十津川村の林業が教えてくれる山と暮らしのつながり
奈良県の南部にある十津川村は、村のほとんどを森林が占める山深い地域です。江戸時代から林業が受け継がれ、今も木を育て、山を守り、暮らしにつなげる人たちがいます。
『小さな旅「次の百年 木と山と 〜奈良県 十津川村〜」(2026年6月21日)』でも取り上げられ注目されています 。
この記事でわかること
・十津川村で林業が盛んな理由
・紀伊半島豪雨が山づくりに与えた影響
・山に道をつくる工事の意味
・木工職人のものづくりが注目される理由
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十津川村はなぜ林業が盛んなのか
十津川村は、奈良県の南部、紀伊半島の山あいにある村です。大きな特徴は、村の面積の大部分を森林が占めていることです。
山が多く、平らな土地が少ないため、昔から田畑を広げるよりも、山の木を育てて暮らしにつなげる産業が発達してきました。これが、十津川村で林業が続いてきた大きな理由です。
林業というと、木を切る仕事だけを想像しがちですが、実際はそれだけではありません。
木を植える。
草を刈る。
細い木を間引く。
育った木を切る。
切った木を運ぶ。
木材として使える形にする。
この流れ全体が林業です。
十津川村の山には、戦後に植えられたスギやヒノキなどの人工林が多くあります。人工林は、植えたあとに放っておけば自然に良い森になるわけではありません。人が手を入れないと、木が混みすぎて日光が入らず、下草が育ちにくくなります。
下草が少ない山は、雨が降ったときに土が流れやすくなります。つまり、木を育てることは、木材をつくるだけでなく、山を守ることにもつながっています。
十津川村の林業が注目されるのは、単に「木が多い村」だからではありません。山の手入れを通じて、災害に強い土地づくり、地域の仕事づくり、木を生かしたものづくりまでつながっているからです。

紀伊半島豪雨で十津川村の山はどう変わったのか
紀伊半島豪雨は、十津川村にとって大きな転機になりました。
2011年の豪雨では、紀伊半島の広い範囲で土砂災害や河川の増水が起き、山あいの集落や道路にも大きな被害が出ました。十津川村でも、山が崩れ、道路が寸断され、暮らしや産業に深刻な影響がありました。
この災害をきっかけに、十津川村では「山をどう守るか」がより強く意識されるようになります。
山は、ただ木が生えていれば安全というものではありません。木が多くても、手入れがされていなければ、土をしっかり支えられない場合があります。反対に、手入れされた山は日光が入り、下草や根が育ち、雨水を受け止めやすくなります。
もちろん、林業だけですべての災害を防げるわけではありません。大雨や地形の条件によって、土砂災害は起こります。
それでも、山を放置せず、道を整え、木を育て、必要な木を切って使うことは、災害に備えるうえで大切な取り組みです。
十津川村では、山の木を切って終わりではなく、村の中で製材や加工、販売までつなげる考え方も進められています。これは、木を地域の中で循環させる仕組みです。
山を守る。
木を使う。
仕事を生む。
暮らしを支える。
このつながりが、紀伊半島豪雨をきっかけによりはっきり見えるようになりました。
山に道をつくる工事は何のために行われているのか
山に道をつくると聞くと、「自然を壊しているのでは?」と感じる人もいるかもしれません。
でも、林業でいう山の道は、山をむやみに開発するためのものではありません。木を育て、手入れし、必要な作業を安全に行うための作業道です。
山に道がないと、木を切る場所まで人も機械も入れません。切った木を運び出すことも難しくなります。その結果、山の手入れが遅れ、木が混み合い、弱い森になってしまうことがあります。
作業道があると、次のようなことがしやすくなります。
・木の手入れに入りやすくなる
・切った木を安全に運び出せる
・災害時に山の状況を確認しやすい
・林業の作業効率が上がる
・若い世代が林業に関わりやすくなる
特に十津川村のような山深い地域では、道があるかどうかが林業の続けやすさを大きく左右します。
ただし、道をつくればよいという単純な話ではありません。水の流れを考えずに道をつくると、雨水が集まり、かえって山が崩れやすくなる場合があります。
だからこそ重要なのは、山の地形、雨の流れ、土の状態を見ながら、長く使える道をつくることです。
山に道をつくる工事は、木を切るためだけの道ではありません。次の世代が山を守るための入口ともいえます。
十津川村の木工職人は誰でどんな製品を作っているのか
十津川村の木の魅力は、林業だけで終わりません。切り出された木は、家具や日用品などの木工品にも生まれ変わります。
村の木工に関わる人物として知られているのが、木工職人の坂口明裕さんです。十津川村の林業再生に関わり、その後、村の加工場を拠点に木のものづくりに取り組んでいます。
木工職人の仕事は、ただ木をきれいに削るだけではありません。
木には、1本ずつ違う木目があります。
硬さも違います。
色も香りも違います。
まっすぐ使える部分もあれば、曲がりや節のある部分もあります。
大量生産の工業製品なら、均一で扱いやすい材料が好まれます。しかし、木工の世界では、曲がりや節も個性になります。
十津川村の木工が面白いのは、山で育った木をなるべく無駄にせず、暮らしの道具として生かそうとしている点です。
たとえば、家具、器、小物、木の雑貨などは、木のぬくもりを身近に感じられる製品です。プラスチックや金属と違い、木は使うほどに色味や手触りが変わります。
そこにあるのは「新品の美しさ」だけではありません。長く使うことで育っていく美しさです。
木工品を見るときは、デザインや値段だけでなく、どこの木が使われているのか、どういう考えで作られているのかを見ると、楽しみ方が深くなります。
KIRIDAS TOTSUKAWAとは何か
KIRIDAS TOTSUKAWAは、十津川村の木を使った家具や木工品に関わる取り組みとして知られています。
名前の通り、十津川の木を「切り出す」だけでなく、暮らしの中で使える形にして届ける意味が込められていると考えられます。
林業の課題のひとつは、木を切っても、その木が安くしか売れないことです。木材価格が下がると、山を手入れしても収入につながりにくくなります。すると、山を管理する人が減り、森が荒れやすくなります。
そこで大切になるのが、木に価値を加えることです。
丸太のまま出すだけでなく、製材する。
家具にする。
日用品にする。
地域の物語を伝える。
使う人に長く大事にしてもらう。
こうした流れができると、木は単なる材料ではなく、地域の暮らしや山を支える存在になります。
KIRIDAS TOTSUKAWAのような取り組みは、山の木を地域の中で生かすための大切な仕組みです。木を買う人にとっても、「この製品を使うことが山の手入れにつながる」と感じられる点に意味があります。
安いものを短く使って捨てるのではなく、背景のあるものを長く使う。
その考え方は、これからの暮らしにも合っています。
十津川村の木を無駄にしないものづくりが注目される理由
十津川村の木を無駄にしないものづくりが注目される理由は、今の時代に必要な考え方が詰まっているからです。
昔の林業は、「木を切って売る」ことが中心に見られがちでした。けれど今は、山を守ること、災害に備えること、地域の仕事をつくること、環境に負担をかけにくい暮らしを考えることまで含めて見られるようになっています。
木を無駄にしないとは、単に端材を使うという意味だけではありません。
山で育った木を、できるだけ最後まで生かす。
大きな材だけでなく、小さな材も使う。
節や曲がりも個性として受け止める。
長く使える製品にする。
地域の仕事として続ける。
こうした積み重ねが、山と暮らしをつなぎます。
読者にとっても、十津川村の林業は遠い山村の話ではありません。普段使っている机、椅子、箸、器、家の柱にも、どこかの山で育った木が使われています。
木を選ぶことは、山との関わり方を選ぶことでもあります。
もちろん、すべての人が高価な木工品を買う必要はありません。まずは、木製品を見るときに「どこの木だろう」「どう作られたものだろう」と少し気にするだけでも、山との距離は近くなります。
十津川村の取り組みから見えてくるのは、山は誰か遠くの人だけが守るものではないということです。
木を育てる人がいる。
山に道をつくる人がいる。
木を加工する人がいる。
製品を選んで使う人がいる。
そのつながりの中で、山は次の百年へ受け継がれていきます。
出典リンク
・十津川村の森林面積、林業再生、森林整備に関する資料 (十津川村公式サイト)
・小さな旅「次の百年 木と山と 〜奈良県 十津川村〜」番組情報 (WEBザテレビジョン)
・十津川村の林業6次産業化に関する資料 (奈良大学リポジトリ)
・十津川村の木工職人・坂口明裕さんに関する情報 (十津川村公式サイト)
・十津川村の紀伊半島大水害と林業再生に関する情報 (プロジェクトデザイン)
・十津川村の復興と林業の背景に関する情報 (zck.or.jp)
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