Eテレ【心おどるあの人の台所】渡辺康啓の美しいキッチン術と収納の工夫｜2025年6月24日放送

美しさと機能性を両立した台所

美しさと機能性を両立した台所

料理家・渡辺康啓さんが登場する『心おどる　あの人の台所（4）』（NHK Eテレ 6月24日火曜 21:30～22:00）は、日々の暮らしの中心である「台所」に込められた哲学や工夫を紹介するシリーズの第4回です。今回は、独自の美意識と発想で料理ファンを魅了する渡辺さんの台所に密着し、「使いやすさ」と「心地よさ」のバランスを追求する暮らし方に迫ります。

道具の配置から生まれる料理のひらめき

渡辺康啓さんの台所は、料理をしながら自然にひらめきが浮かぶよう、使いやすさを考えた工夫がたくさん詰まっています。道具の位置や高さ、動きの流れまで細かく考えられており、毎日の台所仕事がスムーズになるよう設計されています。

たとえば、よく使う調味料はコンロの正面に配置されています。炒め物や煮物の際に、すぐに手が届く位置にあることで、動きを止めることなく次の工程へ移ることができます。そして砂糖や塩などの調味料はレンジフードの上に置かれていて、使いたいときにひょいと手を伸ばせばすぐ取れるようになっています。

さらに、日本酒や酢、みりんなどは瓶に詰め替えて竹かごにまとめて収納されています。この竹かごをそのまま取り出せば、必要な調味料が一式そろっているので、調理中に探す手間がなくなります。

・調味料はコンロ前とレンジフード上で分類
・詰め替えた瓶はまとめて竹かごに収納
・使いたいときに迷わず手が届く工夫

また、包丁はレンジフードに取りつけたマグネットに吊るしてあります。これにより、包丁が引き出しの中で埋もれることなく、視認性もよく、手に取りやすくなっています。リネンクロスなどの布類も、壁にフックをつけて吊るすことで、濡れた手で振り返ってすぐ使える状態をキープしています。

・包丁はマグネットで吊るし、出し入れが一瞬
・クロスは壁に掛けて乾きやすく、使いやすく

こうした収納や配置のすべてが、「2アクション以内で手に届く」ことを基準に考えられています。動きにムダがなくなることで、調理中のストレスが減り、頭の中で浮かんだアイデアをすぐに形にしやすくなります。あらかじめ整った空間だからこそ、調理に集中できて、気持ちにも余裕が生まれるのです。

道具をただしまうのではなく、使う場所の近くに置く、手に取りやすく吊るす、まとめておくといった小さな工夫の積み重ねが、料理という創造的な作業を支える基盤となっています。放送では、これらの配置の工夫がどのように映し出されるのかにも注目が集まりそうです。

見た目と使いやすさを両立させる収納の美学

渡辺康啓さんの台所では、見た目の美しさと使いやすさがしっかりと両立されています。その秘密は、必要なものだけを厳選し、使いやすく美しく配置する工夫にあります。ものが多すぎないからこそ、毎日心地よく、効率的に作業できる空間が保たれているのです。

たとえば、スタッキングできるステンレス製の計量カップは、使い終わったあとに重ねて収納できるだけでなく、フタをつければ保存容器としても使えるという実用性があります。ひとつの道具に複数の役割を持たせることで、収納もすっきりとし、物の数を減らすことができます。

さらに、カトラリーの収納にはパウンドケーキ型を活用しているのが特徴です。市販の仕切りではなく、調理道具そのものを収納に使うことで、見た目に統一感が生まれ、機能的でもあります。

・ステンレス計量カップはスタッキング＋保存容器として活用
・パウンドケーキ型をカトラリー収納として代用
・統一感のある素材や色で見た目の整頓感を演出

引き出しの中は、仕切りを使って丁寧に分類され、どこに何があるかがすぐに分かる状態になっています。料理中に必要なものが迷わず取り出せることは、作業のリズムを崩さずに調理を続けられる大きなポイントです。

また、収納だけでなく、油はねや水滴を見つけたらすぐに拭くという習慣が身についている点も、空間を美しく保つ秘訣の一つです。この小さな行動の積み重ねが、キッチンを常に清潔で整った状態に保ちます。

・引き出しは仕切りで細かく整理
・汚れを見つけたらすぐ拭くのが基本ルール
・掃除の手間が減り、道具も長持ち

特別な高級キッチン用品を使うのではなく、日常にある道具を自分のスタイルで使いこなす。そうした姿勢が、渡辺さんの収納の美学であり、料理のひらめきを支える土台となっています。台所は調理する場所であると同時に、自分らしさを表現する場所でもある。その思いが、一つひとつの収納の中に込められているのです。

住まいに合わせて変化する“生きた台所”

渡辺康啓さんの台所は、暮らしの変化に応じて姿を変える“生きた空間”として存在しています。住む場所が変われば、キッチンの広さや光の入り方、周囲とのつながりも異なります。そうした変化に合わせて、道具の配置や収納方法も一から見直し、最適な形に整えていく姿勢が印象的です。

たとえば、棚や引き出しはその家のスペースに合わせて組み直し、取り出しやすさや動きやすさを優先して構成されています。スペースが限られている場合でも、必要なものを厳選し、どこに何を置くかを丁寧に調整することで、無理のない作業環境が生まれます。

・引っ越すたびに棚や収納を一から見直す
・広さや高さに応じて最も使いやすい位置を再設計
・新しい住まいでも“いつもの動き”ができるように工夫

また、光の入り方や時間帯による明るさの違いも収納の配置に影響を与えている点が特徴です。自然光の入る方向を考慮し、作業台の位置や道具を置く位置を調整することで、料理中のストレスを減らし、気持ちよく作業できる空間になっています。

・自然光が差し込む場所に作業台を配置
・夕方でも手元が暗くならないような照明計画
・明るさに応じて使う道具の位置も変化

さらに、リビングとのつながりにも配慮したキッチン設計がなされています。料理をする姿そのものが「見せる」存在であり、台所が一つの舞台のように機能するという考え方が根底にあります。

・リビングから見える位置に器やクロスを美しく配置
・調理中の姿が自然と空間に馴染むようデザイン
・見せる台所としても美意識を意識

Instagramでは、「台所に立つ姿そのものが表現」という言葉が紹介されているように、渡辺さんにとってキッチンは作業場ではなく、自分らしさを体現する場です。住まいとともに変化し続けるキッチンは、固定された空間ではなく、日々の気づきと実践によって成長する場所となっているのです。料理家である前に、一人の暮らし手として、自分にとって心地よい空間を作り出す工夫が、台所を通して語られています。

料理への向き合い方が反映された空間

渡辺康啓さんの料理は、目の前の食材から始まるのではなく、完成した料理の姿をまず頭の中で思い描くことからスタートします。どんな色に仕上げたいか、どんな器に盛るか、そのビジュアルのイメージを軸に、調理方法や使う道具を逆算して決めていくスタイルです。この考え方は、そのまま台所の作り方にも表れており、空間全体が一つの作品のように設計されています。

たとえば、食材と向き合うときも、「素材に足し算をする」という意識が根底にあります。見た目にはシンプルに見える料理でも、その裏には素材の良さを引き出すための適切な加え方や順序が緻密に考えられています。何を足すか、どの順番で、どれくらい手を加えるか。そうした細やかな判断は、日々の観察と経験に支えられています。

・料理はまず完成形のイメージから始まる
・盛り付ける器や配色バランスも同時に想定
・味と見た目の調和を意識した“足し算”の料理

また、調理中に手に取る道具も、「触れて心地よいもの」「使い続けたくなるもの」を厳選しています。どれも手によくなじみ、素材や質感にこだわって選ばれているため、道具を使うことそのものが気持ちのよい行為となります。

・木製のヘラや無垢のまな板など、肌になじむ素材を選択
・長年使ってきた道具を大切に手入れして使用
・見た目と使い勝手の両立が意識された道具選び

さらに渡辺さんは、「手を動かしながら考える」という姿勢を大切にしていて、実際に使ってみてから台所の配置や道具の置き場所を見直すこともしばしばです。机上の設計ではなく、日々の実践を通して改善していくという柔軟な考え方が、台所を進化させ続ける力になっています。

・道具の配置も「使いながら」最適化
・実際の動きに合わせて細かく調整を重ねる
・無理のない導線と手の流れで作業が自然につながる

このように、台所そのものが渡辺さんの料理への向き合い方を映し出す場所となっており、すべての要素が自然と調和しています。空間、道具、料理の全てが一体となることで、感性が研ぎ澄まされ、創造的な料理が生まれていくのです。渡辺さんの台所は、まさに“暮らしと表現が交差する場”であり、そのすべてが美しい料理へとつながっていきます。