サイレントパンデミックの脅威を見つめる
このページでは『クローズアップ現代 サイレントパンデミック 薬が効かない耐性菌・密かな拡散(2025年1月28日)』の内容を分かりやすくまとめています。
気づかないうちに広がる薬剤耐性菌は、病気の常識を静かに変えつつあります。治るはずの感染症が治らない、その裏側で何が起きているのか。百日せきの異変、市中感染の増加、そして迫り来る世界的な危機。私たちの暮らしのすぐそばにある見えない脅威を掘り下げていました。
サイレントパンデミックとは何か
薬を飲めば治るはずの病気が、なぜか治らない。いま世界で静かに進む“サイレントパンデミック”の中心にいるのが、薬剤耐性菌です。
これは長年、私たちが使い続けてきた抗菌薬に細菌が慣れてしまい、効きにくくなる現象のことを指します。
怖いのは、爆発的に広がるわけではなく、気づかぬうちに市中へ広がっていく点です。以前は主に病院内の問題だと思われていたものが、今では健康な人の周りにまで忍び寄り、治りにくい肺炎や尿路感染症、手術後の感染など、生活のすぐそばに影響が及んでいます。
世界ではすでに年間100万人以上が薬剤耐性関連で亡くなり、将来は年間1000万人に達するという予測まであります。番組が扱うテーマは、まさに “薬が効かない時代” への警鐘です。
百日せきに起きた異変
番組の核となるのが、去年大きな話題となった百日せきの急増です。
激しいせきが長期間続くこの病気は、以前なら抗菌薬で早期に改善できていました。しかし最近の流行では、処方された薬がほとんど効かず、日常生活が壊れるほど長く苦しむ人が続出しました。
その背景にいたのが、薬への耐性をもつ百日せき菌。
これまでの第一選択薬であるマクロライド系抗菌薬が効かず、治療方針の見直しが迫られています。
学校や家庭で感染が広まり、体力の少ない乳児や高齢者への負担も深刻化。
「百日せき=治る病気」という常識が崩れ始め、番組では現場で起きている変化を具体的に映し出していました。
薬剤耐性菌はなぜ生まれるのか
薬剤耐性菌の増加には、長年の習慣や社会の仕組みが大きく関わっています。
まず、抗菌薬の“誤った使い方”です。
かぜの多くはウイルスが原因で、本来抗菌薬は必要ありません。しかし「早く治りたい」「念のため」という理由で抗菌薬を求める人が少なくありません。
さらに、
・処方薬を途中でやめる
・余った薬をとっておいて自己判断で飲む
・家族間で薬を分け合う
こうした行動が、耐性菌を育てるきっかけになります。
畜産や水産業でも抗菌薬が使われ、それが環境へ流れ出ることで、自然界にも耐性菌が広がっている現状があります。
人・動物・環境をまとめて考えるワンヘルスの視点が、なぜ必要なのかがよく分かります。
世界と日本の対策
薬剤耐性は国境を越える問題です。WHOは世界的な対策を進め、日本でも国家レベルのアクションプランが進行しています。
現在の日本の計画では、
・抗菌薬の使用量を大幅に減らす
・特定の薬を2013年比で50%削減する
・医療現場から市中まで幅広く監視する
といった数値目標が設定され、改善が進んでいます。
11月は「薬剤耐性対策推進月間」とされ、学校や地域での啓発も強化。
医療だけでなく、社会全体で取り組む必要性が強調されています。
番組で紹介される現場リポートは、この“静かだけれど深刻な危機”を改めて実感させるものです。
私たちができること
サイレントパンデミックを止めるには、個人の行動が大きな力になります。
番組では、専門家たちが共通して次の点を挙げています。
・必要ない抗菌薬を求めない
・処方された薬は指示どおり飲み切る
・余った薬を自己判断で使わない
・家族や友人と薬を共有しない
加えて、
・ワクチンの接種
・正しい手洗いと咳エチケット
・具合が悪い時は早めの受診
といった基本的な感染予防が、薬に頼らない環境作りに直結します。
「抗菌薬は魔法の薬ではない」
この意識を持つことが、未来の医療を守る第一歩です。
新しい治療法の可能性
薬剤耐性との戦いは、薬を減らすだけでは終わりません。
番組では次世代の技術として、
・迅速診断技術
・ゲノム解析
・新型抗菌薬
・ワクチン開発
など、医療の最前線を取材していました。
特に、遺伝情報を手がかりに原因菌を素早く特定する新技術は、治療の精度を大きく高める可能性があります。
薬剤耐性が進んでも「治療の選択肢を失わない」ための重要な一歩です。
薬剤耐性菌は、静かに、確実に広がり続けています。
番組が描く取材現場は、これがすでに“未来の問題”ではなく、“現在進行形の危機”であることを伝えていました。
だからこそ、ひとりひとりが正しい知識を持ち、薬と向き合う姿勢を変えることが、これからの医療を守る力になります。
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