路地裏の小さな店で、人はなぜ包むのか
このページでは『ドキュメント72時間(2025年12月26日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
渋谷から車で10分ほどの場所にある、東京・三軒茶屋の路地裏。人通りの多い大通りから一本入った先に、包装用品だけを専門に扱う店があります。番組はこの店にカメラを据え、3日間にわたって訪れる人たちの姿を追います。何かを包むために店を訪れる人たちが、どんな思いを胸に秘めているのか。包むという行為の奥にある時間や気持ちが、静かに映し出されていきます。
三軒茶屋の路地裏にある包装用品の専門店
番組の舞台となるのは、東京・三軒茶屋の細い路地にある包装用品の専門店です。外観は決して派手ではなく、通り過ぎてしまいそうな佇まいですが、扉を開けると印象は大きく変わります。店内には包み紙、リボン、袋、箱などの包装資材が所狭しと並び、その数はおよそ7000点にのぼります。業務用として使われる本格的な商品もあれば、個人でも少量から購入できるものもあり、用途は実にさまざまです。
この店として知られているのが、パッケージプラザ 三軒茶屋店です。三軒茶屋駅から徒歩数分という立地で、地域に根ざした存在として長く利用されてきました。包装用品の専門店という珍しさもあり、仕事で使う人と日常の用事で訪れる人が同じ空間に集まるのも特徴です。
お菓子を包む、孫との時間を思い浮かべながら
店を訪れる女性の一人は、お菓子を小分けにして孫たちとお楽しみ会を開くため、袋や包み紙を選びに来ています。同じお菓子であっても、どんな袋に入れるか、どのくらいの大きさにするかで、受け取る側の印象は変わります。棚の前で商品を手に取り、色やサイズを比べながら考える姿からは、孫たちの顔を思い浮かべている様子が伝わってきます。
包装は単なる作業ではなく、集まる時間を楽しいものにするための準備です。包む前のこのひとときが、これから始まるお楽しみ会につながっていることが、映像を通して静かに示されます。
亡くなった猫を送るための、静かな選択
別の場面では、亡くなった猫を火葬場に運ぶための箱を探しに来た人が登場します。華やかな装飾や目立つ色ではなく、落ち着いた形やしっかりした作りのものを選ぶ様子が映されます。どんな箱に入れるかという選択には、送り出す側の気持ちが自然と表れます。
包装用品の店は、贈り物だけでなく、別れの場面にも関わっています。包むという行為が、最後の時間を支える役割を持っていることが、このエピソードから伝わってきます。
ファンに手渡す一瞬のためのグッズ包装
ファンのためにグッズを一つずつ袋づめしようと考え、店を訪れるバンドマンの姿も描かれます。ライブ会場で直接手渡す場面を思い浮かべながら、どの袋が合うのかを考えます。中身は同じでも、袋の素材や大きさによって受け取る印象は変わります。
人に手渡す、その一瞬のために時間をかけて選ぶ姿から、ファンへの思いが感じられます。包装は表に出る部分ではありませんが、その準備の時間が、受け取る人との関係を形づくっています。
包むという行為に集まる、それぞれの人生
この回で描かれるのは、特別な事件や大きな出来事ではありません。誰かに渡す前の短い時間、どう包もうかと考えるその瞬間です。お菓子を分ける人、別れを迎える人、応援の気持ちを届ける人。それぞれの理由は違っても、包むという行為を通して、人生の一場面が交差します。
三軒茶屋の路地裏にある小さな包装用品店は、そんな思いが集まる場所として映し出されます。包み紙や袋の向こう側にある気持ちに、静かに目を向ける30分です。
放送前のための補足
この記事は放送前の情報をもとに作成しています。実際の放送内容が明らかになり次第、具体的な描写やエピソードを反映して書き直します。
NHK【ドキュメント72時間】東京 眠らない書店で 24時間営業の本屋・山下書店大塚店 人生が交差する場所|2025年12月19日
贈り物・別れ・応援という3つの場面で見えてきた「包む意味」

番組を見ていて強く印象に残ったのは、包むという行為が場面ごとにまったく違う役割を持っていることです。どれも同じ包み紙や袋を使っているのに、そこに込められる気持ちは大きく異なります。ここでは、番組の内容をふまえつつ、筆者が取材映像から感じ取った視点として整理してみます。
贈り物として包むということ
贈り物を包む場面では、包む時間そのものが相手を思う時間になっています。どの袋に入れるか、色はこれでいいのか、大きさは合っているか。選ぶ手つきは自然とゆっくりになり、頭の中には渡す相手の顔が浮かびます。包み終えた瞬間に完成するのは、物だけではありません。「喜んでほしい」という気持ちが形になった状態が、そこにあります。包装は中身を隠すためではなく、思いをそっと乗せるための役割を果たしています。
別れの場面で包むということ
別れの場面での包装は、贈り物とはまったく違う静けさを持っています。飾り立てることよりも、きちんと包むことそのものが大切になります。箱の形や強さを確かめる仕草からは、送り出す側の覚悟が伝わってきます。ここでの包装は、感情を盛り上げるためではなく、気持ちを落ち着かせ、区切りをつけるための行為です。包むことで、心の中の整理が少しずつ進んでいく様子が感じられます。
応援として包むということ
応援の場面で包む行為は、気持ちを後押しするための準備です。中身は同じグッズでも、どんな袋に入れるかで伝わり方が変わります。渡す瞬間を想像しながら選ぶ時間には、期待や願いが自然と込められています。派手さよりも、「ちゃんと届いてほしい」という思いが前に出るのが特徴です。ここで包まれているのは物以上に、励ましや共感そのものだと感じます。
贈り物、別れ、応援。場面は違っても、共通しているのは、包むという行為が人の気持ちを整え、相手へ向けて送り出す準備になっているという点です。包装用品店という場所が、人生のいろいろな節目と静かにつながっている理由が、ここにははっきりと表れています。
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