棟方志功と一斤のパン
このページでは『グレーテルのかまど(2025年12月22日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。今回のテーマは、版画家 棟方志功 の暮らしと創作を支えた朝食の『グラハムブレッド』です。一心不乱に板と向き合い続けた芸術家が、毎朝口にしていたパンには、作品と同じく素材を信じる姿勢がそのまま表れています。
お菓子と物語を結ぶ番組『グレーテルのかまど』の世界
グレーテルのかまどは、パンやお菓子を通して、その背景にある人物や物語を描いてきた番組です。作り方だけを追うのではなく、「なぜその食べ物が大切にされてきたのか」「どんな時間の中で食べられていたのか」を丁寧に映し出します。今回のテーマである『グラハムブレッド』も、特別なごちそうではなく、毎日の暮らしに根付いた存在として描かれます。番組全体を通して、食べ物が人生や創作と静かにつながっている様子が伝わってきます。
版画家・棟方志功が歩んだ創作の人生
棟方志功は、木版と真正面から向き合い続けた版画家です。板に刻まれる線は荒々しくもあり、どこか人のぬくもりを感じさせます。国内外で高く評価され、「世界のムナカタ」と呼ばれるようになってからも、創作の姿勢は変わりませんでした。自然や人の営みを信じ、木が持つ力を引き出すことに人生を捧げた姿は、作品だけでなく、その暮らしぶりにも表れています。
アメリカで出会い、心から惚れ込んだ『グラハムブレッド』
番組で紹介されるのが、棟方志功がアメリカで出会った『グラハムブレッド』です。棟方自身が「すっかりかぶれていた」と語るほど、このパンを気に入っていたことが伝えられています。グラハム粉は小麦の皮なども含んだ粗挽きの粉で、白い小麦粉とは違う力強い香りがあります。素材を削りすぎず、そのままを生かす考え方は、棟方の創作と重なります。このパンは、異国での体験とともに、棟方の暮らしの一部になっていきました。
『グラハムブレッド』の特徴と味わい
『グラハムブレッド』は、噛むほどに小麦の味が広がるパンです。生地は見た目以上にしっかりしていて、食べごたえがありますが、焼き上がりはふっくらとしています。トーストすると表面が香ばしくなり、食感の変化も楽しめます。派手さはありませんが、毎日食べても飽きにくい味わいで、朝食に向いたパンとして親しまれてきました。
グラハムブレッドの材料
[生地]
・強力粉…175g
・グラハム粉…50g
・ライ麦粉…25g
・グラニュー糖…15g
・塩…5g
・スキムミルク…5g
・無塩バター…13g
・インスタント・ドライ・イースト…3g
・水…180ml
・強力粉(打ち粉用)…適量
・薄力粉(仕上げ用)…適量
[チョコナッツクリーム]
・チョコレートソース…40g
・プラリネペースト…20g
[トッピング]
・ブルーチーズ…適量
・はちみつ…適量
・乾燥いちじく…適量
・お好みのジャム…適量
・アーモンド…適量
・ピスタチオ…適量
グラハムブレッドの作り方
・バターを常温に戻し、オーブンの発酵機能を30℃に設定する
・強力粉、グラハム粉、ライ麦粉、グラニュー糖、塩、スキムミルクを混ぜる
・イーストを水に溶かし、粉類に加えて混ぜる
・台に出し、こすりつけるようにこねる
・なめらかになったら叩きつけながらこねる
・薄い膜が張ったらバターを加え、さらにこねる
・油脂を塗ったボウルに入れ、30℃で60分発酵させる
・ガスを抜き、三つ折りにして30℃で30分発酵
・丸めて20分休ませる
・三つ折りにして40cmほどの長さに成形する
・天板にのせ、38℃で約50分発酵
・表面に薄力粉をふり、切り込みを入れて水を吹く
・200℃のオーブンで30分焼く
クリスマスを彩るアレンジと食べ方
番組では、基本の『グラハムブレッド』に季節感を加える食べ方も紹介されます。ブルーチーズとはちみつ、乾燥いちじくを合わせると、甘さと塩気がほどよく混ざり合います。チョコナッツクリームを塗り、ナッツを散らせば、パンがデザートのような存在になります。ジャムを塗るだけでも印象が変わり、一斤のパンからさまざまな楽しみ方が生まれます。
食べごろと保存の目安
焼き上がった『グラハムブレッド』は、冷めてからが食べごろです。時間を置くことで生地が落ち着き、味わいがはっきりしてきます。保存は翌日までが目安で、食べる前にトーストすると香ばしさが戻ります。毎朝の一枚が、創作に向かう力になっていたことを思い浮かべながら味わうと、番組の余韻がより深く感じられます。
Eテレ【グレーテルのかまど】シュガープラムはどんな伝統菓子?『クリスマスのまえのよる』に登場する甘い夢とコムフィットの秘密とは|2025年12月8日
棟方志功が大切にしていた朝の時間と創作の関係

ここでは、番組内容を補足する形で、棟方志功がどれほど朝の時間を大切にし、その時間が作品制作とどのようにつながっていたのかについて紹介します。派手な逸話ではなく、日々の積み重ねとしての朝の過ごし方に目を向けると、棟方の創作の芯がよりはっきり見えてきます。
朝の静けさの中で感覚を整えていた習慣
棟方志功は、一日の始まりをとても大切にしていました。若い頃から早起きを心がけ、周囲がまだ動き出す前の静かな時間帯に身を置くことで、自分の感覚を整えていたと伝えられています。朝の空気は余計な音が少なく、自然の変化をそのまま感じ取ることができます。この時間に得た感覚は、そのまま一日の制作の土台になっていました。朝は頭も体も澄んでおり、作品に向かう前に自分を整えるための欠かせない時間だったのです。
朝食と制作が切り離されていなかった日常
棟方の朝は、ただ制作に入るための準備時間ではありませんでした。朝食として口にしていたグラハムブレッドも、創作の流れの一部だったと考えられます。粗く挽いた小麦の風味をそのまま味わうパンは、体にしっかりとした感覚を与えてくれます。素材の力を信じ、余分なものを足さずに味わう姿勢は、木版画の制作とよく似ています。朝に体と心を落ち着かせ、食べることから始まる流れが、そのまま作品制作へとつながっていました。
朝の積み重ねが作品の力になっていった
棟方志功の作品に感じられる力強さや迷いのなさは、一瞬のひらめきだけで生まれたものではありません。毎朝同じように静かな時間を過ごし、素材と向き合う準備を重ねてきた結果として形になっていきました。朝の時間をおろそかにせず、日常のリズムを守り続けたことが、長く創作を続ける支えになっていたのです。朝の一枚のパンから始まる時間は、棟方にとって作品を生み出すための確かな原動力でした。
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