“農”で垣根を越える日々が教えてくれること
このページでは『Dearにっぽん(2025年12月21日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。広島県福山市を舞台に、国籍や立場の違いを抱えながらも、農業を通して人と向き合い続ける国際カップルの姿が描かれました。畑で育つのは野菜ですが、その背景では、人の孤立や不安、地域の課題が少しずつほどけていきます。農業、福祉、地域、宗教といった重なり合うテーマが、日々の作業の中で自然につながっていく様子が、この回の大きな軸になっています。
広島・福山で始まったアジア野菜の農業
インドネシア出身のカーエル・ファーミさんと、妻の千家茉子さんは、広島県福山市の郊外で農業を営んでいます。二人が主に栽培しているのは、アジア各地で親しまれてきたアジア野菜です。福山市は製造業が盛んな地域で、多くの外国人が暮らしています。そうした人たちにとって、アジア野菜は日々の生活の中で故郷を思い出させる大切な存在です。畑で収穫された野菜は、直売などを通じて地域に届けられ、日本人にとっても新しい食文化と出会うきっかけになっています。単なる珍しい野菜ではなく、暮らしと心を支える作物として根づいています。
来日当初の孤立が原点になった思い
ファーミさんは技能実習生として来日しましたが、日本での生活の中で孤立を感じる時期がありました。周囲から見下されていると感じた経験は、強く心に残ったといいます。その体験があったからこそ、同じように居場所を見つけにくい人を支えたいという思いが生まれました。農業を選んだ理由は、言葉や立場の違いを越えて人が関われる場をつくれると考えたからです。畑での作業は、黙々と手を動かす時間があり、人それぞれのペースが尊重されます。その空気感が、人の緊張を少しずつほどいていきます。
農業と福祉が交わる畑の役割
二人の農園では、福祉施設と連携し、障害のある人たちにも畑仕事に参加してもらっています。農作業は、土に触れ、苗を植え、収穫をするなど、体を動かしながら進める仕事が中心です。複雑な説明や高度な技術を必要としない作業も多く、それぞれが役割を持って関われます。うつ病を患う森田さんもその一人で、畑に通う中で人と接することへの恐怖がやわらいでいった様子が紹介されました。茉子さんの明るい関わり方が、無理のない距離感を生み、安心して作業できる環境につながっています。
ほうれん草の町・福山での地域支援
福山市では、戦後からほうれん草の栽培が盛んに行われてきました。今でも地域の人々にとって誇りの作物です。ファーミさんと茉子さんは、高齢で作業が難しくなった農家の手伝いを続けながら、若手農家の多木さんにも助言をしています。経営に行き詰まりを感じていた多木さんは、二人と出会ったことで、新しい視点や取り組み方を知りました。茉子さんは畑仕事の合間に農家の集まりにも足を運び、地元のほうれん草をPRするホームページ作りにも関わります。若手の発想とベテランの経験が交わり、地域全体で農業を支え合う動きが生まれています。
宗教への誹謗中傷と向き合う現実
番組では、ファーミさんがイスラム教の参拝をしている様子がSNSで拡散され、誹謗中傷を受けた出来事も取り上げられました。宗教への理解不足が、簡単に人を傷つけてしまう現実が映し出されます。それでもファーミさんは、地域との関係を断つことはしませんでした。距離のあった男性のビニールハウスの張り替え作業を手伝い、その後は地元農家と一緒にほうれん草の袋詰め作業にも参加します。同じ場所で汗をかく時間が、言葉以上に気持ちを伝え、少しずつ壁を低くしていきました。
農を通して越えていく人と人の壁
畑での作業は、国籍や宗教、障害の有無を意識する前に、目の前の作物と向き合う時間を生み出します。土を耕し、野菜を育て、収穫を分かち合うという日常の積み重ねが、人と人の距離を自然に縮めていきます。ファーミさんと茉子さんが続けてきたアジア野菜の農業は、福山の地域の中で、人が再びつながる場になっています。番組が伝えたのは、特別な答えではなく、畑から始まる小さく確かな変化でした。
まとめ
Dearにっぽん(2025年12月21日放送)は、国際カップルが福山で続ける農業の現場を通して、農が持つ人をつなぐ力を描きました。孤立の経験、福祉との連携、地域農業の支え合い、宗教への偏見という現実に向き合いながら、畑で重ねられる一つ一つの行動が、確かに垣根を越えていく様子が伝わってきます。
Eテレ【ETV特集】上籾棚田で広がる循環型農業の奇跡 外国人移住者カイル・ホルツヒューターが描く“パーマカルチャーの村”|2025年11月8日
アジア野菜が日本の食卓に入りはじめたことで見えてきた変化

ここで、番組内容を調べる中で見えてきた視点として、アジア野菜が日本の食卓に広がることで、地域の食文化がどう変わる可能性があるのかについて紹介します。これは番組の中心テーマである「農で垣根を越える」という考え方とも重なり、畑の外、食卓の上でも静かに起きている変化です。
日本の家庭料理に少しずつ増える野菜の選択肢
日本の家庭料理は、季節の野菜を使い、素材の味を生かす形で長く受け継がれてきました。そこにクウシンサイやレモンバジル、唐辛子といったアジア野菜が加わることで、使える野菜の幅が広がっています。炒める、さっとゆでる、生で香りを楽しむなど、調理の選択肢が自然に増え、毎日の食事に変化が生まれています。特別な料理ではなく、普段のおかずの中に少しずつ溶け込んでいく点が特徴です。
地域の食文化が外の世界とゆるやかにつながる
アジア野菜を地域で育て、地域で食べる流れができることで、その土地の食文化は外の世界とゆるやかにつながります。外国人にとっては馴染みのある食材が手に入り、日本人にとっては新しい味との出会いになります。同じ野菜を囲みながら、育った文化の違いを知るきっかけが生まれ、食を通じた交流が日常の中に入り込んでいきます。これは、観光やイベントではなく、暮らしの中で起きる変化です。
新しい「ご当地野菜」になる可能性
アジア野菜が特定の地域で継続して育てられるようになると、その土地ならではの野菜として認識される可能性もあります。気候や土に合った品種が選ばれ、育て方が工夫されることで、味や使い方に地域性が生まれます。こうした積み重ねは、従来の伝統野菜とは違う形のご当地野菜として定着していく道にもつながります。地域農業の新しい価値として、食卓から広がっていく可能性があります。
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