看護師不足で「入院できない」はなぜ起きるのか
病気やけがでベッドが必要なのに、すぐ入院できないかもしれない。そんな不安につながるのが、全国で深刻になっている看護師不足です。
『クローズアップ現代「あなたも入院できない!? 〜迫る“看護師不足”危機〜」(2026年6月29日放送)』でも取り上げられ注目されています 。
ベッドが空いていても、患者を安全に見守る看護師が足りなければ入院を受け入れにくくなります。自分や家族の受診に関わる問題として、今知っておきたいテーマです。
この記事でわかること
・看護師不足で入院に影響が出る理由
・市立青梅総合医療センターで起きた病床使用制限
・27万人不足という推計の意味
・病院で進む離職防止や業務改善の取り組み
看護師が足りない 医療現場の危機はなぜ起きているのか 患者と向き合う時間が減る理由と病院はどうなるのか【首都圏情報ネタドリ!で話題】
クローズアップ現代の看護師不足で入院できない病院はどこ?
番組で取り上げられた代表的な病院の1つが、東京・青梅市にある市立青梅総合医療センターです。
ここで問題になっているのは、単に「ベッドが足りない」という話ではありません。病床、つまり入院用のベッドがあっても、患者を安全に受け入れるための看護師の人数が足りなければ、そのベッドを使えないことがあります。
病院では、入院患者の体温や血圧の確認、点滴、薬の管理、食事や排せつの介助、急変時の対応などを看護師が担っています。
特に急性期病院では、急に状態が悪くなる患者も多く、看護師の人数が少ないまま無理に入院患者を増やすと、見守りが行き届かなくなる危険があります。
そのため、病院側は「ベッドはあるけれど、患者を安全に受け入れる体制が整わない」と判断し、病床の使用を制限することがあります。
これは病院の都合だけではなく、患者の安全を守るための判断でもあります。
読者として知っておきたいのは、入院できない問題は「人気病院だから混んでいる」という単純な話ではないことです。
地域の中核病院でも、看護師不足が進むと、救急や入院の受け入れに影響が出る可能性があります。

市立青梅総合医療センターで起きた病床使用制限とは?
病床使用制限とは、病院にあるベッドの一部をあえて使わないようにすることです。
たとえば、100床のベッドがあっても、看護師の人数が足りなければ100人全員を安全に看ることはできません。その場合、実際に受け入れる患者数を減らす必要があります。
ここで大事なのは、病床使用制限が「空きベッドがない」という意味ではない点です。
実際にはベッドが空いていても、次のような条件がそろわなければ入院は難しくなります。
・夜勤を担当できる看護師が足りているか
・重症患者を受け入れる体制があるか
・急変時にすぐ対応できる人員がいるか
・病棟全体の安全管理ができるか
・退院調整や家族対応まで回せるか
入院は、ベッドという場所だけで成り立つものではありません。
患者の状態を見て、薬や点滴を確認し、医師と連携し、家族への説明や退院後の生活まで考える必要があります。
その中心にいるのが看護師です。
だからこそ、看護師が不足すると、病院は病床を減らさざるを得なくなります。
自分や家族が入院を考える場面では、「大きな病院だから必ず入れる」と思い込まないことも大切です。
受診前に紹介状の有無、診療科の受け入れ状況、救急時の相談先を確認しておくと安心です。
急な体調不良で迷う場合は、地域の救急相談窓口や、かかりつけ医に早めに相談することも大切です。
なぜ看護師不足でベッドがあっても入院できないのか?
ベッドがあっても入院できない理由は、入院患者には24時間の見守りが必要だからです。
病院では昼だけでなく、夜中にも患者の容体が変わります。
発熱、痛み、呼吸の変化、転倒、点滴トラブル、薬の副作用など、いつ起きるかわかりません。
そのとき最初に気づくことが多いのが看護師です。
看護師が不足すると、1人が担当する患者数が増えます。すると、1人ひとりにかけられる時間が短くなり、患者の小さな変化に気づきにくくなります。
これは患者にとっても、看護師にとっても危険です。
看護師不足が起きる背景には、いくつもの理由があります。
まず、仕事の負担が大きいことです。
看護師は医療行為の補助だけでなく、患者の生活を支える仕事も多く担います。食事、移動、排せつ、認知症のある患者への対応、家族への説明など、体力も気力も必要です。
次に、夜勤や不規則な勤務があります。
夜勤が続くと生活リズムが崩れやすく、家庭や子育てとの両立が難しくなる人もいます。
さらに、理想の看護と現実の差もあります。
「もっと患者に寄り添いたい」と思っていても、忙しすぎて十分に話を聞けない。そんな状態が続くと、やりがいよりも疲れやつらさが大きくなってしまいます。
そして、待遇への不満もあります。
責任の重さや勤務の厳しさに比べて、給与や休みが見合っていないと感じる人が増えると、離職につながりやすくなります。
つまり、看護師不足は「人が集まらない」だけではありません。
働き続けたいと思える環境が作れているかどうかが大きなポイントです。
看護職員27万人不足とは何の推計なのか?
看護職員27万人不足という数字は、将来の医療や介護に必要な看護職員数と、実際に働くと見込まれる人数を比べた推計から出ているものです。
ここでいう看護職員には、看護師だけでなく、保健師、助産師、准看護師なども含まれます。
なぜ大きな不足が見込まれるのかというと、日本では高齢者が増え、医療や介護を必要とする人が増えているからです。
高齢になると、病気を1つだけではなく、複数抱える人が増えます。
入院だけでなく、退院後の生活支援、訪問看護、介護施設、在宅医療でも看護師の力が必要になります。
これからの医療は、病院で病気を治すだけではありません。
住み慣れた家や地域で暮らしながら、病気と付き合う人を支えることも重要になります。
そのため、病院だけでなく、訪問看護や介護の現場でも看護師の需要が高まっています。
ただし、看護師の不足は全国どこでも同じ形で起きているわけではありません。
都市部では大病院や民間病院が多く、人材の取り合いが起きやすくなります。
地方では若い人が少なく、病院や介護施設に必要な人員を確保しにくい地域もあります。
また、病院では足りていても、訪問看護では足りないというように、働く場所によっても差があります。
この問題を理解するときは、「全国で何万人不足」という数字だけで見るよりも、自分の住む地域でどの医療が弱くなりやすいのかを見ることが大切です。
たとえば、近くに救急を受け入れる病院が少ない地域では、看護師不足がそのまま入院や搬送先の問題につながりやすくなります。
地域医療機能推進機構大阪病院の離職率改善はなぜ成功したのか?
大阪市福島区にある地域医療機能推進機構大阪病院では、看護師が働き続けやすい職場づくりが進められました。
注目したいのは、単に「がんばろう」と声をかけたのではなく、若手看護師が何に困っているのかを調べた点です。
看護師の離職では、給料や勤務時間だけでなく、職場で相談できる相手がいるかどうかも大きなポイントになります。
特に勤続3年以下の若手看護師は、経験が浅いため、患者対応や医師との連携、家族への説明などで悩みやすい時期です。
そのとき、近くに相談できる先輩がいないと、不安を抱えたまま働くことになります。
この病院では、若手の相談役になるリーダー看護師の動き方を見直しました。
病室でのケアに追われすぎると、若手が困ったときにすぐ相談できません。
そこで、リーダー看護師がナースステーションにいる時間を増やし、若手が声をかけやすい環境にしました。
この改善によって、相談できる相手がいないと答える若手が減り、離職率も改善したとされています。
ここから見えてくるのは、看護師不足への対策は「人数を増やす」だけでは足りないということです。
もちろん採用は大切です。
しかし、入ってきた人がすぐ辞めてしまえば、現場はいつまでも安定しません。
大事なのは、次のような仕組みです。
・困ったときにすぐ相談できる
・若手を1人にしない
・リーダーの役割を明確にする
・現場の不満を定期的に聞く
・改善した結果を職場に戻す
これは医療の現場だけでなく、どんな仕事にも通じる考え方です。
人手不足を解決するには、「人を増やす」だけでなく、「辞めたくならない職場」に変えていく必要があります。
NTT東日本関東病院のカルテ自動化で何が変わったのか?
東京・品川区のNTT東日本関東病院では、カルテ入力などの業務を自動化する取り組みが紹介されました。
看護師の仕事というと、患者のそばでケアをする姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし実際には、記録や入力作業にもかなりの時間がかかります。
患者の状態、処置の内容、薬の確認、体温や血圧、医師への報告内容など、医療記録は正確に残す必要があります。
記録が不十分だと、次の担当者に情報が伝わらず、医療ミスにつながるおそれがあります。
そのため、カルテ入力はとても大切な仕事です。
ただ、入力作業に時間を取られすぎると、患者と向き合う時間が減ってしまいます。
そこで、入力作業の一部を自動化することで、時間外労働を減らし、看護師が本来のケアに集中しやすくする取り組みが進んでいます。
このような仕組みには、次のようなメリットがあります。
・記録作業の時間を減らせる
・残業を減らしやすくなる
・患者と話す時間を増やせる
・情報共有のミスを減らせる
・看護師の疲れを軽くできる
ただし、自動化だけで看護師不足がすぐ解決するわけではありません。
機械やシステムは、記録を助けることはできます。
でも、患者の表情を見て不安に気づいたり、痛みを訴えにくい人の変化を感じ取ったりするのは、人の力が必要です。
だからこそ、業務の自動化は「看護師を減らすため」ではなく、「看護師が本当に必要な仕事に集中するため」の仕組みとして考えることが大切です。
これから病院を利用する側としては、医療現場でデジタル化が進むことを前向きに受け止めつつ、気になる症状や不安は自分から伝えることも大切です。
看護師が忙しそうに見えても、遠慮しすぎる必要はありません。
体調の変化、薬の不安、退院後の生活で困りそうなことは、早めに相談した方が安全につながります。
参考リンク
・番組情報の確認:(WEBザテレビジョン)
・看護師不足と病床使用制限の確認:(X (formerly Twitter))
・看護職員需給推計の確認:(厚生労働省)
・看護職員確保対策の確認:(厚生労働省)
・看護職員の離職状況の確認:(nurse.or.jp)
・地域医療機能推進機構大阪病院の確認:(osaka.jcho.go.jp)
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