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NHK【時をかけるテレビ】弓状束と自閉症の“声にならない世界”とは?直樹さんの文字盤コミュニケーションとスコット・ドラークスホルトの変化|2025年11月28日

時をかけるテレビ
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「君が僕の息子について教えてくれたこと」

2025年11月28日に放送された時をかけるテレビでは、2014年に大きな反響を呼んだドキュメンタリー「君が僕の息子について教えてくれたこと」が再び取り上げられました。自閉症の特性を抱えながら生きる東田直樹さん、そして彼の著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』と出会い人生が変わった家族たちの姿を、あらためてたどる1時間。
この再放送は、11年という年月を経ても揺るぎない「自閉症という世界への理解」を深める時間でした。

NHK【午後LIVE ニュースーン】自閉症の若者が“書くことで伝える”力とは?世界で話題のエッセイとアイルランド作家との出会いを深掘り|2025年11月28日

『自閉症の僕が跳びはねる理由』が世界に届いた理由

ドキュメンタリーの本編は、13歳の東田直樹さんが書いたエッセイ『自閉症の僕が跳びはねる理由』が海を越えて共感を集めた背景から始まります。

ノルウェーの編集者が『THE REASON I JUMP』を手に取ったとき、「村上春樹三島由紀夫と並ぶ」と評したというエピソードは当時も大きな話題でした。
それほどまでに東田さんの文章は、言語や文化を超えて多くの人の心を揺さぶったのです。

そして最も大きな反響を示したのが、アイルランドの作家デイヴィッド・ミッチェルさんでした。重度の自閉症の息子を持つ彼は、息子の行動に向き合えず苦悩し、「怒りを感じたこともある」と正直に語ります。

しかし、本と出会ったことでその視点が大きく変わったといいます。

「息子が泣く理由、大きな音を怖がる理由、この本がひとつひとつ教えてくれた」

ミッチェルさんは、誰よりも深く東田さんの言葉に救われ、この本を世界へ広めるため英訳に取り組む決意をしました。

木更津での暮らし——ことばの距離、記憶の重なり

番組では、22歳になった東田直樹さんの日常も紹介されました。場所は千葉県木更津市。直樹さんは昔から“回転するもの”“丸いもの”に強く惹かれ、今も窓の外を走る車のタイヤを眺める時間があります。

シーンでは、直樹さんがパソコンの前に立つと表情が変わり、言葉があふれ出す様子が映し出されました。ただ、その執筆の裏には特徴的な困難もあります。数日前の記憶が突然よみがえり、意図せず言葉が出てしまう。集中したい時に意識が別方向へ引っ張られてしまう——その“揺らぎ”も包み隠さず描かれました。

コミュニケーションには、母親手作りの文字盤を使用します。

質問「なぜ文字盤だと話せるのですか?」
直樹さん「自分の忘れてしまいそうになる言葉を思い出せるからです」

この言葉は、直樹さんが“ことば”とどのように向き合っているのかを端的に示すものでした。

幼い頃は言葉をほとんど発さなかったにもかかわらず、文字だけは鮮明に記憶する能力があったこと、そしてその表現力が後にグリム童話賞の連続受賞につながったことも取り上げられました。

デイヴィッド・ミッチェルとの静かな対面

番組の核心となる場面。
ミッチェルさんは「感謝を伝えたい」と日本へ来日します。

しかし対面の瞬間、直樹さんは外の景色に注意が向き、真正面から向き合えません。それを見てミッチェルさんは柔らかく言います。

「私にできるのは待つこと。ナオキ君に空間と時間を与えることです」

焦りのない、受容の姿勢。その姿勢こそ、彼がこの本から学んだ“理解の形”でした。

そしてミッチェルさんは
「ナオキ君は僕のヒーローです」
と伝えます。

直樹さんは少し間を置いて、
「誰かにとっての喜びになるのは僕にとってもうれしいことです」
と応じました。

視線が怖い理由についての問いに、
「刺すような人の視線が怖い」
と語る直樹さんの言葉は胸に響くものでした。

さらに、自閉症の息子への接し方を問われると、直樹さんは
「そのままで十分だと思います。お子さんもお父さんのことが大好きで、そのままで十分だと思っています」
と伝えます。

未来の誰かのために——脳の検査を受ける決断

続いて番組では、自閉症研究に40年取り組む杉山登志郎さんとの場面が紹介されました。直樹さんは“言語失行”と診断され、さらに詳しく脳の状態を見る検査をすすめられます。

「治療に結びつくのか?」という問いに対して、杉山さんは「治療にはすぐに繋がらない」と説明しつつ、「10年、20年後に他の自閉症の人の助けになる可能性がある」と語りました。

直樹さんは少し考え、「みんなのために受ける」と検査を選びます。

結果、言葉を話すブローカ野と言語理解のヴェルニッケ野をつなぐ『弓状束』に異常が確認され、言葉が話しにくい理由が見えてきました。
杉山さんは、今後の療育では「本人が伸びる部分をどう支えるかが中心になる」と語ります。

ノルウェーの少年スコットくんの“声”

番組後半は世界へ。
ノルウェーのスコット・ドラークスホルトくんは、意思表示が難しく、母アネッテさんは息子の気持ちがわからず苦しんでいました。

しかし、直樹さんの本に出会い、
「息子の声が聞こえるようになった」
と涙交じりに語ります。

スコットくんが大好きな馬に乗る姿、犬と触れ合うシーン、飛ぶことが好きな彼のために庭に置かれたトランポリン。
そこには、彼が“安心できる環境で生きる姿”が丁寧に映し出されていました。

ニューヨークのブライアンさんが示した“受け入れる”ということ

アメリカ・ニューヨークでは、ブライアン・ショアさんの家族が紹介されました。
マイク・ショアさんは息子を“治すこと”に人生を注いできましたが、直樹さんの著書に出会い、「息子を受け入れていなかった」と気づきます。

「時間を楽しめばいい。それに気づいたら、息子の表情が変わった」

という言葉が印象的でした。

ニューヨーク講演——世界へ語ったメッセージ

直樹さんはニューヨークで講演を行い、その内容は同時に英訳されスクリーンに映し出されました。

直樹さんはこう伝えています。
『子どもが一番望んでいるのは、自分を受け止めてくれる場所と親の笑顔です』

講演後、マイクさん夫妻は直樹さんへ
「33年間一度も聞けなかった息子の声が聞こえた気がした」
と抱きしめるように感謝を伝えました。

ふたりの約束、これからの未来へ

デイヴィッド・ミッチェルさんは、直樹さんと「自閉症についての本を一緒に書く」という約束を交わしていました。
「誇りと喜びが波のように押し寄せる」と語る表情には、親としての強い思いと希望が宿っていました。

直樹さんは最後にこう綴っています。

『成功からほど遠いように見える人の瞳にも、美しい山が映っています。さらに高い山を目指すつもりです』

この一文が、番組全体を静かに締めくくりました。

栗原類のスタジオコメント——“特別扱いはいらない”

スタジオに戻り、栗原類さんは率直に語ります。

「直樹さんの言葉は、当事者と家族の架け橋になってくれた」
「人の視線が怖いという感覚は、自分が腫れ物として扱われることへの怖さかもしれない」
「障害を個性と片付けないでほしい」
「対等に向き合うべきだが、当事者も甘えるべきではない」

これらのコメントは事実として紹介され、放送全体を深める大切な要素となっていました。

11年後の東田直樹——今を語る姿

最後に番組は、現在の東田直樹さんの活動へ。
教育関係者に向けて幼少期の経験を語り、「運動会は好き。できないことがあっても普段見られない風景を見られるから」と話したことが取り上げられました。

また、自閉症に関する発信も続け、「支援が必要ない人にも福祉について意見を語ってほしい」と前向きに語る姿が映されました。

まとめ

今回の再放送は、11年経っても色あせないテーマを改めて浮かび上がらせました。

・『自閉症の僕が跳びはねる理由』が世界中の家族を結んだ
・“待つこと”の大切さを教えてくれたミッチェルさん
・未来につながる研究への直樹さんの決断
・ノルウェー、ニューヨークの家族が見つけた「理解」
・そして、今を生きる東田直樹さんの力強い言葉

自閉症という枠を超えて、「人を理解するとはどういうことか」を投げかける深い時間でした。


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