山を仰ぎ、人は暮らしをつくる 〜小さな旅が映した磐梯山の時間〜
このページでは『小さな旅(2025年12月21日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
舞台は福島県会津地方にそびえる 磐梯山。番組は、山を観光地としてではなく、暮らしと心のよりどころとして見つめていきます。湧き水、登山、塩づくり、子どもたちへの案内という一つ一つの場面から、磐梯山と人との関係が静かに浮かび上がります。
秋の磐梯山と、湧き水に支えられた日常
山本哲也さんが最初に足を止めたのは、秋の気配が深まる磐梯山のふもとでした。ここでは今も、山から湧き出る水を汲み、生活の中で使い続ける人たちの姿があります。磐梯山に降った雨や雪は、長い時間をかけて地中を通り、伏流水となって再び地上に現れます。その水は冷たく澄み、日々の飲み水としてだけでなく、暮らしの安心を支える存在です。
鈴木健信さんは、その湧き水を大切に自宅へ持ち帰り、神棚に供えていました。水を供える行為は特別な儀式ではなく、山の恵みを日常の中で受け止める自然な行動として続いています。鈴木さんは、磐梯町に住んで良かったと語り、毎日見上げる磐梯山が、暮らしに落ち着きと誇りを与えていることを静かに伝えました。清らかな水に育まれたイワナの存在も、この土地の自然環境の豊かさを物語っています。
山に登ることで見えてくる、心のよりどころ
山本哲也さんは、実際に磐梯山へ登り、山岳ガイドの高埜直文さんに話を聞きます。登山道を進むにつれて、視界が開け、足元の石や土の感触が変わっていきます。高埜さんは、山を案内する立場でありながら、磐梯山を特別な存在として語ります。それは仕事場というより、自分の心を預けられる場所だからです。
成層火山である磐梯山は、1888年の噴火によって大きく姿を変えました。その歴史を知ることで、山の静けさの奥にある力強さや怖さも感じ取れるようになります。高埜さんは、何度も山に向き合い、歩き続ける中で、磐梯山が心のよりどころになっていったと話します。登ることは頂上を目指す行為であると同時に、山と自分の距離を確かめる時間でもあります。
温泉水を煮詰めて生まれる『塩』と人生の転機
番組では、栗城光宏さんの塩づくりの様子が紹介されました。栗城さんは、磐梯山に湧く温泉水を大きな鍋で煮詰め、少しずつ『塩』を作っています。この温泉水は、太古の海水が地下で変化したもので、一般的な海水塩とは成分や味わいが異なります。火にかけ、時間をかけて水分を飛ばす作業は、忍耐と集中を要します。
栗城さんは、もともと音楽家として活動していましたが、祖父が倒れたことをきっかけに実家へ戻り、塩づくりを始めました。人生の進路が変わる中で、山の恵みと向き合う仕事を選んだことが、現在の暮らしにつながっています。温泉水が塩へと姿を変える過程は、栗城さん自身の歩みとも重なり、磐梯山が人生の転機を受け止める存在であることを感じさせます。
子どもたちに伝えたい、山を仰ぐ記憶
高埜直文さんは、今度は山岳ガイドとしてだけでなく、案内役として小学生たちを磐梯山へ連れて行きます。子どもたちは山道を歩き、立ち止まり、目の前に広がる景色を見上げます。息が上がる場面もありますが、自然の中で過ごす時間そのものが、体に残っていきます。
高埜さんは、子どもたちに特別な言葉を投げかけるのではなく、山を体験する時間を大切にしていました。そして、将来大人になっても、お盆やお正月にこの土地へ戻り、磐梯山を眺めてほしいと語ります。山を仰いだ記憶は、成長しても消えず、ふるさとを思い出すきっかけになります。
磐梯山とともに続く、変わらない暮らしの時間
今回の小さな旅が描いたのは、特別な出来事ではなく、磐梯山とともに続く日常でした。湧き水を汲むこと、山に登ること、温泉水から塩を作ること、子どもたちに山を案内すること。その一つ一つが、山を中心につながっています。
福島県磐梯町では、磐梯山はただの背景ではありません。毎日見上げる存在であり、暮らしの軸であり、心を支えるよりどころです。山を仰ぎながら生きる時間が、これからも静かに積み重なっていくことを感じさせる内容でした。
NHK【小さな旅】歩く人 迎え続けて 〜和歌山県 熊野古道〜|世界遺産の道を支える人々と湯の峰温泉・皆地傘笠|2025年12月14日
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