子どもにどう話す?
親ががんと診断されたとき、「子どもに心配をかけたくない」と思う一方、入院や治療による変化をどう説明すればよいのか悩みます。正直に全部話すべきなのか、病名は伏せてもよいのか、迷うのは当然です。
『あさイチ“がん”の新常識 いま知っておきたい予防と治療の最新情報(2026年7月13日放送)』では、がんと長くつきあう時代に、子どもへどう伝えるかが取り上げられます。
大切なのは、完璧に説明することではなく、子どもが今知る必要のある事実を、受け止められる言葉で少しずつ伝えることです。
この記事でわかること
- 親のがんを伝えるタイミング
- 子どもに最初に伝えたいこと
- 幼児・小学生・中高生への言葉
- 伝えた後の見守り方と相談先
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親のがんは一度にすべて伝えなくていい

最初に知っておきたいのは、病名や治療の見通しを、1回の会話ですべて伝える必要はないということです。
がんと診断された親自身も、すぐには状況を受け止められないことがあります。病状や治療方針がまだ決まっておらず、子どもに何を話せばよいのか分からない場合もあるでしょう。
そのようなときは、無理に説明を始めなくてもかまいません。
まずは自分の体調や治療を優先し、話せる状態になってから、分かっている事実を少しずつ伝える方法があります。
たとえば、病名まで話す準備ができていない場合は、次のような伝え方もできます。
「体の中に、しっかり治療した方がいい病気が見つかったよ」
「すぐには治らないので、しばらく病院へ通うことになったよ」
「詳しいことが分かったら、また話すね」
病気を隠すために事実と異なる説明を重ねるより、今話せる範囲を正直に伝える方が、その後の会話を続けやすくなります。
たしかに、「中途半端に話したら、余計に不安にさせるのでは」と気になります。
ただ、子どもは親の表情や家の雰囲気、電話での会話などから、何かが起きていることを感じ取る場合があります。何も説明されないことで、現実よりも怖い想像を膨らませることもあります。
すぐに全部話す必要はありませんが、生活に変化が起きるときには、子どもが状況を理解できる程度の説明があると安心につながります。
いつ伝える?治療や生活の変化が始まる前が目安
親のがんをいつ伝えるかについて、全家庭に当てはまる決まりはありません。
診断された当日に話す家庭もあれば、検査結果や治療方針が分かってから話す家庭もあります。
ひとつの目安になるのが、子どもの目に見える変化が始まる前です。
具体的には、次のようなタイミングです。
- 親が入院することが決まった
- 通院が増えて家にいない時間が長くなる
- 薬の影響で疲れやすくなる可能性がある
- 脱毛など外見の変化が予想される
- 家事や送迎を別の人に頼むことになった
- 子どもの生活予定が変わる
親が突然入院したり、急に寝ている時間が増えたりすれば、子どもは「何が起きたのだろう」と不安になります。
変化が始まる前に、
「来週から入院するよ」
「薬の影響で、しばらく疲れて寝ていることが増えるかもしれないよ」
「学校の送り迎えは、おばあちゃんがしてくれるよ」
と伝えておくと、目の前で起きていることと説明がつながります。
一方で、数カ月先の病状など、まだ医師にもはっきり分からないことまで先回りして話す必要はありません。
確定していることと、まだ分からないことを分けるのがポイントです。
子どもへ話す前には、親同士や祖父母など、普段から子どもに接する大人の間で説明内容を確認しておきましょう。
大人によって話す内容が大きく異なると、子どもはどれを信じてよいのか分からなくなります。
子どもに最初に伝えたい4つのこと
病気の詳しい仕組みより先に、子どもが日常生活を安心して過ごすために必要なことを伝えます。
最初に押さえたいのは、次の4つです。
1.親の体に病気が見つかったこと
体のどの部分に病気が見つかり、治療のために病院へ行くことを、年齢に合う言葉で説明します。
「お母さんの胸に病気が見つかったので、治すために病院へ通うよ」
「お父さんのおなかにがんが見つかったので、手術を受けるよ」
など、短く具体的な言葉にすると理解しやすくなります。
2.子どものせいではないこと
幼い子どもは、「自分が言うことを聞かなかったから病気になったのでは」と考えることがあります。
「あなたがしたことや考えたことが原因ではないよ」
「誰かが悪いから病気になったわけではないよ」
とはっきり伝えます。
これは、大人には思いつきにくくても、子どもにとってはとても重要な説明です。
3.一緒に生活してもうつらないこと
がんは、風邪のように、触れたり同じ部屋で過ごしたりしてうつる病気ではありません。
「抱っこしても、同じご飯を食べても大丈夫だよ」
と、子どもの生活に置き換えて伝えると安心しやすくなります。
4.生活で変わることと変わらないこと
子どもがまず気になるのは、病気の詳しい仕組みよりも、明日から自分の生活がどうなるかです。
「学校は今まで通り通えるよ」
「入院中も電話で話せるよ」
「朝ごはんはお父さんが作るよ」
「サッカーの送り迎えは、おじいちゃんにお願いしてあるよ」
など、具体的に説明しましょう。
個人的には、病名と同じくらい、自分の世話を誰がしてくれるのかを伝えることが大事だと感じます。
子どもにとっては、毎日の生活が続くと分かることが大きな安心になるからです。
幼児・小学生・中高生にはどう伝える?
子どもへの伝え方は、年齢だけでなく、発達の程度や性格、これまでの家族の会話によっても変わります。
同じ年齢でも理解の仕方は異なるため、次の例をそのまま使うのではなく、子どもの反応を見ながら調整してください。
| 子どもの段階 | 伝え方のポイント | 言葉の例 |
|---|---|---|
| 幼児 | 短く具体的に、直近の生活を中心に話す | 「お母さんの体に病気が見つかったよ。病院で治してもらうね」 |
| 小学生 | 病名や治療の目的を分かる範囲で説明する | 「がんという病気が見つかったよ。治すために手術を受けるよ」 |
| 中学生・高校生 | 事実と不確かなことを分け、質問できる関係をつくる | 「今分かっていることはここまで。治療後のことはまだ分からないので、分かったら伝えるね」 |
幼児は、長い説明を一度に理解することが難しいため、入院日や誰と過ごすのかなど、近い予定から伝えます。
何度も同じ質問をすることがありますが、理解できていないとは限りません。不安を確かめるために、同じことを聞いている場合もあります。
小学生になると、「がん」という言葉をテレビや周りの会話から知っていることがあります。
ただし、知っている情報が正しいとは限りません。
「がんは全部同じ病気ではないよ」
「お医者さんと相談して治療することになったよ」
と、その家族の状況に合わせて説明します。
中学生や高校生は、親が説明する前にインターネットで調べることもあります。
詳しい情報を理解できる一方で、深刻な例だけを見て不安を強める可能性もあります。
「何か調べて気になったことはある?」
「どんな情報を見たの?」
と聞き、間違った理解をしていないか一緒に確認します。
思春期の子どもは、親を心配しながらも普段通り友人と遊んだり、反抗的な態度を取ったりすることがあります。
反応が薄く見えても、関心がないとは限りません。「話したくなったら、いつでも聞くよ」と伝え、考える時間を残しておくことが大切です。
「治るの?」「死ぬの?」と聞かれたらどう答える?
親が最も答えに迷うのが、治るかどうかや、死ぬ可能性について聞かれたときです。
子どもを安心させたい気持ちから、「絶対に大丈夫」「死なないよ」と言いたくなるかもしれません。
しかし、今後のことが分からない段階で、守れるか分からない約束をする必要はありません。
治療によって回復が期待されている場合は、次のように伝えられます。
「治すために、先生と相談して治療を始めるよ」
「元気になることを目指して、手術と薬の治療を受けるよ」
「心配なことがあったら、何度でも聞いてね」
まだ見通しが分からない場合は、
「今は、どうなるかまだ分からないこともあるよ」
「分かったことは、きちんと伝えるね」
「私も分からないので、先生に聞いてみるね」
と答えてかまいません。
子どもが「死ぬの?」と聞いたときは、すぐに答えるだけでなく、
「どうしてそう思ったの?」
「何か聞いたり見たりしたの?」
と尋ねることも大切です。
病気そのものが怖いのではなく、「学校から帰ったときに親がいないのでは」「自分は誰と暮らすのか」という心配が隠れている場合もあります。
たしかに、こうした質問をされるだけでも胸が苦しくなると思います。
その場で答えられないときは、「少し考えてから話してもいい?」と時間を取っても大丈夫です。
病状が厳しく、何をどこまで伝えるべきか迷う場合は、担当医や看護師、心理職などに相談し、子どもの年齢に合った説明を一緒に考えてもらいましょう。
伝えた直後に遊び始めても心配しすぎなくていい
子どもに病気を伝えた後、泣いたり質問を続けたりするとは限りません。
しばらく黙っていた後、すぐにゲームや遊びを始めることもあります。
大人から見ると、「ちゃんと理解しているのかな」「何も感じていないのかな」と心配になるかもしれません。
しかし、子どもは悲しい気持ちをずっと表に出し続けるとは限りません。
一度に受け止めきれないことを、日常生活の中で少しずつ理解していくことがあります。
次のような反応も、出来事を受け止める過程で見られる場合があります。
- 泣く、怒る、黙り込む
- 普段通り遊ぶ
- 同じ質問を繰り返す
- 急に甘えるようになる
- 一人で過ごしたがる
- 病気とは関係のない話を始める
反応を無理に引き出そうとせず、
「今は話したくなくても大丈夫だよ」
「聞きたいことが出てきたら、いつでも話してね」
と伝えておきましょう。
伝えた後は、食事、睡眠、遊び、学校生活など、いつもの様子に変化がないか見守ります。
特に確認したいのは次のような変化です。
- 眠れない状態や食欲の低下が続いている
- 登園や登校を強く嫌がる
- 頭痛や腹痛などの訴えが増えた
- 集中しにくく、学習や生活に支障が出ている
- 強い怒りや不安が続いている
- 「自分のせいだ」と繰り返す
- 家族の世話を必要以上に背負おうとする
一時的な変化だけで問題があると決めつける必要はありません。
ただし、変化が長引いたり、日常生活に支障が出たりしている場合は、家族だけで抱え込まず相談しましょう。
学校や周りの大人にも見守ってもらう
子どもは、家では普段通りに見えても、学校や保育所で不安を表している場合があります。
本人や家族が望む範囲で、担任、養護教諭、スクールカウンセラーなどに事情を伝えておくと、家庭以外での変化にも気づいてもらいやすくなります。
学校へ伝えるときは、病気の詳しい内容をすべて説明する必要はありません。
- 親が治療を受けていること
- 入院や通院で生活に変化があること
- 子どもにはどこまで説明しているか
- どのような様子を見守ってほしいか
- ほかの保護者や子どもに話してよいか
などを整理して伝えます。
また、子ども本人にも、病気のことを誰に話してよいのか確認しておきましょう。
「誰にも言ってはいけない」と強く求めると、子どもが不安を抱えたまま相談できなくなることがあります。
「先生には話してあるよ」
「困ったときは、おばあちゃんや保健室の先生に話していいよ」
と、相談できる大人を具体的に伝えると安心です。
親自身が説明することに耐えられない場合は、パートナーや祖父母などに同席してもらったり、代わりに話してもらったりする方法もあります。
病院の相談窓口では、治療のことだけでなく、子育てや学校との連携、子どもへの伝え方についても相談できます。
個人的には、親だけで「正しい言葉」を探し続けるより、家族や医療者、学校と一緒に子どもを支える体制をつくることがいちばん現実的だと感じます。
親のがんを伝えるときに大切なこと
親のがんを子どもに伝える方法に、すべての家庭に共通する一つの正解はありません。
子どもに話せない時期があっても、すぐにすべてを説明できなくても、それだけで間違いとはいえません。
大切なのは、親の体調や気持ちを守りながら、子どもが今知る必要のあることを、理解できる言葉で伝えることです。
最初の会話だけで終わらせず、治療や生活に変化があったときに、何度でも話し直してかまいません。
伝えるときは、
- あなたのせいではない
- 一緒に生活してもうつらない
- 世話をしてくれる大人がいる
- 分かったことは伝えていく
- どんな気持ちになってもよい
という安心につながる言葉を添えます。
親が完璧な答えを持っていなくても、「あなたを大切に思っている」「一緒に考えていく」という姿勢は伝えられます。
それが、子どもが不安を言葉にし、家族と一緒に状況を受け止めていくための土台になります。
※子どもへの伝え方は、病状、家族関係、年齢、発達などによって異なります。判断に迷う場合や、子どもの生活に大きな変化が見られる場合は、担当医、看護師、心理職、がん相談支援センターなどに相談してください。
参考リンク
- 病気について子どもに伝える (国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト)
- 病気について子どもに伝えるQ&A (国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト)
- 未成年の子どもがいるがんと診断された方へ (国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト)
- がんについて子どもと話をするときのヒント (ホープツリー)
- 家族ががんになった子どもを支える・予後について (ホープツリー)
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