東京の夜と朝をつなぐ一冊に出会う場所
このページでは『ドキュメント72時間(2025年12月19日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
舞台は、東京・大塚駅前にある24時間営業の書店 山下書店 大塚店。眠らない街の一角で、72時間にわたり人と本の関係を見つめた回です。デジタルが当たり前になった今も、なぜ人は書店に足を運ぶのか。その答えが、昼と夜をまたいで静かに浮かび上がってきます。
24時間営業の書店という舞台と番組の狙い
舞台となったのは、東京・大塚駅前にある24時間営業の書店 山下書店 大塚店 です。品ぞろえは約8万冊と、街の本屋としては十分な規模を持ちながら、大型書店ほどの広さはありません。その分、棚と棚の距離が近く、偶然目に入った背表紙に手が伸びやすい空間になっています。
この店が特別なのは、昼も夜も同じように扉が開いていることです。終電後でも、早朝でも、本を探すことができます。全国で書店が減り続け、この10年で約3割が姿を消した中で、24時間営業を続ける存在はとても珍しくなりました。
番組は、この場所を通して「なぜ今も人は書店に来るのか」「本はどんな役割を持ち続けているのか」を、72時間という時間の積み重ねで描いています。本そのものよりも、本を選ぶ人の背景に焦点が当てられているのが、この回の特徴です。
仕事や情報収集のために本を手に取る人たち
取材初日、店に来ていた不動産業の男性は、マンション価格の高騰や市場動向を解説する本を読んでいました。普段は本が苦手だと話しながらも、仕事に必要な流れを知るため、あえて書店に足を運んでいます。ネットで調べるよりも、まとまった形で知識を得られる点に意味を感じていました。
別の日には、管理職の男性がビジネス書コーナーで『Excel』の本を熱心に読み込んでいました。まもなく定年を迎える年齢ですが、「覚えておけば役に立つ」という思いから、学ぶことを止めていません。
大学3年生の女性は、『TOEIC』の例題集を手に取り、これからカフェで勉強する予定だと話します。進路選択に焦りを感じながらも、留学や将来を見据えて準備を続けています。書店は、仕事や学びに向き合う人たちの現実的な場所として機能しています。
家族や誰かを思って選ばれる本
この書店では、自分のためではなく、誰かを思って本を選ぶ姿も印象的に映ります。夜の仕事を終えた45歳の男性は、深夜に店を訪れ、5歳の子どものために『ウルトラマン』の本を探していました。時間帯を選ばず本が買えるからこそ、親としての気持ちを形にできます。
また、親子で来店していた女性客では、韓国出身の母と、その娘の姿がありました。娘はこの店の常連で、母に料理雑誌をプレゼントとして選んでいます。本を介して気持ちを伝える様子が、さりげなく描かれていました。
本は勉強や仕事の道具であるだけでなく、誰かを思う行動そのものとして選ばれることがある。そのことを、この書店の日常が静かに教えてくれます。
深夜に訪れる人が抱える事情と本の役割
深夜0時を過ぎると、店内では新刊を並べる作業が始まり、書店の顔が少し変わります。終電後にやって来るのは、昼間とは異なる生活リズムを持つ人たちです。
深夜2時半過ぎに来店した男性2人組は、相談事で話し込むうちに夜中になってしまったと話します。その流れで「心が落ち着く」と勧められた書道に興味を持ち、『ペン字練習帳』を購入しました。
深夜1時半に訪れた48歳の塾講師の男性は、倉庫を借りるほどの本好きです。帰化した在日韓国人で、日本語を読めない母に代わり、幼い頃から自力で本を読んできました。差別などで悩んだ時期、本を読み続けることで救われた経験があり、今も深夜の書店は心の拠り所になっています。
朝から昼にかけて見える日常と学び直し
朝5時、店に入ってきたのは61歳の男性です。ミステリーやSFのコレクターで、蔵書は1万冊以上あります。若い頃は本屋で働き、現在は工事現場で働きながら、1日に3軒の書店を巡る生活を続けています。本は趣味であり、生活の一部です。
朝8時頃には、コンビニの夜勤明けの男性が来店します。母親の介護のため週5で夜勤をしており、書店で過ごす短い読書の時間が今の楽しみだと話します。
昼前には、保育士の女性が仕事に使えそうな絵本を探しに来ていました。業界に出戻って3年目で、まだ自信を持てない場面も多く、自己肯定に関する本に支えられています。書店は、日常を立て直す場所としても使われています。
年齢や立場を超えて続く人生と読書の時間
この72時間には、若者から高齢者まで、幅広い世代が登場します。77歳の男性は、数学研究者の道を諦めた過去を持ち、自分が亡くなった後、読み切れなかった学術書3冊を仏壇に供えてほしいと話します。本への思いが、人生の終わりまで続いています。
72歳の男性は暴走族マンガが好きで、若い頃の自分を重ねながら、今もその世界に憧れを持っています。
リウマチを患いながら働く60歳のシングルマザーは、ファンである 武豊 の本を手に取り、子どものために働き続けています。
本は、知識を得るためだけのものではありません。それぞれの人生の節目や感情に寄り添い、年齢や立場を超えて、人と共にあり続けています。
まとめ
ドキュメント72時間「東京 眠らない書店で」は、山下書店 大塚店という24時間営業の書店を通して、東京で生きる人々の72時間を静かに映し出しました。
仕事のため、家族のため、心を落ち着けるため、学び直すため。理由は違っても、人は本を手に取り、自分の人生と向き合っています。
眠らない書店は、ただ本を売る場所ではなく、人生の途中に立ち寄れる場所として、今日も明かりを灯し続けています。
24時間営業が続く理由は「立地」ではなく「使われ方」にあった

24時間営業の書店が全国で少なくなる中、この店が今も続いている背景には、場所の便利さ以上に、人にどう使われているかという積み重ねがあります。番組に映った72時間の中で見えてきたのは、売り場としての書店ではなく、生活の一部として自然に組み込まれている姿でした。時間帯ごとに役割を変えながら、人の暮らしに寄り添っていることが、この店を支えています。
時間のすきまに入り込む「生活の途中の場所」
この書店は、目的を強く持って訪れる人だけでなく、仕事の合間、夜勤明け、終電後、早朝の静かな時間など、生活の途中に立ち寄られる場所として使われています。番組では、仕事帰りに情報収集のために本を開く人、夜中に気持ちを落ち着けるために棚を眺める人、朝の用事の前に短時間だけ立ち寄る人の姿が映っていました。本を買う行為そのものより、そこにいる時間が自然に生活に溶け込んでいることが伝わってきます。必要なときに開いているという事実が、店を特別な存在にしています。
深夜と早朝にこそ意味を持つ書店の役割
深夜には、日中とは違う事情を抱えた人が集まります。夜の仕事帰りの人、相談事で夜遅くなった人、静かな場所を求める人が、本を通して気持ちを整えています。早朝になると、夜勤明けの人や、本を生活の一部として続けてきた人が、当たり前のように訪れます。昼に開いているだけでは届かない人たちにとって、この書店は必要な場所になっています。24時間営業は特別なサービスではなく、暮らしのリズムに合わせた結果として機能しています。
「買うため」だけではない使われ方の積み重ね
番組を通して見えたのは、この店が単なる購入の場ではないという事実です。本は仕事の道具になり、家族への贈り物になり、心を落ち着ける存在にもなっています。目的が決まっていないまま棚の前に立ち、思いがけない一冊と出会う使われ方もありました。人それぞれの理由で何度も使われることが、この書店を支える力になっています。立地の良さだけでは説明できない、使われ方の厚みが、24時間営業を続ける理由として静かに積み重なっています。
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