和楽器の響きを生み出す“寒の糸”の世界へ
滋賀県長浜市から生中継で伝えられた“寒の糸づくり”。冬の澄んだ空気のなかで生糸を扱い、和楽器の音色を支える弦が作られていく様子は、技や経験だけではなく、季節そのものと向き合う作業でした。コマを回して糸を撚るリズム、冷たい水に浸す瞬間…すべてが琴や三味線の響きにつながっていると感じられます。この記事では、放送された内容をしっかり踏まえながら、『寒の糸』の魅力と工程を深く見ていきます。
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寒の糸ってどんな弦?
冬に作られる絹の弦『寒の糸』は、和楽器の音を支える存在です。原料は絹の生糸。琴や三味線など、伝統的な邦楽器で使われてきた素材で、現代では化学繊維の弦も多い中、絹ならではのしなやかさと、余韻の残る響きが高く評価されています。冬の冷たい空気と水の中で加工されることで繊維が引き締まり、音の強さや透明感を生みやすいことから、この時期に作られた弦は特別視されてきました。
絹は湿度や温度に敏感で扱いが難しい反面、音に深みが出るため、演奏家にとっては欠かせない素材です。だからこそ『寒の糸』には、弾いた瞬間の柔らかい立ち上がりや音の伸びの美しさが宿ります。
“コマより”の技が音を決める
放送で紹介された中心の工程が“コマより”。束ねた生糸の端にコマをつけて回転させ、その回転によって生糸同士を撚り合わせていきます。単に糸を寄せるだけではなく、撚りの強さ・回数・スピードなど、一本一本に合わせた加減が必要です。職人は糸の重さ、湿り具合、糸の癖まで見極めて作業します。
この“コマより”によって、糸の内側にほんの少し空気の層が残り、それが和楽器特有の柔らかな響き、遠くまで届く音の伸びをつくります。回転のリズムや撚りの角度が少し違うだけで音が変わるため、まさに経験の積み重ねが形になる工程です。
冬の水で糸を締める理由
寒の糸づくりには冬が欠かせません。冷たい水に生糸を浸してから作業を行うことで、繊維が引き締まり、強さとしなやかさが増します。生糸は気温と湿度の変化に敏感で、夏場のように湿気が多い時期だと糸がふやけてしまい、均一な撚りが難しくなります。
冬の冷たい空気の中で扱うことで、糸本来の質と響きがより際立つため、昔から“寒仕込み”として特別に区別されてきたのです。天候までも品質に影響する、まさに季節とともに生まれる弦です。
長浜市が受け継ぐ職人の力
滋賀県長浜市は、養蚕や製糸が盛んな地域で、邦楽器の弦づくりが長く受け継がれてきました。和楽器の音色を決める弦づくりには、機械では代替できない繊細さが求められ、今も手作業の現場が中心です。
放送で見られた作業一つひとつに、和楽器の音を未来へつなぐという強い思いが込められていました。糸一本の変化が音を変えるからこそ、職人たちは毎年寒い季節を迎えるたびに、自然のコンディションを読み取りながら向き合っています。
その成果が、全国の邦楽器演奏家たちの奏でる音に現れ、それぞれの舞台や教室、演奏会へと届けられていきます。
まとめ
『寒の糸』は、ただの弦ではなく、冬の自然、絹の特性、職人の技術が重なって生まれる和の音の源です。今回の中継では、長浜市の現場から、その工程やこだわりがしっかり伝えられていました。冷たい空気の中で生まれる一本の糸が、和楽器の響きを形づくっていることを改めて感じられる内容でした。
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