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NHK【クローズアップ現代】レアアース“中国一強”と日本の輸出規制リスク ナミビア・南鳥島の新資源戦略とは|2026年2月25日

クローズアップ現代
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レアアース“中国一強”で世界は今どう揺れているのか

クローズアップ現代は、今回の特集で、世界経済の“見えない急所”とも言えるレアアースに光を当てました。

静岡県沼津市のモーター製造企業では、モーターの心臓部となるレアアース磁石の入荷が遅れ、新製品の開発そのものが危うくなっています。

背景にあるのは、アメリカのトランプ政権による高い関税と、それに対抗する形で中国がとったレアアース輸出規制です。

番組は、地方の中小企業の工場、アメリカや中国のシンクタンク、アフリカの鉱山、そして日本の研究現場までをつなぎながら、「中国が握るレアアース支配のリアル」と、「日本はどこまで中国依存から離れられるのか」を追いかけました。

視聴者に投げかけられているのは、「安い製品の裏で、どんな資源リスクを引き受けているのか」という問いでもあります。

レアアースとは何か 産業のビタミンと呼ばれる理由

番組中でも繰り返し説明されていたように、レアアースとは、ネオジムやジスプロシウムなどを含む「17種類の希土類元素」の総称です。

希少だからレアというより、「分離や精製がとても難しい」ためレアと呼ばれています。

レアアースは、電気自動車やハイブリッド車の駆動モーター、風力発電の発電機、スマートフォンの小型スピーカー、精密なレーダー機器など、私たちの生活のあらゆる場面に使われています。

その中でも、特に重要なのがレアアース磁石です。少しの量で非常に強い磁力を生み、モーターを小さく、軽く、そして高性能にしてくれます。電動化・脱炭素の流れが加速するほど、その重要性は高まります。

こうした役割から、レアアースは「産業のビタミン」と呼ばれます。量としてはごく少しでも、ないと技術全体の性能がガクッと落ちてしまうからです。

中国が採掘6割・精製9割を握るまでの背景

番組では、レアアースをめぐる最大のポイントとして、中国一強という構図が紹介されました。

世界のレアアース採掘量の約6割、さらに精製・分離工程の約9割を中国が担っているとされています。

この圧倒的なシェアは、ある日突然できたものではありません。
中国は数十年かけて、低コストでレアアースを大量生産し、世界市場に安く供給してきました。

その一方で、レアアースの採掘・精製は、放射性廃棄物や大量の廃液が出るなど、環境負荷がとても大きい産業です。欧米や日本の企業は、環境規制の厳しさやコストの高さから、自国での大規模生産を縮小し、中国から輸入する道を選んできました。

番組に登場した中国外交や米中関係の専門家・小原凡司さんも、「環境コストを引き受けることで、中国がサプライチェーンを丸ごと握ることになった」と指摘します。

結果として、世界は便利さと低価格を手に入れた代わりに、レアアース供給という重要なスイッチを中国に預けてしまったのです。

静岡・沼津のモーター企業・三陽電業に押し寄せる磁石不足の危機

今回の特集で最初に映し出されたのは、静岡県沼津市にある三陽電業株式会社の工場でした。

三陽電業は、1956年創業のモーター巻線・組み立ての専門企業です。ポンプや産業機械向けのモーターなど、試作から量産まで一貫して対応できる技術力を強みに、静岡のものづくりを支えてきました。

ところが今、その現場に異変が起きています。

モーターの心臓部であるレアアース磁石の入荷が大きく遅れ、設計した通りのモーターが作れない。新製品の開発スケジュールもずれ込み、取引先への納期にも影響が出かねない状況です。

社長はインタビューで、「米中の対立の間に、日本の中小企業が挟まれてしまっている」と率直な不安を語りました。

レアアースは、完成品の価格に占める割合は必ずしも大きくありません。ですが、ないとモーターそのものが成立しません。小さな部品が一つ止まるだけで、地方の工場から世界のサプライチェーンまで、じわじわと影響が波及していく構図がよくわかるシーンでした。

トランプ政権の高関税と中国のレアアース輸出規制という報復

番組は、こうした現場のピンチがどこから来ているのか、アメリカと中国の動きから丁寧に解きほぐしていきます。

きっかけの一つとなったのが、アメリカのトランプ大統領による高関税政策です。中国を含む各国に高い関税を課し、「アメリカ第一」を掲げたあの路線です。

これに対抗する形で、中国が持ち出したカードの一つが、レアアース輸出規制でした。

輸出そのものを全面禁止するのではなく、レアアースやレアアース磁石の輸出に対して、政府の許可を必要とする仕組みを導入。許可を遅らせたり、量を絞ったりすることで、実質的に供給をコントロールできるようにしたのです。

番組に登場した専門家は、「中国は、レアアースを通商交渉の切り札として使っている」と指摘しました。

つまり、関税や制裁がエスカレートしたとき、「レアアースを止めるぞ」というメッセージで、相手国の産業界にプレッシャーをかけているのです。

グリーンランドとグローバル資源争奪戦 CSISバスカラン氏の視点

番組は視点を大きく北に移し、北極圏のグリーンランドへ向かいました。

トランプ大統領がかつて「領有したい」とまで口にしたこの地には、世界有数のレアアース埋蔵量があるとされています。

現地の人びとは、レアアース開発がもたらす雇用や経済効果に期待しつつも、環境破壊への懸念や、中国企業への権益集中への不安を抱えています。

アメリカ・ワシントンDCにあるシンクタンク、アメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)の重要鉱物プログラムを率いるグレースリン・バスカラン氏は、番組のインタビューで「中国企業が世界中のレアアース鉱山の権益を押さえてしまうと、長期的に中国の市場支配力がさらに強まる」と警鐘を鳴らします。

レアアースは、「どこの国の地下にあるか」だけでなく、「誰が鉱山を持っているか」「誰が精製能力を持っているか」でパワーバランスが決まります。

グリーンランドの小さな村での議論が、実は米中の覇権争いの最前線とつながっている。番組はその構図を、丁寧な現地取材で見せていました。

南アフリカの国際会議とナミビア 日本が狙う新たな供給源

一方、日本も手をこまねいているわけではありません。

今月、南アフリカ共和国のケープタウンで開かれた、重要鉱物の開発に関する国際会議「マイニング・インダバ」には、世界各国の政府関係者や企業が集まりました。

ここで日本の経済産業省の幹部は、アフリカでのレアアース権益確保を積極的に進める方針を表明しました。

番組クルーが同行したのは、アフリカ南西部の国・ナミビア共和国です。

日本はナミビアで、中国がまだ本格的に進出していなかった鉱山に早い段階から目をつけ、約6年前から調査を続けてきました。現地では、日本の調査チームが最新のデータを報告し、「中国が輸出規制の対象としてきた種類のレアアースも、ここでは豊富に見つかっている」と明らかにします。

そのうえで、経済産業省の担当者はナミビア政府と会談し、「採掘を急ピッチで進める」ことで合意しました。

アフリカの豊かな鉱物資源と日本の技術・資金を組み合わせ、中国一強の状態を少しでも崩していこうという動きです。

ただし、ここでも環境負荷や現地コミュニティへの影響、政治的な安定性といった課題がつきまといます。日本にとってアフリカでのレアアース開発は、資源確保と同時に「責任あるパートナーでいられるか」が問われる挑戦でもあります。

岐阜・中津川 大同特殊鋼グループが挑む重希土類フリー磁石

番組は次に、日本国内で進む「脱・中国依存」の技術的な取り組みにもカメラを向けました。

向かった先は、岐阜県中津川市。ここには、特殊鋼メーカー大同特殊鋼グループの拠点があり、グループ会社のダイドー電子が、重希土類を使わないネオジム磁石の開発・量産を進めています。

従来の高性能ネオジム磁石は、ジスプロシウムなどの「重希土類」に大きく依存してきました。これらは特に中国に偏在していて、日本の調達はほぼ100%中国頼みという状態が続いてきました。

中津川の開発センターでは、熱間加工という独自の製法によって、重希土類を一切使わずに、電気自動車用モーターにも使えるレベルの高耐熱・高出力磁石を作り出しています。

番組では、研究者たちが小さな磁石サンプルをモーターに組み込み、温度を上げても性能が落ちないか試験している様子が映されました。

ここで紹介されたのは、「中国からレアアースを買わなくてもいい世界」をいきなり実現する魔法の技術ではありません。

それでも、重希土類フリー磁石の普及が進めば、「どうしても中国から買わなければならないレアアース」の種類と量を減らすことができます。

小原さんが指摘するように、「すべてを切り離すのではなく、依存度を下げていくこと」が、現実的で強い戦略なのだと感じさせるパートでした。

南鳥島沖の海底に眠る国産レアアース泥と最新の試験採掘

さらに番組は、日本近海に眠る“国産レアアース”の可能性も取り上げました。

舞台は東京都の最東端に位置する南鳥島沖の海底です。ここでは、深さおよそ6000メートルの海底に、レアアースを豊富に含んだレアアース泥が広がっていることがわかっています。

内閣府の**戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)**と、**海洋研究開発機構(ジャムステック)**は、深海探査船「ちきゅう」を使って、このレアアース泥の試験的な引き揚げに取り組んできました。

番組が取材したのは、ちょうどその試験が成功したタイミングです。

巨大なパイプで海底から吸い上げられた泥が、船上のタンクに流れ込み、研究者たちが嬉しそうにその手触りを確かめる姿が映し出されました。

レアアース泥は、「採る」「運ぶ」だけでなく、「分離し、製錬し、製品に使える形にする」までの一連の技術が必要です。まだ商業生産までの道のりは長いものの、日本の経済安全保障の観点から、国産レアアースの可能性に世界が注目しています。

一方で、深海の環境に与える影響をどう最小限にするかという課題もあります。
海底の生態系はまだまだわかっていない部分が多く、慎重な調査と環境モニタリングが欠かせません。ここでも「資源か環境か」ではなく、「どう両立させるか」が問われています。

中国商務省の輸出規制リスト追加と「ゼロチャイナ」ではなく「レスチャイナ」へ

番組収録の直前、中国の商務省は、日本企業20社を新たに軍民両用品目の輸出規制リストに追加しました。

レアアースそのものだけでなく、レアアースを使う高性能部材や装置の輸出も、より厳しく管理していく姿勢を示した形です。

スタジオで解説した清水孝太郎さんは、「中国リスクを意識しすぎて、すべてを切り離そうとする『ゼロチャイナ』は現実的ではない」と話します。

レアアースは今もなお、中国以外に十分な供給能力があるとは言えません。中国との関係をすべて断ち切ろうとすると、かえって自分たちの選択肢を狭めてしまう危険があります。

そこで清水さんが提案したのが、レスチャイナという考え方です。

中国依存をゼロにするのではなく、
・調達先を増やす(アフリカ、オーストラリア、国内資源など)
・技術開発で必要量そのものを減らす(重希土類フリー磁石など)
・リサイクルや代替材料を組み合わせる

こうした積み上げで、「中国に頼る割合を減らしていく」ことを目指す。

番組は、「レアアースを武器にした圧力に振り回されないためには、極端な“分断”ではなく、賢い距離の取り方が大切だ」とメッセージしていました。

三陽電業社長の不安と、これからの日本が選ぶべき現実的な道

特集の最後に再び映し出されたのは、静岡・沼津の三陽電業の工場です。

社長は、「中国との関係がどうなっていくのか、日本政府がどんな道を選ぶのか、それによって会社の未来も変わってしまう」と率直な不安を口にしました。

レアアースの問題は、一見すると遠い外交の話や、大企業の話に見えます。

しかし実際には、地方の工場で働く一人ひとりの生活、電気自動車や家電を使う私たちの日常、そして地球環境の将来まで、すべてにつながっているテーマです。

番組は、
・中国の圧倒的な供給力という現実
・アフリカや南鳥島での新たな挑戦
・日本企業の地道な技術開発
・「ゼロ」ではなく「レスチャイナ」をめざすという発想

これらを立体的に描きながら、「日本はどう向き合うのか」というタイトルの問いを、視聴者一人ひとりに投げかけていました。

便利さの裏にある資源リスクを知ったうえで、私たちはどんな選択をしていくのか。
この番組は、その第一歩となる“考える材料”を、ぎゅっと詰め込んだ回だったと感じます。

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