「冬の入浴事故を防ぐために知っておきたいポイント」
冬になると、普段は気持ちよく感じる入浴時間が、一転して命に関わる危険な時間になることがあります。特に高齢者にとって、冬の入浴は“隠れたリスク”が多く潜んでおり、実際に亡くなる人の数は交通事故の2倍にのぼるとも言われています。この記事では、事故がなぜ冬に集中するのか、その身体的メカニズム、住宅環境や生活習慣による影響、そして家庭でできる予防策や、万が一のときの行動までをわかりやすくまとめました。
NHK【チコちゃんに叱られる！】温泉で頭にタオルをのせる理由とは？脳を守る入浴の知恵｜2025年6月6日放送
冬に入浴事故が増えるのはどうして？
冬の入浴事故の大きな原因は、体が急な温度変化に対応しきれないことから起こる『ヒートショック』です。
暖かい部屋から一歩出ると、脱衣所は外気に近い温度まで冷え込みます。さらに冷えた体で熱いお湯に浸かると、体は一気に温められ、血管が急に広がります。こうした変化が立て続けに起こると、血圧は乱高下し、めまい、失神、心臓の異常、脳のトラブルなどにつながる可能性があります。
加えて、日本の住宅では浴室や脱衣所の暖房が弱く、冬は部屋ごとの温度差がほかの季節より非常に大きくなりやすい傾向があります。この“家の構造的な温度差”が、事故リスクを高める背景の一つとされています。
また、冬になると熱めのお湯に長い時間浸かりたいと思いがちです。しかし、熱い湯は血管を強く広げ、浴室を出た瞬間の寒さで血管が急に縮むため、血圧の上下が激しくなりやすく、体への負担が大きくなります。高齢者は体温調整や血管の反応が弱まりやすく、持病を抱えているケースも多いことから、こうした影響を強く受けてしまいます。
さらに、日本独特の「熱い湯にゆっくり浸かる」入浴文化も事故が増える理由の一つとされています。特に冬はこの傾向が強くなり、よりリスクを高めてしまうのです。
家でできるヒートショック予防策
冬の入浴事故は、日頃のちょっとした工夫で大幅に減らすことができます。家庭で今日から実践できる対策を詳しくまとめます。
まず大切なのが、家の中の温度差を減らすことです。入浴前に脱衣所や浴室を暖めておくと、温度変化がゆるやかになって体への負担を抑えられます。暖房機器がない場合でも、シャワーのお湯を少し出して浴室全体を温める、扇風機でリビングの暖気を脱衣所に送るなどの方法が効果的です。
お湯の温度は41℃以下に設定します。熱すぎる湯は血管を過度に広げ、湯上がり後の急な寒さで血圧を乱れさせてしまいます。ぬるめのお湯にゆっくり浸かった方が、体への負担が少なく安全です。
入浴時間は10分以内を目安にします。特に高齢者は長湯を避け、こまめに浴槽から出て休むのも有効です。入浴前には足元や手先にかけ湯をして、体をお湯の温度に慣らしてから入ると、温度差のショックが小さくなります。
浴槽から立ち上がるときは、手すりや浴槽の縁をつかんで、ゆっくりと立ち上がるようにします。急に立つと血圧が急激に下がり、意識を失う危険があります。
また、冬は脱水症状になりやすい季節でもあります。入浴前後の水分補給を忘れないことが大切です。食後すぐ・飲酒後・薬を飲んだ直後の入浴も事故の原因になるため、十分に注意が必要です。
高齢者や一人暮らしの人は、入浴前に家族へ声をかける、可能なら見守りをしてもらうなどの工夫が命を守ることにつながります。
浴槽で倒れている人を見つけたときの行動
万が一、浴槽で倒れている人を見つけた場合、迷っている時間が命に関わることがあります。適切な初動が救命につながります。
まず、大きな声で呼びかけ、周囲の人に協力を求めます。そのうえで浴槽の栓を抜き、水位を下げて溺れる危険を減らします。
可能であれば複数人で協力し、浴槽から引き上げます。一人で無理に持ち上げると、自分自身が転倒してしまう可能性があるため控えます。
引き上げたら反応があるかを確認します。肩に軽く触れて呼びかけても反応がなければ、すぐに119番へ通報します。
呼吸が確認できない場合は胸骨圧迫による心肺蘇生を開始します。救急車が到着するまで続けることが重要です。呼吸があってもぐったりしている場合や、めまい・ふらつきがある場合は、無理に動かさず、体を冷やさないようにして救急隊を待ちます。
事故の発見から救急車の到着までの行動は、命を守る大切な時間です。慌てず、落ち着いて対応することが求められます。
まとめ
冬の入浴事故は、ヒートショックを中心とした身体の変化、家の構造による温度差、生活習慣、そして年齢による体の変化が重なって発生します。しかし、脱衣所を温める、お湯の温度を見直す、水分補給をする、入浴のタイミングを調整するなど、家庭でできる対策を実践することでリスクを大幅に下げることができます。
そして、万が一のときの行動を知っておくことも非常に重要です。
【ZIP!】お風呂が楽しくなるグッズや入浴法を調査！分割浴のやり方×お風呂汚れ吸着ボール×湯冷め防止テクの全部入り｜2025年11月14日
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
コメント