてください。
「いい人すぎるよ展」の魅力と会場の雰囲気
「いい人すぎるよ展」は、日常の中で何気なく行われるやさしさや気遣いに焦点を当てた企画展で、多くの人に共感を与えています。この展覧会では、来場者が「自分もこういうことをしたことがある」「こういう人いる!」と感じられる展示がたくさんあります。
会場には、それぞれのテーマに合わせた装飾や空間演出が施され、単なる展示を見るだけでなく、体験型の要素も取り入れられています。
- 「かわいい人すぎるよ展」では、仕草や言葉の使い方など、周囲を和ませる「かわいい人」の特徴を紹介。
- 「大人がすぎるよ展」では、落ち着いた対応や礼儀正しさなど、大人ならではの振る舞いがテーマ。
- 「気持ち良いすぎるよ展」では、すっきりする瞬間や、心地よい気遣いに焦点を当てた展示が用意されています。
さらに、来場者が参加できる仕掛けもあり、「あなたはどのタイプの『いい人』?」といったアンケートコーナーや、思い出に残る「いい人エピソード」を共有できるスペースもあります。こうした仕掛けによって、訪れた人同士の会話が自然に生まれ、「いい人」について改めて考えるきっかけにもなっています。
また、内装のデザインにも工夫がされており、写真映えするスポットが多いのも特徴です。展示の中には、思わず撮影したくなるユニークな表現が使われており、SNSでの拡散も盛んです。
- 柔らかいパステルカラーを基調とした空間で、リラックスできる雰囲気。
- 各エリアごとに異なるコンセプトで装飾され、訪れるたびに新しい発見がある。
- 来場者が自由にメッセージを残せるスペースがあり、温かい言葉があふれるコーナーも。
こうした工夫により、「いい人すぎるよ展」は、ただ見るだけではなく、心が温まる体験ができる展示会となっています。訪れる人の多くが「また来たい」「今度は友達や家族と一緒に来たい」と感じる理由は、この空間そのものが「やさしさ」に包まれているからかもしれません。
ゲストの語る「やさしさ」のエピソードを深掘り
番組には美村里江さんと森崎ウィンさんがゲストとして出演し、それぞれが感じた「やさしさ」について語りました。
森崎ウィンさんが紹介したのは、運転中の横断歩道での出来事です。
- 森崎さんが車を運転していて横断歩道に差し掛かったとき、歩行者がいるのを見て停車しました。
- すると、その歩行者が小走りで渡ってくれました。
- 森崎さんは「急がなくてもいいのに」と思いつつも、「待ってくれている」と思った相手の気遣いに嬉しくなったそうです。
- お互いの気遣いが伝わるこのような場面は、普段の生活の中でもよく見られます。
- 例えば、エレベーターに乗るとき「開」ボタンを押して待ってくれる人がいたり、逆に急いで駆け込んでくれる人がいたりすることもあります。
このように、ささいな行動でも「やさしさ」は伝わるものです。
美村里江さんは、新幹線での出来事を挙げました。
- ある日、美村さんが新幹線に乗っていたとき、荷物を抱えたまま困っている人がいました。
- その様子を見ていた一人の乗客が、すぐに手を貸してサポートしました。
- その人は特に言葉を発することなく、自然な流れで行動していたのが印象的だったそうです。
- 美村さんは「やさしさとは、言葉よりも先に行動に現れるものだ」と感じたそうです。
このように、言葉をかけなくても、「手を差し伸べること」も立派なやさしさです。
このエピソードからも分かるように、「やさしさ」は特別なことではなく、日常の何気ない場面にあふれているものです。
- スーパーで重たい荷物を持つ人にドアを開けてあげる
- バスや電車で席を譲る
- レジで後ろに並んでいる人が少し急いでいそうなら、順番を譲る
こうした小さな行動が、誰かにとって大きな「やさしさ」になることもあります。
視聴者が体験した「やさしさ」のエピソードを深掘り
番組では、視聴者から寄せられた「やさしさ」のエピソードを紹介しました。日常の中で気づく「やさしさ」は、時に大きな支えになります。特に印象的だった3つのエピソードを詳しく見ていきます。
同僚の「やさしさ」に救われた久美子さん
- 久美子さんは5年間、母親の介護を続けていたが、職場ではそのことを表に出さずに働いていた。
- 年末に母の体調が急変し、年始に仕事が控えていたため、職場の同僚にそのことを伝えた。
- 正月という特別な時期にもかかわらず、上司や同僚からたくさんの励ましのLINEが届いた。
- 特に、「何かあれば頼ってね」「あなたのことが心配です」といったメッセージが、心の支えになった。
- 5年間、介護と仕事を両立させる中で、人に弱音を吐くことがなかったため、職場の人たちの言葉が思いのほか温かく感じた。
- 母の死後、職場に戻った時、先輩や同僚が何気なく「大丈夫?」と声をかけてくれたことが嬉しかった。
- 「やさしさ」は大げさな行動ではなく、そっと寄り添う言葉だけでも大きな力になると実感した。
親になって気づいた父の「やさしさ」
- ゆきさんの父親は寡黙な人で、会話をすることが少なかった。
- 幼い頃から、外に出る時や学校に行く時、いつも「気をつけてね」と声をかけてくれていた。
- 当時は特に気に留めることもなかったが、自分が親になって子どもに「気をつけてね」と言うようになり、その言葉の意味を考えるようになった。
- 父が口数は少なくても、ずっと見守ってくれていたことに気づいた。
- 「言葉は少なくても、想いはしっかり伝わる」ということを実感した。
- ふとした瞬間に、父の「気をつけてね」という声が思い出され、自分も同じように子どもに伝えていることに気づく。
- 何気ない一言こそが、大きな「やさしさ」として心に残ることもある。
ママ友の「やさしさ」に支えられたカヨさん
- 2011年の東日本大震災が発生した時、カヨさんの息子は小学1年生で、家に1人だった。
- 震災の影響で、仕事中だったカヨさんはすぐに帰宅できない状況にあった。
- 地震発生から約1時間後、ママ友のヨウコさんから「迎えに行ったから心配しないでね」とメールが届いた。
- 不安でいっぱいだったカヨさんは、その一通のメールでどれだけ救われたか分からなかった。
- その後も、ヨウコさんは何かあると先回りして助けてくれる存在だった。
- 約10年前、カヨさんが食事も睡眠もとれないほど悩んでいた時、何も言わずに病院へ連れて行ってくれた。
- ヨウコさんはいつも「何かあったら言ってね」とは言わないが、必要な時に必ずそばにいてくれる人だった。
- 困っていることを察して、先に動いてくれる「やさしさ」もあると気づかされた。
視聴者のエピソードを通じて、「やさしさ」は大きな行動ではなく、何気ない言葉やちょっとした行動の中にあると感じることができる。
- そっと寄り添うような言葉
- 何気なくかけられる「気をつけてね」の一言
- 困っている時に、言葉ではなく行動で助けてくれる
こうした「やさしさ」が、時に人を支え、心に深く残るものとなる。
「やさしさ」の世代間ギャップと現代の変化を深掘り
番組では、「やさしさ」に対する世代間の違いについて取り上げました。現代では、相手を傷つけないように気を配る「予防型のやさしさ」が主流になっており、過去とは異なる価値観が生まれています。
予防型のやさしさとは?
- 人との距離感を大切にし、相手が不快にならないよう配慮することを重視する。
- 知らない人に道を尋ねるのを避けることが多く、「余計なお世話にならないようにしよう」と考える人が増えている。
- 困っている人を見かけても、「声をかけると逆に気を悪くされるかもしれない」と考え、見守ることを選ぶことがある。
- 「相手のためを思って行動するよりも、相手の領域に踏み込みすぎないことを優先する」という考えが広まっている。
一方で、過去は「治療型のやさしさ」が主流でした。
- 相手を気にせず、積極的に手を貸し、あとで関係を修復することが一般的だった。
- たとえば、職場や学校では、「ミスをしても後でフォローするのが当然」という考えが強かった。
- 昔のドラマや映画では、厳しく叱りつつも、最後に「お前のことを思って言っているんだ」とフォローするシーンが多かった。
- 「相手のためにあえて厳しく接する」ことがやさしさとされる時代だった。
「予防型のやさしさ」が増えた理由
金沢大学の金間大介教授によると、バブル崩壊後の経済低迷が影響し、人々が慎重になったことが背景にある。
- バブル時代は「多少の失敗はフォローすれば大丈夫」という考えが強かったが、不況により「失敗が許されにくい社会」に変化した。
- 職場では、パワハラの問題が大きく取り上げられ、「注意すること」=「相手を傷つけること」と捉えられるようになった。
- こうした変化が、「相手に余計な負担をかけないようにする」という考えにつながった。
SNSの発達がやさしさの形を変えた
- オンライン上では「やさしさ」の形が変わりつつある。
- たとえば、グループチャットで誰も反応しないときに、あえてコメントを入れて話を広げる人が「気遣いができる人」として評価されるようになった。
- 「誰かを傷つけるリスクがある言葉」は避けられる傾向が強まり、直接的な指摘を控えるようになった。
- 反面、失言や不用意な発言をした人には厳しい目が向けられることもあり、「やさしさ」のバランスが難しくなっている。
世代による「やさしさ」の違い
- 年配の世代:「厳しくても本音を伝えることが相手のためになる」と考えることが多い。
- 若い世代:「相手を傷つけないように、慎重に接することが大事」と思う傾向が強い。
- どちらが正しいということではなく、社会の変化とともに「やさしさ」の価値観も変わっている。
「やさしさ」は時代によって形を変えてきました。予防型のやさしさが主流になった現代では、相手を尊重する意識が高まる一方で、踏み込みすぎないことが逆に「冷たさ」と受け取られることもある。 どんな時代でも、「相手の立場を考えた行動ができること」が、本当のやさしさなのかもしれません。
「やさしさ」が生み出す新たな文化を深掘り
番組では、「やさしさ」がエンターテインメントの世界にも影響を与えていると紹介されました。ドラマや漫才の表現が時代とともに変化し、「傷つけないこと」を重視する流れが強まっています。
ドラマに見る「やさしさ」の変化
- 昔のドラマでは、厳しく叱るシーンが多く登場し、「本気で叱ることこそ愛情」という考え方が根付いていた。
- 例えば、学園ドラマでは教師が生徒に厳しく接しながらも、最後には「お前のためだ」と諭す展開が多かった。
- 家族ドラマでは、「苦労を乗り越えることで成長する」というテーマが強調され、厳しさの中にある愛情が描かれることが多かった。
- 最近のドラマでは、「叱る」よりも「共感する」ことを重視する傾向がある。
- 登場人物同士が「あなたの気持ちは分かるよ」と受け止め合い、対立ではなく支え合う展開が増えている。
- 家族ドラマでも、昔のような厳しい親の描写は減り、子どもを尊重し、寄り添う姿勢が重視されるようになった。
漫才に見る「やさしさ」の変化
- 昔の漫才は、ツッコミがボケに対して「強く否定する」スタイルが一般的だった。
- 例えば、「アホか!」や「何言ってんねん!」といった厳しいツッコミが笑いを生んでいた。
- 現在の漫才では、ツッコミも「否定ではなく、優しくフォローする」形が増えている。
- 「言葉選びが重要になり、相手を傷つけない笑いが求められる時代になった。」
- 例えば、「アホか!」ではなく、「それ、めっちゃ面白いやん!」と肯定しつつ笑いに変えるスタイルが増えている。
バラエティ番組にも影響
- 昔のバラエティ番組では、出演者が体を張ることが多かった。
- 罰ゲームで水をかける、強めのツッコミを入れるなど、スリルや驚きを狙った演出が主流だった。
- 最近の番組では、出演者が楽しめる内容を重視するようになっている。
- 例えば、料理対決やアート対決など、「競争しつつも、お互いを尊重する企画」が人気になっている。
「やさしさ」を求める視聴者の変化
- SNSの影響もあり、「人を傷つける表現」に敏感な視聴者が増えている。
- 例えば、ドラマの中で厳しい上司が部下を怒鳴るシーンがあると、「パワハラでは?」という声が上がることもある。
- 視聴者の価値観が変わったことで、制作側も表現の仕方に気をつけるようになっている。
- 「やさしさ」を大切にしつつも、面白さや感動をどう届けるかが、今後のエンターテインメントの大きな課題になりそうだ。
時代とともに、「やさしさ」の形がエンターテインメントの世界にも影響を与えています。ドラマでは共感を重視し、漫才では傷つけない笑いが求められる時代になりました。バラエティ番組も、出演者が楽しめる内容に変化しつつあります。これからのエンタメ業界では、「やさしさ」と「面白さ」のバランスをどう取るかが鍵になりそうです。
まとめ
今回の「あさイチ」では、さまざまな形の「やさしさ」にスポットを当てました。日常の中で見逃してしまいがちな「やさしさ」も、意識してみるとたくさん存在していることに気づかされます。
これからの時代、「やさしさ」にはさまざまな形があることを理解し、自分なりの「やさしさ」を大切にすることが求められそうです。
コメント