皇居に生きる盆栽たちが語る時間の物語
このページでは「皇居の宝物 盆栽物語 時を語る大道庭園の老木たち(2026年1月4日放送)」の内容を分かりやすくまとめています。
番組が伝えていたのは、皇居の奥にある大道庭園で育まれてきた盆栽が、ただの植物ではなく、日本の歴史や人の思いを静かに背負ってきた存在だということです。国賓を迎える場で飾られ、戦争を乗り越え、今も手入れが続く老木たち。その姿を知ることで、盆栽の見え方が大きく変わります。
皇居の奥にある大道庭園という特別な場所
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皇居の内部に広がる大道庭園は、一般にはほとんど知られていない場所ですが、皇室行事や国賓対応を支えてきた重要な庭園です。ここには、宮殿や御所に飾るための盆栽を育て、仕立てる専用の場所が設けられています。
大道庭園では、宮内庁庭園課の職員が日々作業を行い、枝の伸び方や葉の量、幹の姿まで細かく見極めながら手入れを続けています。盆栽は自然のまま放っておけば完成するものではなく、長い年月をかけて人の手が入り続けることで形が保たれます。
大道庭園が整えられたのは、明治宮殿とほぼ同じ時期です。そのため、この場所自体が近代以降の皇居の歴史と重なっています。盆栽は展示用の装飾ではなく、行事の場にふさわしい空気を整える役割を持ち、皇居の奥で静かに準備されてきました。
国賓を迎えてきた盆栽と外交の舞台
大道庭園の盆栽は、国内行事だけでなく、海外からの要人を迎える場でも重要な役割を果たしてきました。平成8年に来日したフランスのジャック・シラク大統領が皇居を訪れた際にも、大道庭園で育てられた盆栽が飾られています。
昭和57年に来日したインドネシアのスハルト大統領は、盆栽そのものに強い関心を示し、大道庭園を訪れて実際に鑑賞しました。これは、盆栽が日本文化の象徴として理解されていたことを示す場面です。
平成29年4月5日、スペイン国王のフェリペ6世が来日し皇居を訪問した際には、五葉松の名木『値上り五葉』が宮殿内に飾られていました。重さが約380キロにもなる大型盆栽が慎重に運び込まれ、空間に据えられる様子から、皇居の盆栽が特別な存在であることが伝わってきます。
大道庭園を支える名木たち
番組では、皇居の宝物と呼ばれる盆栽が数多く紹介されました。黒松『鹿島』、ひのき、五葉松『君が代』、そして徳川家光ゆかりの五葉松『三代将軍』は、その代表的な存在です。
『三代将軍』は江戸時代から受け継がれてきた五葉松で、幹の太さや枝ぶりから、長い年月を生き抜いてきた重みが感じられます。ほかにも、黒松『懸崖』の大胆な樹形、落葉樹であるけやきの季節ごとの表情、真柏の複雑な幹のうねりなど、それぞれ異なる魅力を持つ盆栽が並びます。
さらに、えぞ松、錦松、赤松、唐かえで、出猩々、むれすずめ、あけびといった樹種も登場し、大道庭園の盆栽が一種類に偏らない、多様な世界であることが示されていました。
絵や器に残る盆栽の記憶
盆栽の歴史は、生きた木だけでなく、さまざまな資料にも残されています。番組では『章懐太子李賢墓壁画』や『春日権現験記絵』、『赤坂御庭図画帖』、『古風作松之図』といった作品が紹介され、古代から近世にかけて盆栽や鉢植えが描かれてきたことが示されました。
これらの資料は、盆栽が一部の趣味ではなく、広く文化として存在してきた証でもあります。
また、大道庭園の倉庫に保管されている盆器も重要な存在です。学習院大学の荒川教授が調査を行い、信楽焼や瑠璃釉、色絵の盆器が確認されました。盆器は木を支える道具であると同時に、その時代の美意識や技術を伝える資料でもあります。
学校で受け継がれる盆栽の技と心
東京都立園芸高等学校では、講師の中島さんが生徒たちに盆栽の手入れを指導する様子が紹介されました。枝の切り方や針金のかけ方だけでなく、木の状態を見て判断する姿勢が大切にされています。
この学校には、徳川家光が遺愛したとされる南五葉松と北五葉松が残されています。歴史的価値を持つ盆栽が、教育の現場で守られていることは、文化の継承という点で大きな意味を持っています。
若い世代が実際に盆栽に触れ、世話をすることで、知識だけでなく感覚として文化が引き継がれていく様子が描かれていました。
戦争と盆栽、失われたものと守られたもの
大道庭園も、時代の大きな変化から逃れることはできませんでした。戦争中、大道庭園は一時的に畑として使われ、盆栽は小石川植物園に引き渡されます。
昭和20年の空襲で明治宮殿が焼失し、戦後に皇居へ戻された盆栽の数は、戦前の10分の1にまで減っていました。多くの名木が失われた中で、残された盆栽を守り直す作業が始まります。
村田久造を中心に修復が進められ、再び盆栽文化が立て直されていきました。日比谷公園で開催された全日本盆栽大会では、伊藤博文やその長男の伊藤博邦といった盆栽愛好家の姿も紹介され、皇居の盆栽が広く知られるきっかけとなりました。
時を超えて残る皇居の宝物
皇居の大道庭園で育てられてきた盆栽は、政治や外交、戦争、教育といった日本の歩みと重なりながら生き続けてきました。『三代将軍五葉松』をはじめとする名木たちは、言葉を発さずとも、積み重ねられた時間の重さを静かに伝えています。
番組は、盆栽が単なる鑑賞物ではなく、人と歴史をつなぐ存在であることを、老木たちの姿を通して教えてくれました。
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皇居の盆栽と一般家庭の盆栽は何が違うのか

ここでは、番組を見ていて特に印象に残った点として、皇居の盆栽と一般家庭で楽しまれる盆栽の違いについて紹介します。同じ「盆栽」という言葉でも、その役割や向き合い方には大きな違いがあります。
皇居の盆栽は「場を支える存在」
皇居の盆栽は、個人が楽しむための鑑賞用ではありません。宮殿や公式行事の場を支える存在として扱われています。国賓を迎える場や重要な儀式では、盆栽は空間の一部として置かれ、その場の格や雰囲気を整える役割を担います。
そのため、皇居の盆栽は遠くから見ても樹の形が伝わる大型のものが多く、広い空間に負けない存在感を持っています。
一般家庭の盆栽は「暮らしの中で楽しむもの」
一方で、一般家庭の盆栽は、日々の暮らしの中で育て、眺め、変化を楽しむものです。置かれる場所は室内や庭先であることが多く、サイズも手の届く範囲に収まります。
剪定や針金掛けなどの技術を工夫しながら、自分の手で形を整える楽しさが大きな魅力になっています。盆栽との距離が近く、育てる人の個性が反映されやすい点が特徴です。
時間との向き合い方の違い
最も大きな違いは、時間との向き合い方です。皇居の盆栽は、次の世代へ確実に受け継ぐことを前提に管理されています。何十年、何百年という時間をかけて守られ、今この瞬間よりも「未来」が重視されています。
一般家庭の盆栽は、今の暮らしの中で楽しむ時間が中心になります。どちらが優れているという話ではなく、皇居の盆栽は国家の時間を背負い、家庭の盆栽は個人の時間を彩る存在だと言えます。
同じ盆栽でも、その立場と役割の違いを知ることで、番組で映し出された皇居の盆栽が、より深く心に残ります。
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