苦いもの克服のヒミツを探る
大人になると、なぜ苦い味を自然に楽しめるようになるのか。子どものころは顔をゆがめたゴーヤやピーマンが、いつのまにか“うま味”や“深み”として感じられるようになる。この変化には、身体の仕組みと経験の積み重ねが大きく関わっています。今回の『チコちゃんに叱られる!』では、人気芸人による3か月の実証実験も登場し、苦味を克服する道のりをたどっていきます。
NHK【チコちゃんに叱られる!】日本人がとろとろ食感を愛する“滞在時間の秘密”とは?うまみを強く感じやすい理由ととろみ料理がおいしくなる仕組み|2025年11月14日
子どもが苦い味を嫌う理由は「本能」にある
人間は生まれつき、味覚の中でも苦味を「危険のサイン」として捉えやすくできています。苦味は古来、自然界にある毒物とつながることが多かったため、子どもが苦い食べ物を避けるのは当然の反応です。甘味やうま味のように“生きるために必要な栄養”を知らせる味とは異なり、苦味は「避けたほうがいい」ものとして認識される傾向があります。だからこそ、小さな子がコーヒーや苦味野菜を嫌がるのはごく自然なことです。
年齢が上がるにつれて、この警戒反応は徐々に弱まっていきます。脳がより多くの経験を積み、「これは食べても大丈夫」という情報を蓄積することで、苦味に対する拒否感が少しずつ薄れていきます。
大人になるほど苦味を感じにくくなる
味覚は年齢とともに変化します。特に、苦味や酸味の強さは、成長するにつれてわずかに鈍くなると言われています。つまり、子どもが「すごく苦い」と感じた食べ物が、大人になると「そこまで強くない」と感じられるようになることがあります。
この“味の感じ方の変化”が、苦いものを受け入れやすくする大きなポイントです。
さらに、大人は日々の食事でさまざまな味に触れています。複雑な味や深みのある風味を楽しむ力が育つことで、苦味を「奥のある味」としてポジティブに捉えるようになっていきます。
経験と「慣れ」が苦味克服のカギになる
苦味を楽しめるようになるもう一つの理由は、くり返し食べることで味に慣れていく、という点です。たとえば、コーヒーやお茶、ビール、ゴーヤのように苦味を持つ食品も、何度か口にするうちに、苦味の奥にある香りや甘味、食べたあとに広がる心地よさに気づくようになります。
苦味と結びついたポジティブな体験――
食後のリラックスタイムや、仲間と過ごす食事の楽しさなども、味の好みに影響します。脳が「苦味=不快」から「苦味=心地よい時間の一部」と認識を変えることで、“おいしさの感じ方”が大きく変わっていきます。
遺伝・個人差・味覚の多様性も大きな要素
苦味にはさまざまな種類があり、感じ方にも個人差があります。苦味を強く敏感に感じるタイプもいれば、同じ食べ物でも苦く感じにくい人もいます。これは味を受け取るセンサーの遺伝的な違いによるものです。
また、苦味のある食材に含まれる成分が、身体にとってプラスに働く場合もあります。コーヒーに含まれる成分が気分を落ち着かせたり、お茶がリラックスに役立ったり、ビタミン豊富な野菜が健康につながるように、苦味の“先にあるメリット”も、好みを変える要因のひとつです。
こうした多くの要素が重なり合い、苦い味が“好きな味”へと変わっていきます。
まとめ
苦い味が好きになる理由は、身体の変化だけではありません。年齢とともに味覚が変化し、経験を重ねながら味に慣れていき、そこに個人差や文化的な背景が加わることで、「苦味=大人の味」として楽しめるようになります。今回の『チコちゃんに叱られる!』では、人気芸人が苦味克服の実証実験に挑戦する様子も放送される予定です。まだ放送前のため、くわしい内容がわかりしだい、記事をあらためて書き直します。
苦味を楽しめる料理・飲み物の広がり

ここからは、私からの提案です。子どものころは苦手だった苦味が、大人になると“おいしい”に変わることがあります。ここでは、筆者が実際に感じた変化を踏まえながら、苦味を楽しめる料理や飲み物を 紹介します。苦味がゆっくりと好きになる入り口として、無理なく親しめる組み合わせをまとめました。
コーヒー系
エスプレッソの香りや深いコクが苦手だった人でも、エスプレッソトニックのように炭酸を合わせると、苦味がすっと軽く感じられます。エスプレッソのしっかりとした風味が炭酸の爽快さで引き立ち、大人の味を楽しむ最初の一歩として試しやすいです。さらに、カフェモカのようにチョコの甘さが入った飲み方は、苦味がふわっとやわらぎ、コーヒーの香りを受け入れやすくなります。子どものころには強く感じた苦味でも、甘さと香りのバランスが取れることで自然に楽しめるようになります。
料理
ゴーヤチャンプルーは、ゴーヤの苦味が豆腐や卵のうま味で包まれて、苦手意識がある人でも挑戦しやすい料理です。沖縄料理の定番として知られていて、噛むほどに広がるゴーヤの香りがアクセントになります。春に出回る菜の花のおひたしは、ほんのりした苦味が季節を感じさせてくれて、口の中にすっきりした余韻が残ります。また、ルッコラのサラダは胡椒のような香りが特徴で、苦味が料理全体の味を引き締める役割を持っています。大人になると、この香りと苦味の組み合わせがとても心地よく感じられます。
アルコール類
ベルギービールのホワイト系は、香りや甘みが前に出る種類で、強い苦味よりも爽やかさを感じられます。初めてビールに挑戦する人にとって、とても入りやすい味わいです。ハイボールはウイスキー特有の香りや苦味が炭酸で控えめになり、すっきり飲みやすくなります。さらに、コーヒーリキュールを使ったカルーアミルクのような飲み物は、コーヒーの苦味とミルクの甘さが合わさって、まろやかな口当たりになります。甘さがあることで、苦味が柔らかく感じられ、アルコールへの入り口としても選ばれることが多いです。
このように、苦味の感じ方は組み合わせで大きく変わります。大人になってから出会う“ちょうどいい苦味”は、食事や飲み物の世界を広げてくれます。
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