便失禁と向き合い、ライフスタイルをとり戻すための治療の考え方
このページでは『きょうの健康(2025年12月23日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。今回のテーマは『便失禁』です。便失禁は、年齢や体質の問題だけでなく、生活の質に深く関わる症状です。番組では、2024年11月に改訂された『便失禁診療ガイドライン2024』をもとに、体への負担が少ない治療から段階的に進めていく考え方が紹介されました。治療を知ることで、外出や日常生活への不安を減らし、自分らしい生活を取り戻すヒントが見えてきます。
便失禁診療ガイドライン2024改訂で示された治療の基本
便失禁の治療について、現在の医療現場でよりどころとなっているのが便失禁診療ガイドライン2024です。この改訂版では、治療を一気に進めるのではなく、段階を踏んで進める考え方がはっきり示されています。まず重視されているのは、体への負担が少なく、日常生活を続けながら取り組める方法から始めることです。食事内容や排便のリズムを見直し、必要に応じて薬を使いながら様子を見ていきます。そのうえで、専門的な訓練や医療機器を使った治療を追加し、それでも改善が難しい場合に外科治療を検討します。この流れは、無理なく治療を続けやすく、途中であきらめてしまう人を減らすことにもつながります。便失禁を特別な症状として抱え込まず、長く付き合いながら改善を目指す姿勢が大切だと示されています。
保存的療法を組み合わせて行う意味
便失禁治療の中心となるのが保存的療法です。保存的療法とは、手術を行わずに症状の改善を目指す方法で、日常生活に取り入れやすいものが多く含まれます。ただし、ひとつの方法だけで十分な効果が出るとは限りません。そこで重要になるのが、複数の保存的療法を組み合わせる考え方です。便の硬さや回数を調整する薬物療法に加え、筋肉の働きを高める訓練、排便のタイミングを整える工夫を重ねていくことで、全体として症状を安定させやすくなります。便失禁診療ガイドライン2024でも、原因や症状に応じて治療を組み合わせることが推奨されており、自分の体の状態に合わせて調整していく姿勢が求められています。
自宅や通院で続けられる保存的療法の具体例
保存的療法の中には、自宅で取り組めるものと、医療機関で行うものがあります。自宅で続けやすい方法として紹介されているのが『骨盤底筋トレーニング』です。肛門や骨盤のまわりの筋肉を意識して動かすことで、排便をコントロールする力を高めていきます。毎日の生活の中で少しずつ続けることがポイントです。通院して行う治療としては『バイオフィードバック療法』があります。これは、筋肉の動きや力の入り具合を機械で確認しながら訓練する方法で、自分では分かりにくい感覚をつかみやすくなります。また『経肛門的洗腸療法』は、あらかじめ腸内を洗浄して排便を済ませておくことで、外出中の不安を減らす方法です。これらに『薬物療法』を組み合わせ、便の状態を安定させることで、便失禁による困りごとを少しずつ減らしていきます。
保存的療法で改善しない場合の外科治療
保存的療法を十分に行っても改善が見られない場合には、外科治療が選択肢になります。番組で取り上げられている『肛門括約筋形成術』は、傷ついたり弱くなった肛門の筋肉を修復し、締まりを改善する治療です。出産や外傷など、原因がはっきりしている場合に検討されることがあります。『仙骨神経刺激療法』は、排便に関わる神経に電気刺激を与えて働きを整える治療で、近年注目されています。体への負担が比較的少なく、保存的療法の次の段階として位置づけられています。それでも改善が難しい場合には『人工肛門の造設』が選択されることもあります。これは生活の質を守るための一つの方法であり、便失禁に対する最終的な選択肢として慎重に検討されます。
専門医と一緒に治療を選び、生活をとり戻す
便失禁は、人によって原因や症状の現れ方が大きく異なります。そのため、画一的な治療ではなく、検査や評価を行ったうえで治療方針を決めていくことが欠かせません。番組では【講師】帝京大学医学部名誉教授 幸田圭史が、治療は一人で抱え込まず、専門医と相談しながら進めることの大切さを解説します。治療を知り、選択肢を理解することで、外出や日常生活への不安を減らすことができます。段階的に治療を進めることで、便失禁と向き合いながら、自分らしいライフスタイルを少しずつ取り戻していくことが目標になります。
まとめ
『便失禁』は、正しい知識と治療の選択によって改善を目指せる症状です。『便失禁診療ガイドライン2024』では、保存的療法を基本に、必要に応じて外科治療へ進む流れが整理されています。今回の『きょうの健康(2025年12月23日放送)』では、その全体像が分かりやすく伝えられる予定です。
Eテレ【きょうの健康】便や腸のトラブル「便失禁(1)日常生活での対処法」原因と排便日誌・食事習慣で見直す腸のサイン|2025年12月22日
便失禁を知り、外出をあきらめなくていいと気づくまで

便失禁があると、外に出ること自体が大きな不安になります。途中でトイレに行けなかったらどうしよう、人に気づかれたらどうしよう、そう考えるだけで外出を控えるようになる人は少なくありません。実際に、買い物や散歩、友人との約束を減らし、家の中で過ごす時間が増えていきます。生活の範囲が狭くなることで、気持ちまで小さくなってしまうこともあります。そんな中で、便失禁には治療の選択肢があり、段階的に向き合えると知ることが、最初の大きな変化になります。
不安の正体が「知らないこと」だったと気づく
外出を控えるようになる背景には、症状そのものよりも「先が読めない不安」があります。いつ起きるか分からない、対処できないかもしれないという気持ちが、行動を止めてしまいます。しかし、治療法や対処法を知ることで、不安の正体が少しずつ見えてきます。保存的療法や自宅でできるケアがあることを知るだけで、「何もできない状態ではない」と感じられるようになります。この理解が、気持ちの緊張をゆるめるきっかけになります。
外出は「我慢」ではなく「準備」でできると分かる
治療を知ることで、外出は無理をするものではなく、準備をして臨める行動だと受け止められるようになります。排便のタイミングを整える工夫や、症状を軽くする方法があると分かると、外出前の心構えが変わります。以前は「失敗したらどうしよう」と考えていた場面が、「対策をしているから大丈夫かもしれない」に変わっていきます。この意識の変化が、玄関を出る一歩を後押しします。
行動が戻ることで気持ちも前向きに変わっていく
少しずつ外に出られるようになると、生活の中に動きが戻ってきます。短い距離の買い物や近所の散歩でも、外に出られたという事実が自信になります。行動が増えることで、人との関わりや日常の刺激も戻り、気持ちが前向きになります。便失禁を理由にすべてをあきらめる必要はないと実感できるようになり、生活を取り戻していく感覚が生まれます。治療を知ることは、症状だけでなく、心の動きにも大きく影響します。
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