歴史的圧勝が示す“これから”
2026年2月の衆院選で、自由民主党は単独で300議席を超える圧勝となり、第51回衆議院議員総選挙は「高市旋風」と呼ばれる歴史的な選挙になりました。
日本憲政史上初の女性首相となった高市早苗首相の下で、政治の力関係は一気に与党優位へ傾きます。同時に、食料品の消費税をゼロにする案など、家計に直結する政策も打ち出され、期待と不安が入り混じる状況です。
このページでは『クローズアップ現代(2026年2月9日)』の内容を分かりやすくまとめています。番組で紹介された事実をベースにしながら、政治や経済の専門家として知られる人たちの経歴や、日本の税制・選挙制度の基礎知識もそっと補い、読者の「結局、私たちの暮らしはどうなるの?」という疑問にこたえていきます。
高市旋風とは?史上初の女性首相がつかんだ「歴史的圧勝」
番組の冒頭では、まず今回の選挙がどれほど異例の結果だったのかが紹介されました。自民党は小選挙区と比例を合わせて316議席を獲得し、過去の「郵政選挙」(2005年)や、第二次安倍政権が誕生した2012年の総選挙をも上回る勢いだと説明されます。
選挙戦を仕切ったのが、選対委員長の古屋圭司衆院議員です。古屋圭司
古屋氏は各地を回りながら「保守層が戻ってきている」という手応えを“皮膚感覚”として感じていたと紹介されました。前回の政治資金問題で一度は落選した議員たちが、今回は次々と議席を取り戻したことも、保守票の「揺り戻し」を象徴する出来事として描かれます。
スタジオには、日本政治史の専門家である御厨貴さんが登場します。御厨貴
御厨さんは東京大学名誉教授で、近現代日本政治史やオーラル・ヒストリーの第一人者です。
その御厨さんが今回の結果を「女性総理の勝利は、日本社会に一種の自信を与えた」と分析したのが印象的でした。これまで“ガラスの天井”と言われてきた首相の座に女性が就いたことで、「変われる日本」という物語が有権者の心を後押しした可能性がある、と語ります。
背景として、日本では長く首相の多くを同じ政党・同じタイプの政治家が占めてきました。世界ではドイツやイギリスなど多くの国で女性リーダーが誕生してきた一方、日本はかなり遅れていたと言われます。その“遅れ”を一気に取り返した象徴が、今回の高市旋風だった、と番組は位置づけていました。
自民316議席、中道改革連合惨敗 何が票を動かしたのか
次のパートでは、勝者の裏で大きく議席を減らした勢力にも光が当てられました。特に取り上げられたのが、新党・中道改革連合です。中道改革連合
中道改革連合は、もともと公明党と立憲民主党などに所属していた議員が「中道の改革勢力の結集」を掲げて2026年1月に結成した政党です。略称は「中道」。自公連立解消後、公明党を中心に「右でも左でもない、中道からの改革」を目指して生まれた新しい枠組みでした。
しかし結果は、衆院の議席を選挙前の3分の1以下に減らす惨敗。党の顔でもあった野田佳彦、斉藤鉄夫という2人の共同代表が落選し、そろって辞任する事態となりました。野田佳彦
斉藤鉄夫
御厨さんは「世代交代どころか、人材がいないと言われるほどの痛手だ」と指摘し、中道の勢力図が一気に描き直される可能性に触れます。
一方、与党側では自民党が316議席、日本維新の会などを含む与党系全体では圧倒的多数を占め、憲法改正発議に必要な3分の2のラインも確保したと伝えられました。自由民主党
この「巨大与党」に対し、存在感を示せる野党がどこまで踏ん張れるかが、今後の国会運営の大きな焦点になります。
選挙区ごとの具体例として、番組では北海道や徳島、東京、神奈川といった地域の激戦区にも触れました。北海道10区では中道候補が自民候補にわずか21票差で競り勝ち、「自民全勝」をギリギリで阻んだケースもあったと紹介されます。
全国的な追い風が吹く中でも、地域の事情や候補者の地元活動によって結果が割れたことがわかります。
「食料品消費税ゼロ」案の中身と専門家が語る光と影
番組の後半では、生活に直結するテーマとして、消費税減税が大きく取り上げられました。
高市内閣の目玉の一つが、「食料品の消費税を2年間ゼロにする」という案です。政府が設置した日本成長戦略会議のメンバーで、クレディ・アグリコル証券のチーフエコノミストである会田卓司さんがスタジオ出演し、その狙いを説明しました。会田卓司
会田さんによると、食料品の税率を0%にするための財源は年間5兆円程度とされます。一方で、足元の税収増は約6兆円。この増収は名目GDPが拡大するかぎり続く「恒久財源」と考えられるので、そのうちの5兆円を使っても理屈の上では持続可能だ、というのが会田さんの主張です。
ヨーロッパでも、イギリスやアイルランドなど一部の国では、生活必需品にゼロ税率や軽減税率を適用してきた歴史があります。物価高で苦しむ庶民に直接効く政策として、食料品の税負担を軽くする考え方は、国際的にも一定の流れだと言えます。
一方で、財政の持続性に警鐘を鳴らしたのが、一橋大学教授の佐藤主光さんです。佐藤主光
佐藤さんは財政学・公共経済学の専門家で、日本の地方財政や税制改革の研究で多くの賞を受けてきた研究者です。
佐藤さんは番組の中で、「減税の裏には必ず財源が必要で、財政規模を膨らませ続ければ、将来世代の負担や金利の上昇リスクが高まる」と指摘しました。特に日本はすでに国内総生産(GDP)の2倍以上の政府債務を抱えているとされ、これ以上の拡大には慎重であるべきだという立場です。
高市首相は、こうした議論を踏まえながらも「できるだけ早く実現できるよう知恵を絞る」と発言。給付付き税額控除が本格導入されるまでの“つなぎ措置”として、2年間限定の食料品消費税ゼロを実施する方針を示しました。
ここでポイントになるのは、「一時的な減税」が本当に期限通りに終わるのか、という点です。いったん下がった税率を元に戻すと、再値上げとして家計に大きなショックが出ます。そのため、番組でも「期待とリスクをどう見極めるか」が視聴者に投げかけられていました。
中道・国民民主・参政党・チームみらい 野党勢力地図はこう変わる
もう一つの大きなテーマが、野党勢力の再編です。
まず、中道改革連合は大物議員の相次ぐ落選により、党の存続そのものが議論されるほどのダメージを負いました。番組では、今後代表選挙を行って立て直しを図るものの、「野党第一党としての存在感は大きく低下するのは避けられない」と小嶋章史記者が解説します。小嶋章史
一方で、国民民主党や参政党、そして新興勢力のチームみらいといった政党は、与党と「是々非々」で連携しながら政策ごとに判断していく見通しだと説明されました。
国民民主党は、玉木雄一郎代表の下で「現実的な改革」を掲げてきた政党で、今回も一定の議席を守り、地方の小選挙区でも勝利を収めています。国民民主党
参政党は、神谷宗幣代表が「消費税の廃止」や移民政策の見直しを前面に押し出し、前回からさらに議席を伸ばしました。参政党
そして今、最も注目を集めている新党がチームみらいです。チームみらい
AIエンジニア出身の安野貴博党首が率いるこの政党は、「テクノロジーで政治を変える」を掲げて2025年に結党され、今回の衆院選が初めての本格的な国政選挙でした。安野貴博
チームみらいは、ほとんどの政党が消費税減税を掲げる中で、あえて減税に反対し、「社会保険料の負担を軽くする方が筋が通っている」と訴えました。
その結果、比例代表で11議席を獲得し、「減税一色」の中で税率維持を望む有権者の受け皿になったと分析されています。
番組では、こうした新興勢力の台頭が「与党一強」の時代においても、多様な政策選択肢を生み出す可能性があると評価する一方で、政権与党とどのような距離感で向き合うのかによって、野党としての役割が問われるとまとめていました。
私たちの暮らしはどう変わる?家計・物価・将来不安を考える
最後に番組は、「巨大与党の誕生」で私たちの暮らしが具体的にどう変わるのかを整理していました。
ポイントは大きく三つです。
一つ目は、食料品消費税ゼロによる家計への直接的な影響です。食費の占める割合が大きい低所得世帯ほど恩恵は大きく、物価高で苦しんできた家庭には即効性のある支援になります。ただし、外食や加工食品の線引き、対象品目の範囲など、運用面で複雑さが増す可能性も指摘されました。
二つ目は、財政規律とのバランスです。給付付き税額控除が軌道に乗れば、本来は所得の低い人にだけピンポイントで支援できる仕組みですが、それまでの“つなぎ”として大規模な減税を行うと、国債発行の増加につながります。将来の増税や社会保障の削減という形で跳ね返ってくるリスクもあるため、「短期の安心」と「長期の安心」をどう両立させるかがテーマになります。
三つ目は、外交・安全保障やエネルギー政策など、暮らしの土台に関わる分野です。高市政権は積極財政と同時に、防衛力強化や経済安全保障の強化も掲げています。円安是正のための為替介入や、成長戦略会議を通じた産業支援策など、マクロな政策の行方次第で、賃金や雇用環境も変わってきます。
番組の締めくくりで小嶋記者は、「巨大与党に対し、野党がどれだけ政策提案とチェック機能を発揮できるかが、結局は私たちの暮らしの安定につながる」と強調していました。中道改革連合をはじめとする野党勢力が、新しい時代にどんな役割を果たせるのか。高市旋風は、一度きりの“風”で終わるのか、それとも日本政治の構造そのものを変えていくのか――。
私たち有権者一人ひとりが、今回の選挙結果を「暮らしの言葉」に翻訳して考え続けることが、これからの数年間を大きく左右していくのだと感じさせる回でした。
NHK【クローズアップ現代】政権再編の鍵を握る「議員定数削減」とは?高市早苗×吉村洋文が描く新連立のリアル|2025年10月20日
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